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優待株で損失も生活費も抑える女性投資家

個人投資家奮戦記(6)

もうすぐ株主優待品の多くが届くシーズン。胸を躍らせている個人投資家も少なくないだろう。ただ優待株を保有しているだけでは、株価変動のリスクにさらされてしまう。優待品を収集しつつ、株価をにらみながらできるだけ多くのキャピタルゲイン(値上がり益)を確保しようとする投資家が愛知県にいると聞き、尾張一宮駅(一宮市)へ向かった。

優待株を好み下落リスクにも対応する投資家がいると聞き、尾張一宮駅に向かった

40歳代の主婦、浅倉南さん(仮名)は待ち合わせ場所である駅の改札前に笑顔で現れた。「見てください。これ全部、株主優待を使って買ったんですよ」。婦人服製造・小売り大手のハニーズやポイントの自社商品引換券、イオン系会社の割引券……。これらで買った洋服類を着こなしていた。

自宅に着くと、浅倉さんが「優待&総会土産倉庫」と呼ぶ部屋に通してくれた。株式投資で得た優待品、株主総会土産で得た品物が棚という棚にズラリと並んでいる。日々の食品・日用品だけでなく、ぬいぐるみや玩具、レアものDVDソフトまである。

浅倉さんが集めた優待・総会土産の棚の一部を開けてもらった

「優待は私たちの生活そのものです」と語る浅倉さんは、約300銘柄の日本株を保有し、時価評価額は約3000万円。会社員の夫と高校生の息子の3人暮らし。優待品は飲食関係のものが多いので、平日の食事は優待品のレトルト食品やスーパーの割引券で購入した総菜を利用し、休日は優待の外食でもりもり食べるというケースが多いという。

東京や大阪で開催される株主総会へは私鉄株を活用。浅倉さんは名古屋鉄道(名鉄)、近畿日本鉄道(近鉄)株を保有。優待として受け取れる乗車券を使って、交通費を安くあげている。大阪に行くなら近鉄で、東京なら豊橋まで名鉄を使って夜行快速「ムーンライトながら」に乗り継ぐといった具合だ(「青春18きっぷ」が使える時期のみ)。株主総会などで東京へ行くのは年50回程度にもなるという。

浅倉さんが日本株投資を本格的に始めたのは2005年末。小泉政権の郵政改革への期待から日経平均株価が1万6000円台まで上げた時期だ。ところが、日本株相場はその後、不安定さを増し、2008年のリーマンショックで日経平均は7000円台まで下落。足元も9000円前後で推移している(5月18日時点)。

それでも浅倉さんは2011年だけで配当金80万円、優待品は金額換算できるものだけで100万円分を受け取っている。さらに株価下落による資産の目減りも2005年末に比べ数%程度で済んでいるという。その秘密は何なのか。

「仕入れ単価(平均購入価格)の引き下げと損切りに注力しています」と浅倉さんはいう。例えばA株を株価1000円で購入後、900円まで下がった場合、下落に深刻な理由がないと判断すれば購入する。一方、業績の大幅な下方修正など深刻な理由があれば損失覚悟で容赦なく売る。

そのための銘柄選別は怠らない。EPS(予想1株当たり純利益)、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)の動向を日々確認する。財務体質では特に有利子負債が少ない点を重視。業績は過去7年分をチェックし、黒字反転の可能性がないかなどを探る。

例えば求人広告のキャリアデザインセンター株は7000円台で購入したところ、株価は急上昇。2012年に入り9万9000円で売却し、10倍超の値上がり益確保に成功した。もちろん、業績が伸び悩む東洋合成工業株など、含み損を抱える銘柄もある。

2008年9月のリーマンショック後の急落時は機敏に対応した。優待株も下落基調を強め、このままでは評価損が膨らむと判断。「これほどの急落時は勝負して損を取り返さなくては」と覚悟し、10月下旬に70万円の売却損を出して200万円をいったん現金化することにした。地元の証券会社からは「損が出ますよ。いいんですか?」と渋られたが、「いいから売って」と売却を指示した。そのうえで下落後に一時的な急反発があると予想したトヨタ自動車、ホンダ、コナミ、コマツといった大型株を購入、短期売買を繰り返した。この結果、1カ月で損失分を取り返したという。

「株は不動産に似ている」という感覚を持つ浅倉さんは、地元で集合住宅などを経営。地価や賃料の変化を意識するように、株も株価変動のリスクを管理しておけば、配当や優待品を受け取れると考えている。「株は宝が次々に出てくる家のようなもの。どんどん持ち続けていきたい」。「優待オーナー」の夢は広がる一方だ。

浅倉さんの主な保有銘柄と優待内容

(日経マネー 南毅)

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