2019年8月23日(金)

日米外交60年の瞬間 第3部

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米は超党派で対日講和 サンフランシスコへ(28)
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜

2012/2/25 7:00
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サンフランシスコへ向けたワシントンの動きも慌ただしくなってきた。トルーマン米大統領は1951年7月20日、サンフランシスコで9月4日に開く対日講和会議の米側代表の顔ぶれを発表した。

■アチソン国務長官ら4人を米首席代表に

「首席代表」はアチソン国務長官、ダレス国務省顧問、コナリー上院外交委員長(民主党)、ワイリー上院議員(共和党)の4人。首席代表が4人というのも奇妙ではあるが、それには理由がある。

この4人は講和条約、太平洋防衛条約、それにこの時点では現在と同じ日米安全保障条約と呼ばれるようになっていた日米間の安全保障取り決めのいずれにも署名することになっていた。トルーマンは、このほかに、講和条約、太平洋防衛条約、日米安保条約のそれぞれに6人ずつ超党派の議員を「代表」に指名した。

米国にとってサンフランシスコでの一連の行事は、戦争の終結を超党派で祝い、あわせて冷戦を戦う意思を鮮明にする場だった。後に触れるが、それは日本の吉田茂首相に重いメッセージとなる。

モスクワでも動きがあった。モスクワ駐在のカーク米大使とケリー英大使は、20日午後、グロムイコ・ソ連外務次官を訪ね、対日講和条約草案の写しを手渡した。

やはり20日、日本政府にも講和会議への招待状が届いた。

同じ日、米政府は講和会議への招待状を送った50国のリストを発表した。リストは別掲するが、中国は入っていない。

このリストは今日の視点でみても、面白い。ここに名を連ねる国々は、1951年時点で既に独立国だったわけであり、国際社会におけるいわば老舗である。欧州、中南米諸国が多いが、アジアはビルマ、フィリピン、インド、インドネシア、セイロンだけ。アフリカ大陸からはエジプト、エチオピア、南アだった。

■英国も新布陣

こうしたお膳立てをする米国務省にとってフィリピンが表明した講和条約への不満は気がかりだった。国務省スポークスマンは20日、この点に関する声明を発表した。

1951年
4月11日
トルーマン大統領がマッカーサー元帥を連合国最高司令官、国連軍最高司令官、米極東軍・極東陸軍総司令官から解職。後任にリッジウェー中将
4月16日ダレス特使再来日
6月20日日本政府、第1次追放解除を発表
8月6日日本政府、第2次解除を発表。鳩山一郎ら追放解除される
9月1日米、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋安保条約に調印
9月4日サンフランシスコ講和会議始まる
9月8日吉田首相、対日講和条約、日米安全保障条約に調印
12月24日吉田首相、ダレスに台湾の国民政府との講和を確約(「吉田書簡」)

声明は「対日講和条約草案中の賠償条項の真の意味についてフィリピンで重大な誤解があるのは明らかである」とし、「米政府は草案がフィリピンに対し、賠償の取り立ては可能との見解をとっていた」とやや釈明調である。

そのうえで「米政府は賠償条項の意味と実際的な操作を米専門家と協力して特別に検討することは、真の情勢を明らかにするのに役立つだろうと期待している」と外交的なレトリックで結んでいる。

英国の対日布陣でも講和に向けた動きがあった。エスラー・デニング氏が20日、駐日代表部首席、つまり大使に指名された。8月に着任するとされたから、講和後の新たな日英関係への布石だった。

デニング氏は英国外務省きっての当時の言葉でいう「極東通」とされ、外務省に入って最初の勤務地が東京だった。以後1920年から20年にわたり極東各地に在勤し、日本にも知己が多かった。

講和とは関係ないが、朝鮮での休戦会議は21日、いったん休会すると発表した。共産側が要求し、国連側が受け入れたものであり、双方がこれまでの提案を検討するためとされた。休会は25日までとされた。国連側の首席代表のジョイ中将は20日午後8時17分、東京に戻った。

別掲リスト=アルゼンチン、豪州、ベルギー、ボリビア、ブラジル、ビルマ、カナダ、セイロン、チリ、コロンビア、コスタリカ、キューバ、チェコ、ドミニカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、エチオピア、フランス、ギリシャ、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、インド、インドネシア、イラン、イラク、レバノン、リベリア、ルクセンブルク、メキシコ、ニュージーランド、ニカラグア、ノルウェー、パキスタン、パナマ、パラグアイ、ペルー、ポーランド、サウジアラビア、シリア、オランダ、フィリピン、トルコ、南アフリカ連邦、ソ連、英国、ウルグアイ、ベネズエラ、ユーゴ。

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