大日本印刷など、人工DNAを含んだ偽造防止向けインキ

大日本印刷と、理化学研究所のベンチャー企業であるタグシクス・バイオ(本社横浜市)の2社は、人工DNA(デオキシリボ核酸)を含有した正規品認証/偽造防止向け印刷用インキを開発した(図)。国内外の紙幣やパスポート、有価証券、公的文書などの使用に向くという。
大日本印刷などは、開発した人工DNA含有インキを「第三者による模倣がほぼ不可能」としている。
これまでにも、生体分子のDNAを偽造防止などに活用するケースはあった。しかし、生体分子のDNAでは、主に2つの問題点があった。具体的には(1)特殊な分析装置や解析技術があれば複製が可能である、(2)光や温度、湿度などの環境条件により保存性が低下する――という2点である。
今回、タグシクス・バイオが開発した人工DNAには、通常のDNAと同じ、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)という4種類の塩基に加え、人工的に作り出した塩基対が組み込まれている。人工塩基の分析には、「独自のノウハウが必要であるため第三者による模倣が困難」(タグシクス・バイオ)といい、これにより(1)の問題を解決した。
(2)の問題は、2つの方法を採用することで解決した。1つは、人工DNAに、光に強い塩基配列を持つDNAを採用したこと。もう1つは、印刷物表面を保護インキでコーティングすることにより、人工DNAが表面に露出しないようにしたことだ。
正規品の認証は半日~1日半で可能だという。費用は、50万枚を印刷する場合で、人工DNAを含有しないインキで印刷する場合に比べて1枚当たり10~20%程度の増加になるという。
(日経ものづくり 池松由香)
[Tech-On! 2013年2月12日掲載]
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