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日本発の無名アプリ「ゲーム発展国++」に世界が注目

ゲームジャーナリスト 新 清士

「AppStore」(米国)で販売されている「ゲーム発展国++(Game Dev Story)」の紹介ページ

2月28日から米サンフランシスコで開催されるゲーム業界の国際イベント「ゲーム開発者会議(GDC)」では、世界のゲーム開発者によって過去1年間のゲームから選ばれた最優秀タイトルが「Game Developers Choice Awards」として発表される。この賞の「ベスト携帯ゲーム部門」の最終選考に、日本の無名ゲーム会社のタイトルがノミネートされた。カイロソフト(東京・新宿)の「ゲーム発展国++(英語名:Game Dev Story)」だ。

このゲームは2010年10月にアップルの「iPhone」向け、同12月にグーグルの携帯電話向けOS「Android(アンドロイド)」向けアプリとして発売された。経営シミュレーションという比較的地味なジャンルに属し、見た目も2Dの小さなキャラクターがちまちま動きまわる低予算ゲームという印象がある。ところが、これが欧米圏で話題になり、海外の開発者の大絶賛を受けている。

ゲーム業界のパロディ満載

このゲームのテーマはゲーム会社の経営だ。期間は、「ファミコン」登場以前のゲーム産業の黎明期から、「Wii」などが登場する最近までの20年間。社員2人の小さなゲーム会社からスタートして、スタッフをうまく雇ってチームを運用する。優れたゲームを発売することで収益を伸ばし、規模を拡大していく。操作は単純ながら、ゲームの持つリズム感がいい。

もう1つの特徴は、日本のゲーム業界のパロディが満載な点。例えば、ゲーム機は「ソヌィ」の「プレステータス」、「雨天堂」の「ウテンドウDM」といった具合で、マニアックなゲーム機も数多く登場する。ディレクターは「堀田雄三」、プロデューサーは「ステイブ・ジョビン」など、ネタ元がわかりやすくついニヤニヤしてしまう。

英語版でもパロディが光っている。スタッフの体力を回復させる栄養ドリンクのアイテムは「Dead Bull」。「GAMEDEX」というゲームの展示会が開催され、ゲームをリリースすると、4人が10点満点で評価するクロスレビューが表示される。その合計点が36点以上になると「殿堂入り」し、売れ行きや続編を作れるかどうかが決まる。これもどこかの有名ゲーム誌にそっくりだ。

15年間で約20種類の経営ゲーム

このゲームは80~90年代の日本のゲーム産業の雰囲気がよく出ている。小さかった会社が資金力を得て、だんだんと大予算のゲームを開発できるようになる。最初は数千本しか販売できないが、広告費を使いゲームを出し続けることで知名度が上がり、100万本単位の成功が普通となり、会社の利益もうなぎ登りに増えていく。日本のゲーム産業がピークを迎えていた90年代の気分そのものだ。

カイロソフトの公式サイト画面

カイロソフトによると、このゲームは元々1996年に「ゲーム発展途上国」というタイトルで開発された。当時のウィンドウズパソコン向けソフト雑誌の付録CD-ROMに収録され、97年に商品化する予定だったが、結局実現には至らなかったようだ。

カイロソフトはその後、同様のシステムを継承するかたちで、古本屋、まんが家などをテーマにゲームのバリエーションを増やしていく。ゲーム発展途上国は03年にNTTドコモの「iモード」に移植され、さらに「カイロパーク」というブランドで経営ゲームをシリーズ化していった。

リサイクルショップ、回転寿司、デパート、学園、豪華客船、惑星開発、歌手育成、温泉旅館など、この15年間にリリースした経営ゲームは約20種類に上る。これほどのバリエーションをよく考えられるものだと感心する。十数年にわたり完成度を高めていった経営ゲームがスマートフォン版として世界販売され、海外の開発者に一気に知れ渡ったというわけだ。

注目の授賞式は3月2日

「Game Developers Choice Awards」の公式サイト画面

米Wired誌のオンラインブログは「中毒性の高いシミュレーション」との評を載せ、様々な欧米のメディアも同じような表現で高く評価している。アップルのアプリ販売サービス「AppStore」の英語圏のユーザーレビューは2200件に及び、日本のAppStoreの588件をはるかに上回っている。

経営シミュレーションゲームというジャンルは最近、ヒットがあまりない。豪華な3Dグラフィックスのゲームが全盛となり影が薄くなっていたほか、ゲーム機のコントローラーと相性が悪かったという理由もある。ゲーム発展国++は、果たして最終選考に残った他の大型タイトルを押さえて部門賞を獲得できるかどうか。注目の授賞式は3月2日に行われる。

新清士(しん・きよし)
 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心としたジャーナリストに。国際ゲーム開発者協会日本(igda日本)代表、立命館大学映像学部非常勤講師、日本デジタルゲーム学会(digrajapan)理事なども務める。

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