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iPhone5、「ドック経済圏」を捨てた狙いは?

(テクノロジー編集部BLOG)

米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)「iPhone(アイフォーン)5」。筆者は9月下旬に購入し、3週間ほど使っています。

個人的に一番恩恵を感じているのは、もちろん高速通信サービスのLTE。加えてCPUも高速になっており、Webサイト閲覧時やアプリ起動時などのちょっとした待ち時間が短縮されています。通信とCPU、2つの高速化により、とにかく待たされる時間が減ったという印象です。また、画面が縦方向に広がったことで、Webサイトの閲覧時などに画面の情報量が増えたのもありがたいです。

一方、不満も2つほどあります。1つは言うまでもなく、標準搭載の地図が使い物にならないこと。こちらは既に、日経電子版含め多くのメディアが報じており、皆様もご存じかと思いますのでここでは割愛します。もう1つは、本体下部に付いている、パソコンとの接続や充電などに使う端子の形状を変更したことです。

◇          ◇

従来のiPhoneでは、アップルが独自開発した「Dock(ドック)」と呼ばれる30ピンの端子を使っていました。iPhone5では、やはり独自開発の「ライトニング」と呼ぶ、横幅がドックの半分以下の新たな小型端子に変更しました。iPhone5を充電する際、充電器は従来のiPhone用のものがそのまま使えても、本体と充電器をつなぐケーブルは別途必要です。しかし、ライトニングのケーブルはアップルストアでも家電量販店でも現在品薄。ライトニングとドックの変換アダプターもありますが、私の友人によると「アップルストアで予約した上で買ったが、3週間待たされた」といいます。

筆者は自宅と職場の両方にiPhoneの充電器を置いているのですが、ライトニングのケーブルはiPhone5に標準で1本添付されるものしかありません。仕方がないので現在は、毎日出退勤のときにケーブルを持ち歩いています。しかもこのライトニングのケーブル、今のところ純正品しかなく、1本当たり1880円と高額です。ドックのケーブルは多くのメーカーから市販されており、100円ショップでも扱っているほどなので、さすがに高く感じます。正直に言えば「ケーブル変更などしないでほしかった」というのが私個人の本音です。

それにしても不可解なのは、なぜ端子を変えてしまったのかという点です。ドック端子に対応した周辺機器は、アップル純正品以外にも多数開発され、家電量販店の携帯電話アクセサリー売り場に並んでいます。例えばケーブルでは、長いものや短いもの、収納しやすいリール付きやカール付き、あるいは色とりどりのケーブルもあります。このほか、ドック端子を備えた充電台やラジカセ、コンポ、プロジェクターもあり、ドック端子に装着してiPhoneを首からぶら下げられるネックストラップも製品化されています。これらのドック端子対応製品が、iPhone5ではほぼ全て非対応となってしまいました。

 iPhoneがこれまで世界的に大ヒットを遂げたのは、もちろんiPhoneそのものの魅力もありますが、それに加えて多くのメーカーが多彩な周辺機器を開発し、それらを総合してiPhoneがさまざまなニーズに応えられたからという点もあると筆者は考えています。その要となっていたのが、従来のドック端子でした。この端子を変えれば、影響は計り知れないというのはアップルも認識していたはずです。それでも変更に踏み切った理由があるはずですが、今のところそこがはっきりしません。アップルが公式に表明している、ライトニング端子のメリットは「従来のドック端子より小さくなった」「表裏の区別がなくなり、どちらの向きでも挿せるようになった」「端子の耐久性が高くなった」ですが、既に広く使われているドック端子を、それだけの理由で変更したとは考えにくいです。

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可能性はいくつも考えられます。自社の収入にならないサードパーティーによる巨大な周辺機器市場を疎ましく思った、一部に見られる品質の悪い周辺機器を排除したかった、といったサードパーティー対策のほか、新たな事業展開の種という可能性もあります。あくまで筆者の想像ですが、例えば新端子を使って新たな方式のデータ通信を可能にし、iPhoneとAV機器やパソコンなどをつなぐ新機能を提供することも考えられますし、端子が小型になったことを生かし、新機軸の超小型のデジタル機器を開発しているのかもしれません。

アップルはいつも通り、多くを語りません。とはいえ、今後ライトニング端子を採用した製品が増えてくれば、アップルが同端子に託した思想が浮かび上がってくると期待しています。

同時に、新たなライトニング端子でどの程度周辺機器が出てくるかも注目です。真偽のほどは分かりませんが、「ライトニング端子の制御ICには模造品を検知し排除する機能が搭載されているのでは」との一部報道もあります。アップルはライトニング端子でも豊富な周辺機器マーケットを認めるのか、それとも自社製品の囲い込みに走るのか。また、iPhoneが出始めた当初と異なり、現在はAndroid搭載スマホという強力なライバルもいます。周辺機器の充実度合いが今後のスマホ競争にどう影響するかも注目したいところです。

(寛)

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