2019年8月26日(月)

日米外交60年の瞬間 第3部

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日本を感動させた「老兵は死なず」演説 サンフランシスコへ(10)
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜

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2011/10/22 7:00
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歴史に残る演説は多いようでいて少ない。

米国人による演説で日本人にもなじみが深いのは「人民の人民による人民のための政治」で有名なリンカーンのゲティズバーグ演説、「国が諸君のために何をなしうるかを問いたもうな、諸君が国のために何をなし得るかを問いたまえ」と訴えた1961年1月20日のケネディ大統領の就任演説あたりだろうか。

■朝鮮戦争勝利のための4項目

「老兵は死なず、ただ消えゆくのみ」で知られるマッカーサーの1951年4月19日の米上下両院合同会議での演説はそれに次ぐものだろう。しかしこの部分以外はあまり知られていない。マッカーサーが何を語ったか、やや丁寧に見ていきたい。

マッカーサー演説に対する当時の関心は、米国でも日本でも現在の想像を超えたものだったようだ。日本経済新聞は4月21日付朝刊の1面ワキでこれを扱っている。

「UP至急報=共同」とクレジットの付いた記事は「マッカーサー元帥は十九日午後零時十分(日本時間二十日午前二時十分)議会に到着、同三十二分上下両院合同会議に出席『全人類の運命は党派的方法でなく、国家の利害の最高段階によって決定されるべきものである』と冒頭して演説に入った。マ元帥の演説は三十八分にわたり一分間以上にわたる熱狂的な拍手のうちに元帥は降壇、議場を退出した」の前文で始まる。

議会への到着時刻、議場への入室時刻、演説時間、拍手の時間などの数字をすべて記すのは、現代の感覚からすると、異常にも思えるが、それほどのイベントだったのだろう。

演説の中身を示す数多くの見出しが紙面には躍っている。

「現状では勝利望めず」「マ元帥 両院合同会議で証言」「統参本部も同意見」「国府軍使用など四項目」「宥和こそ戦争誘発」「日本の前途に全く信頼」。実に6本の見出しが付いている。

余談だが、現在からみると、妙な日本語が目につく。「……と冒頭して演説に入った」もそうだし、「全く信頼」も、現代の新聞なら使わない。

閑話休題。演説が焦点を当てたのは朝鮮戦争をどう勝つかであり、4項目とは次のような中身だった。

1、中国に対する経済封鎖の強化
2、中国沿岸の海上封鎖
3、中国沿岸地域および満州(ママ)の空中探索禁止の撤廃
4、台湾にある国府軍に対する制限を撤廃し、国府軍の有効な作戦に役立たせるため補給援助を与える

「これらの見解はまったく軍人としての専門的立場にもとづく」とマッカーサーは述べている。中国を敵とみて戦う姿勢は、対日講和会議に中国を呼ぶべきだとする英国の考えとはかけ離れている。軍と外交当局が意見が違うのは、当然ではあるのだろう。

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