『バッテリー』で伝えたかったこと  あさのあつこさん

(1/3ページ)
2012/8/22 7:00
保存
共有
印刷
その他

――政治でも経済でも今、言葉がすごく軽くなっている気がします。

本気で話す大人が減っているからですね。例えば選挙で「責任力」とかいわれても、思いが全然伝わってこない。自分にとって責任とはどういうことなのか、必死に語ってないからだと思う。大企業の経営者も不祥事があったとき、頭を下げて「すみませんでした」ばっかり。子供の言葉の乱れを嘆く前に、大人の言葉の貧しさを何とかしろと思いますね。

――なぜ大人の言葉は伝わらないんでしょう。

あさのあつこ(Atsuko Asano)さん
作家。1954年生まれ。青山学院大学文学部卒業後、小学校教諭を務め、作家デビュー。1997年に『バッテリー』で野間児童文芸賞受賞。2005年には同全6巻で小学館児童出版文化賞受賞。(撮影:小林淳)

あさのあつこ(Atsuko Asano)さん
作家。1954年生まれ。青山学院大学文学部卒業後、小学校教諭を務め、作家デビュー。1997年に『バッテリー』で野間児童文芸賞受賞。2005年には同全6巻で小学館児童出版文化賞受賞。(撮影:小林淳)

『バッテリー』が映画になったとき、地元の中学校で撮影があり、中学生もエキストラで参加したんです。真夏のグラウンドで、音声さんとか表には出ないスタッフが汗みどろになって働いている。それを見た中学生が「すごいなあ」っていったんです。大人が本気で仕事に立ち向かう姿を見たとき、子供は感動する。片や当たりさわりのない言葉で「申しわけありませんでした」って頭を下げるだけの大人がいる。本気で仕事に取り組んでいる大人の言葉なら、必ず子供に伝わります。

――著書の中で「少年が言葉を獲得する過程」と書かれてます。

自分が大事にしたいと思う誰かに出会って、自分の思いを伝えようと思ったら、もう言葉しかないと私は思うんです。例えば「好きだ」と思ったとき、「君は特別な存在だ」というのか、「そばにいてくれてうれしい」と言うのか、「おれの球を受けてくれ」というのか、いろんな言い方があります。100%でなくても自分の思いに少しでも近い言葉を探し、伝えようとする。それが人間のすてきなところだと思うんです。それを書いていったのが『バッテリー』という小説なんです。

■経済状況がよくなくても、子供には希望を語ろう

中学生ぐらいの子供は、特に自分の思いと真摯に向き合います。大人は「この程度でいいか」と自分をいなすことを知っていますが、中学生はまだ不器用なので自分の気持ちにぴったり合う言葉が見つからないと、黙りこんでしまうんです。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事

電子版トップ



[PR]