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ABBはなぜ中国で存在感を高められたのか

スマートシティ戦略をアジア地域責任者に聞く

 重電メーカーとして中国で存在感を示すスイスABB社。同社は日本では知名度がいまひとつのところがあるものの、グローバルでは13万人の大企業だ。本拠地はスイスだが、本社には300人しかおらず、経営陣は「飛行機がオフィス」と言うほど世界を飛び回る。
 そのABBが2011年11月23日から、プライベート・イベント「2011 ABB Power World」を開催した。場所は北京。ABBの経営陣はもちろん、中国の国家電力監管委員会、国家能源局、国家核電、国家電網といったそうそうたる公的機関の代表者が今後のエネルギー動向や政策を語り、ABBが中国に深く浸透している様子を来場者に見せつけた。エネルギー分野で、中国でここまで存在感を示す日本企業は少ない。
 ABBはなぜ中国での存在感を高めることができたのか。日本企業が学ぶべきところはどこなのか。ABBにおけるアジア地域の責任者である、同社North Asia RegionのPresident兼ABB(China)社のChairman and PresidentのClaudio Facchin氏に聞いた。
(聞き手は、日経BPクリーンテック研究所 望月洋介)

――今回の「ABB Power World」で、中国でのABBのポジションの高さが垣間見えた。

ABBの中国における活動は、1992年に販売の合弁会社を立ち上げたのが始まりだ。それから20年間、経験を積んできた。

当時、多くの企業は中国を「低コストの生産拠点」として見ていたが、ABBは中国を戦略的な市場としてとらえて入ってきた。だから販売拠点を立ち上げ、研究開発、設計、生産などすべての段階でバリューチェーンを構築し、ポジションを築いてきた。今後は「アフターセールス」として保守管理などのサービスにも力を入れていく。分野としては電力だけではなく、工場の自動化などに関しても同様に取り組んでいる。

――中国における企業規模拡大のピッチが早い。

中国でいまや従業員は1万8000人である。2年足らずで3000人も増えた。今後も中国の国内総生産(GDP)の伸びを上回る勢いで成長を遂げる。そのために人材は製造面でも研究開発面でも必要だ。

――よく言われる懸念だが、中国進出の際に「中国側に技術を持っていかれる」という恐れはなかったか。

それが中国に投資しない理由にはならない。中国市場にはそれをはるかにしのぐ魅力がある。加えて、中国もさまざまな技術の国際標準の採用に前向きに取り組んでいるということもある。

――中国におけるスマートシティ関連の取り組みを聞きたい。

中国政府が、第12次五カ年計画で「エネルギーの利用効率を向上させ、環境に配慮する」と明言したことは大きい。当社としては、送配電だけではなくデマンド・レスポンスなど多岐にわたってエネルギー利用の効率化に貢献していく。再生可能エネルギーなど不安定なエネルギーを取り込むときには蓄電ソリューションを持っていることが重要で、デマンド・レスポンスに適合したものを利用している。

風車は造っていないが、風力発電でカギとなる部品はすべて持っている。コンバーターや発電機、さらに送電網に接続する技術である。電気自動車も造っていないが、電気自動車向けに充電器を提供している。15~20分で充電できる直流版と、家庭で一晩で充電できる交流版である。

直流に関しては、データセンターの直流給電にも取り組んでいる。将来は家庭の直流給電化も考えたい。太陽光発電もLEDも情報機器もすべて直流なのだから、交流が入ることによる変換ロスを削減できる。

――同じ欧州企業であるドイツSiemens社などは、街全体をとらえたスマートシティ化を推進しているが、ABBのアプローチは異なるのか。

Siemensのアプローチとは違うと思う。Siemensは発電所、鉄道、照明など、街のインフラを考えた場合のいわゆる「ティア1」の立場にある。街のマスタープランありきの立場である。これに対してABBは「ティア2」の立場だ。カギとなる部品やユニット(キーコンポーネント)によってソリューションを提供していく。

――アジアにおける活動について聞きたい。欧州・北アフリカで「デザーテック計画」(北アフリカの砂漠で太陽熱や太陽光による発電を行い、それを欧州など消費地に送電する計画)が進んでいて、ABBはそこに参加しているが、それと同様のアプローチをアジアで実施するといった考えを持っているのか。

あくまでもキーコンポーネントでソリューションを提供するスタンスだ。高圧直流送電に関しては世界の半分の既存の設備に部品を提供している。アジア版デザーテックは各国・各地域の政府が考えるべきことで、ABBとしてはいつでも対応できる。そのための技術は保有している。

――管轄するアジア・中国に関して、2011年の3大成果を挙げるとどうなるか。

第1は、なんと言っても"3.11"への対応だ。ABBの日本社員は、規律を持って顧客のためによく頑張った。震災、津波でダメージを被った火力発電所の復旧など、社長が陣頭指揮をとって日本の組織が主体となって乗り越えた。

第2は、高圧直流送電だ。China Southern Power Grid社(中国南方電網有限責任公司)から、超高圧の案件を初めて受注できた。広東と雲南省の糯扎渡を結ぶ直流送電システムのコンバーターステーションに、800kVの超高圧(UHVDC)変圧器を納入するプロジェクトである。また、State Grid Corporation of China(国家電網公司)とは、上海と三峡ダム間で4億4400万ドルのプロジェクトを完成させた。

第3は、スマートグリッドの合弁会社である南京SAC自動化公司を2011年内に発足したこと。相手は国電南京自動化股分公司で、決まったばかりだ[注]

――2012年に向けた課題は何か。

世界経済が不安定になっている。欧米発の金融不安だが、日本や中国が乗り越えられるかどうか、大きな挑戦である。このような時期なので、成長とコストのバランスをとりながら舵(かじ)取りしていく。市場が成長しないと判断した場合はコストを削減する。コスト負担を軽くしておくことが、市場が再成長を遂げる際にすぐに動けることにつながる。

――最後に、日本企業に対する期待を聞きたい。

ABBのロボットや制御システム、過給機などは日本市場に浸透しつつあるが、まだ存在感が小さい。今後、日本企業はグローバル化を図るが、そのグローバル化のサポートができると考えている。

日本企業の継続的成長のパートナーになることを目指す。5~10年をかけて、戦略的な動きを起こしていきたい。

[注] 股分公司の「分」には実際にはにんべんが付く。

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