守る大手出版、間隙突く中堅中小 「iPad革命」の裏側(1)

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2010/6/18 9:00
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 米アップルの新型情報端末「iPad(アイパッド)」の上陸とともに、日本でも電子書籍の普及をめざす動きにようやく火が付き始めた。ただ、大手出版社は流通チャンネルを海外企業に押さえられることへの警戒感が強く、守りの姿勢も目につく。その間隙を突いて、新興勢力や中堅中小は新市場への参入を狙うが、本格的な電子書籍時代への道筋はまだみえてこない。

『死ねばいいのに』電子書籍版の記者会見後にポーズをとる京極夏彦さん(左)と講談社の野間省伸副社長=5月20日、共同

『死ねばいいのに』電子書籍版の記者会見後にポーズをとる京極夏彦さん(左)と講談社の野間省伸副社長=5月20日、共同

iPad上陸とともに大手出版の動きが一斉に活性化し、それを盛り上げるように報道も過熱した。自社が抱える雑誌媒体やウェブ媒体などで端末メーカーとしてのアップルを礼賛する出版各社。ただし、「ネット書店」としての評価は、毀誉褒貶相半ばする。先ゆく米国の状況を考えると、違った風景と事情が透けて見えてくるのだ。

1万点をiPad向けに販売

米国から約2カ月遅れでiPadが発売された当日、「日本電子書籍出版社協会(電書協)」が動いた。講談社や小学館など国内主要出版社31社が名を連ねる組織で、パソコンや携帯電話向けの電子書籍配信サービス「電子文庫パブリ」の母体でもある。

電書協は5月28日、今秋から電子文庫パブリで扱う既刊本の約半数、1万点をiPad向けに販売すると発表。これまで様子を見ていたスマートフォン「iPhone」向けにも、6月から販売を開始した。iPhone、iPad用の閲覧用アプリを無償で提供し、電子書籍は電子文庫パブリのウェブサイトで販売するという方式だ。

講談社が28日に発売した『死ねばいいのに』(京極夏彦著)の電子書籍版も話題を呼んだ。パソコンと携帯電話向けは電子文庫パブリで販売するが、iPhoneとiPad向けには専用アプリを自前で開発した。単行本で1785円の価格をiPad向けでは900円(発売後2週間は700円)で売り出し、iPad向けアプリの売り上げランキング上位に食い込むなど健闘を見せている。

だが、講談社が「大手出版社が文芸書の新作を電子配信するのは初めて」というように、新刊本の電子書籍化は緒についたばかり。今後すべての新刊本のアプリを出すわけではなく、あくまで試行の域を出ていない。

電子文庫パブリも、今のところ購入できる書籍の多くは「文庫本」だ。村上春樹や村上龍、宮部みゆき、高村薫など、扱いが1冊もない人気作家も多く、幅広いユーザーニーズに十分応えられる状況ではない。

電子書籍配信事業に関して記者会見で握手する(右から)KDDIの高橋常務、米国ソニー・エレクトロニクスの野口シニア・バイス・プレジデント、凸版印刷の前田取締役、朝日新聞の和気デジタルビジネス担当(5月27日、東京都港区)

電子書籍配信事業に関して記者会見で握手する(右から)KDDIの高橋常務、米国ソニー・エレクトロニクスの野口シニア・バイス・プレジデント、凸版印刷の前田取締役、朝日新聞の和気デジタルビジネス担当(5月27日、東京都港区)

そうしたなか、日本での電子書籍流通の新たな担い手として名乗りを挙げたのが、ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社の4社だ。iPad発売の前日、4社は電子書籍配信の事業企画会社を7月をメドに設立すると発表した。コミック、雑誌、新聞などのコンテンツを、パソコンや携帯電話に加え、ソニー製の電子書籍端末やiPadなど、端末にこだわらず配信するという。

大手出版各社はこの4社連合に協力する意向を示している。電書協の代表理事も務める講談社の野間省伸副社長は、「配信事業会社の設立をきっかけに、私ども出版社の進める電子書籍がより早く、読者の皆さまに届く形が作られれば幸いです」とコメントを寄せ、小学館、集英社などの大手出版も設立趣旨に賛同した。実現すれば、これら大手出版の書籍が4社連合の配信プラットフォームでも流通する可能性はある。

先を行くアップルとアマゾン

一見すると、iPadの上陸を機に、日本でも電子書籍が普及へ向かう機運が一気に高まったかに思える。だが米国と比べれば、その温度差を感じざるを得ない。大きな違いは、コンテンツの供給に徹するか否か。米国の出版業界は、「餅は餅屋」と言わんばかりに配信プラットフォームの運営には関与しようとしない。流通チャンネルは事実上アップルとアマゾン・ドット・コムの2社が握っている。

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