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日本原子力研究開発機構、海水からリチウム回収する技術

図1 原理図

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、イオン伝導体を分離膜として使い、海水からリチウム(Li)を分離する技術を開発した。海水を供給して、リチウムイオン2次電池の原料である炭酸リチウム(Li2CO3)の粉末を精製することに成功した。JAEAの役割としては、実用化に向けて開発が進められている核融合炉で使うリチウムを安定供給することが目的だが、リチウムイオン2次電池の需要も視野にある。

図2 海水からリチウムを回収する試験

地上でのリチウム資源の埋蔵量は推定で3000万tあり、すぐに枯渇する量ではない。しかし、チリ、アルゼンチンなど南米に偏っており、日本では南米諸国からの輸入に100%頼っている。南米では、膨大な敷地で1年以上かけてリチウムを含む塩湖の水を自然蒸発させてリチウムを製造しているため、今後、リチウムの需要が増えても対応できず、資源不足に陥る懸念ある。一方、海水には約2300億tというリチウム資源がある。

図3 得られた炭酸リチウムの粉末

海水とリチウムを含まない回収溶液(希塩酸)をイオン分離膜の両側に供給し、海水と回収溶液との間にリチウム濃度の差を起こさせることにより、海水中のリチウムが回収溶液に移動する(図1)。イオン伝導体中にリチウムのイオンが移動することで、電極間に電子が流れ、電気が発生する。イオン伝導体は、リチウム、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、リン(P)、酸素(O)を含むNASICON型結晶構造のセラミックス。原理としては「電池」なので、電気分解と違って電力は使わず、逆に発電する。ただし、希塩酸、炭酸ナトリウム(Na2CO3)などの原料を造るためのエネルギーは必要だ。

実際の海水からリチウムを回収する試験をしたところ、3日間で海水に含まれるリチウムのうち最大約7%を回収することができた(図2)。さらに、海水の代わりに豆腐作りに使う「にがり」(リチウム濃度は海水の約50~100倍)を使い、同様の試験条件でリチウムを回収したところ、海水と同等の回収性能が得られた。

実験したのは海水とにがりだが、ほかに多くの原料からリチウムを得ることができる。使い終わったリチウムイオン2次電池の電極を溶解し、リサイクルさせるシステムを作ることができる。海水から塩を造る場合、逆に海水を淡水化する場合に廃棄している濃縮海水からリチウムを得ることもできる。

リチウムイオン電池の原料としては、主にLi2CO3を使う。一方、今回開発した技術で得られたLiは、希塩酸中にLiCl(塩化リチウム)が溶けた状態で存在する。このためLiClからLi2CO3粉末を得る工程を検討した。まず、LiClと安価なNa2CO3(炭酸ナトリウム)水溶液を混合し、Li2CO3の沈殿物を得る。次に、沈殿物をろ過で回収し、乾燥することで、Li2CO3の粉末を精製することに成功した(図3)。

なお、正極では水素(H2)ガス、負極では塩素(Cl)ガスが得られる。これらも用途が広く、商業的な価値がある。

(日経Automotive Technology 浜田基彦)

[Tech-On! 2014年2月13日掲載]

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