米HGST、ヘリウムガスを充てんしたHDD発売へ 消費電力を大幅削減
米HGST社は、ヘリウム(He)ガスを充てんしたHDD「シールド・ドライブ」を2013年半ばをメドに製品化すると発表した。これにより、現在5枚のディスク枚数を7枚まで増やすことができ、「エンタープライズ向けHDDの大容量化とTCO(total cost of ownership)の低減を実現できる」(HGST社)。なお同社は、試作したHeガス充てんのHDDを、2012年9月13日に開催した米Western Digital社のイベント「Investor Day」で公開した。
現在のHDDは、内部を空気で満たしている。これを、空気に比べて密度が約7分の1のHeガスに変えることで、ディスクやヘッドなどに加わる抵抗が減る。抵抗が減るとディスクやヘッドなどの振動が減って、設計上のマージン(余裕)を広げることができる。この結果、現在ディスク5枚を搭載しているスペースに、7枚搭載することが可能になるとする。
この他に、ディスクを回転させるための消費電力を削減できる。Heガス充てんHDDの試作品と、従来品の消費電力を比べたところ、消費電力が約23%減ることを確認した。7枚構成にすれば、「1T(テラ)バイト当たりの消費電力を約45%削減できる」(HGST社)という。また、Heガスは空気よりも熱伝導性が高く、HDDの静音性と動作温度の低減にも効果がある。実際に、試作品では動作温度が約4℃低減することを確認したとする。
HGST社によると、Heガスの効果は10年以上前からHDD業界で知られていた。しかし、Heガスを密閉して、しかも長期間の使用に耐えるような低コストの生産プロセスの開発が難しかった。今回HGST社は、これらの課題を解決する手法を開発し、量産化を決めた。
(日経エレクトロニクス 河合基伸)
[Tech-On! 2012年9月14日掲載]