2019年8月26日(月)

乱獲の薬草「苗テラス」で人工栽培 三菱樹脂の末松氏に聞く
編集委員 滝順一

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2010/11/17 7:00
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――生物多様性条約の会議(COP10)でも議題になった遺伝資源を巡る問題ですね。人工栽培が打開の道になりますか。

三菱樹脂の末松優・農業資材部部長代理

三菱樹脂の末松優・農業資材部部長代理

「今、取り組んでいるのは、節(せつ)培養による増殖だ。節は茎のなかで芽や葉が出る場所で増殖能力が高い。節の細胞を培養して8倍くらいに増やし、苗テラスで一人前の苗にまで育てる。湿度を100%に保って気孔を閉じさせ根の成長を促すのがポイントだ」

「私たちの手法では、収穫まで通常3~4年かかるところ、1年で育つ。育成技術などの提供も含め、中国の種子企業などと協力して実用化を進めていく。3年以内くらいに商品化に持ち込みたい」

――人工栽培すると野生に比べて、薬効成分が少なくなるなどの問題は生じませんか。

「フラボノイドやグリチルリチンは根に含まれる。人工栽培をした甘草を国内の大学で分析してもらったところ、含有量に遜色(そんしょく)はない。個体差があって、野生に勝る場合もある」

――甘草以外の薬草についても、人工栽培を検討していますか。

「麻黄なども考えている。まず、用途の広い甘草で実績を積んでから展開したい」

〈取材を終えて〉 末松さんの「ひらめき」は薬草の植物工場という手つかずのニッチ市場を掘り当てた。甘草は薬効成分の吸収を促す効果を備えるとされ、漢方薬の7割に使われている最も需要の大きな薬草だ。

 一方、医薬品などの開発に役立つ動植物や微生物など遺伝資源の取り扱いは、10月に名古屋で開いたCOP10で先進国と途上国の利害が真っ向からぶつかる問題となった。遺伝資源の入手が難しくなりコストがかかるようになるのは避けられない。

 三菱樹脂のほかにも、独立行政法人医薬基盤研究所と鹿島、千葉大学が甘草を植物工場で生産する技術の開発を進めている。日本の製薬会社の中には中国の農家を指導して現地で薬草の安定的な生産を試みる動きもある。また政府は耕作放棄地を利用して国内生産を促すことも検討している。薬草を「第2のレアアース問題」にしないよう様々な試みが始まっている。

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