[覆面座談会]現場ではケンカが頻発 「アジャイル」成功・失敗の分岐点(1)

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2010/12/20付
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 いま、企業のシステム開発プロジェクトでは、「アジャイル」[注1]方式の採用が本格化しています。Webアプリケーションなどスピード重視の開発案件が増えたからです。アジャイルは、開発途中での仕様変更などに柔軟かつ迅速に対応することを重視したやり方の総称です。一方、事前に仕様を詳細なレベルまで詰めておく、プロセス重視・手続き重視の従来方式を「ウォーターフォール」[注2]と呼びます。アジャイル開発は、ウォーターフォール開発よりも簡単そうに見えますが、安易に取り組めば失敗します。本連載の第1回では、アジャイル開発の経験が豊富な3人に、現場の様子を語ってもらいました。(聞き手は、池上俊也=日経SYSTEMS)

各アジャイル開発手法の提唱者たちによる「アジャイル宣言」で掲げる四つの価値  ウォーターフォール型で重視する要素(価値)とアジャイル開発で重視する価値を対比。ウォーターフォール型の価値を否定しているのではなく、重要であることを認めつつ、新たな価値にも目を向けることを促している。

各アジャイル開発手法の提唱者たちによる「アジャイル宣言」で掲げる四つの価値  ウォーターフォール型で重視する要素(価値)とアジャイル開発で重視する価値を対比。ウォーターフォール型の価値を否定しているのではなく、重要であることを認めつつ、新たな価値にも目を向けることを促している。

日経SYSTEMS(以下、日経):最近、業務システムの開発にアジャイルを適用する事例が増えてきました。アジャイル開発の経験が豊富な皆さんは、こうした状況をどのようにご覧になりますか。

Aさん:以前は若い開発者が中心となって、Webシステムの開発でアジャイルを採用するケースが多かったと思います。しかし最近は、ちょっと違う。開発会社のトップや、ユーザー企業の担当者がアジャイル開発の採用を求め、トップダウン的に取り組むケースが多いようです。それもこれまでウォーターフォール型を適用していた業務システムのプロジェクトに適用する事例が目立ちます。

Bさん:より速く、より安くシステムを開発する手法として、アジャイルが広く認知された結果でしょう。私がびっくりしたのは、最近見たRFP(提案依頼書)[注3]の中に「開発はアジャイルで」と書かれていたことです。これはアジャイルが確実に広がっている表れだと思います。プロジェクトマネジャー(PM)にも、アジャイル開発の経験が求められるようになってきました。

日経:ユーザーや上司から「アジャイルで開発せよ」と要求する傾向が強くなってくると、開発現場としては取り組まざるを得ないですね。

Cさん:そうだと思いますよ。ユーザー企業の中では、自分たちのビジネスを、スピード感を持って変えたいというニーズが強い。そこで「俊敏」や「機敏」と呼ばれるアジャイルに目を付けた。うちの会社でもアジャイルを適用した開発事例が増えています。アジャイルはもはや一部のエンジニアだけのものではないように思います。

■「俊敏」「機敏」の道は険しく

日経:アジャイルの適用が進む一方で、その難しさから失敗するプロジェクトも多いと聞きます。実際、現場ではどんな失敗があるのでしょうか。

[注1]システム(ソフトウエア)開発手法の一つ。アジャイルは「俊敏な」という意味。開発途中での仕様変更や機能追加などに臨機応変に対処すべく、システム開発とユーザーレビューを短い期間で繰り返しながらシステム全体を構築する。代表的なアジャイル開発手法は「エクストリーム・プログラミング」と「スクラム」
[注2]システム(ソフトウエア)開発手法の一つ。分析工程→設計工程→プログラミング工程→テスト工程、という順序で作業を進め、各工程での作業を完結させてから次の工程に進む。上流工程から下流工程へ滝が流れるように進むので「ウォーターフォール(滝)」の名が付いた
[注3]request for proposalの略語。ユーザー企業が、ハードウエアやソフトウエア、あるいはサービスを購入しようとする際に、各種の購入要件をまとめてベンダーに知らせるための文書を指す
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