2018年12月15日(土)

つくば市の竜巻被害、住宅が基礎ごと裏返った原因とは

(1/2ページ)
2012/5/16付
保存
共有
印刷
その他

茨城県つくば市の北条地区で、べた基礎ごと倒壊した木造2階建ての住宅。現地を訪れた金井工務店の金井義雄社長は、「基礎が横に移動すれば生じる地業の乱れがない。基礎ごと真上に持ち上げられたのでは」と言う(写真:日経アーキテクチュア)

茨城県つくば市の北条地区で、べた基礎ごと倒壊した木造2階建ての住宅。現地を訪れた金井工務店の金井義雄社長は、「基礎が横に移動すれば生じる地業の乱れがない。基礎ごと真上に持ち上げられたのでは」と言う(写真:日経アーキテクチュア)

べた基礎の表と裏がひっくり返り、それが倒壊した家屋に覆いかぶさっている──。2012年5月6日に茨城県つくば市で発生した竜巻では、木造2階建ての住宅で、このような前代未聞の被害が発生した。竜巻によって上屋がべた基礎ごと真上に持ち上がって空中で反転し、落下した可能性があることが、建築実務者や研究者に対する「日経アーキテクチュア」の取材で明らかになった。

今回の竜巻による被害は、極めて広範囲に及んでいる。茨城県では約1250棟の建物が損壊。栃木県でも約860棟の建物が損壊した。死者1人、負傷者52人という大きな被害をもたらした(5月9日時点)。なかでも建築関係者が最も衝撃を受けたのが、つくば市内で起こった木造2階建ての住宅の被害だ。上屋がべた基礎ごと持ち上げられて反転倒壊し、中学生の男子生徒が犠牲になった。

写真から推定される部材などの位置(協力:宮谷設計)

写真から推定される部材などの位置(協力:宮谷設計)

上屋側から見た木造住宅。周辺は水田と道路で、風をさえぎるものはない

上屋側から見た木造住宅。周辺は水田と道路で、風をさえぎるものはない


■屋根を下から持ち上げる力が加わった

竜巻の突風が屋根上部で速度を増し、圧力が低下する。そのため、建物を上部に持ち上げる力が発生する(資料:日経アーキテクチュア)

竜巻の突風が屋根上部で速度を増し、圧力が低下する。そのため、建物を上部に持ち上げる力が発生する(資料:日経アーキテクチュア)

一体、どのような力が働いてこのような被害が生じたのか。建物の突風被害を調査している複数の研究者は、これは飛行機が浮上する原理と似たメカニズムによる可能性がある、と見ている。

まず、水平方向の風が屋根に沿って流れていく。その際、屋根の上部で気流の密度が高まって風速が大きくなり、圧力が低下する(ベルヌーイの定理)。これによって、屋根の上下で圧力差が生じ、屋根を下から持ち上げる力が加わったという見方だ。

つくば市で発生した竜巻の風速は50~69m/秒(気象庁の推定)。一般的に強い台風とされる30~40m/秒を大きく上回る。こうした強い風が、持ち上げる力をさらに大きくした可能性もある。

■接合金物で緊結していたことが要因という見方も

べた基礎ごとひっくり返った一因について、接合金物によって上屋とべた基礎が堅固に緊結されていたからではないか、と推測する木造住宅の専門家もいる。木造住宅の構造に詳しい金井工務店(埼玉県川口市)の金井義雄社長は「木造住宅の被害で犠牲者が出たのは何とも痛ましい」としたうえで、次のように指摘する。「現地を見て、基礎が横に移動すれば生じるはずの地業の乱れがないことに気付いた。基礎ごと真上に持ち上げられた可能性が高い。ホールダウン金物やボルトなどで、柱や土台と基礎が堅固に接合されていたため、べた基礎ごと真上に持ち上げられたのではないか」。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報