2018年10月17日(水)

進むCO2の農業利用 温暖化の「悪玉」を有用資源に

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2013/2/20 7:00
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■オランダで進むCO2の温室栽培利用

トリジェネレーションの発展形として、ここにきて注目されているのが、CCU(CO2の回収・利用)だ。CCUの場合、排気から積極的にCO2を分離し、高濃度のCO2を、農業や工業に利用する。

もともとはCCS(CO2の回収・貯留)として、火力発電所などの排気からCO2を分離・回収し、地下の帯水層に圧入して閉じ込めるプロジェクトが検討さてきたが、分離したCO2を経済価値の高い用途に使えないかとの発想が生まれ、CCUと呼ばれ始めた。CCSは排出量取引制度のなかで経済価値に換えるしかないが、CCUならば、排出量価格の変動に左右されずに、安定的な収益源になる可能性がある。

図4 オランダ、ハーグ南部の園芸農家。ロイヤル・ダッチ・シェルの製油所からCO2の供給を受け、野菜の育成に活用している

図4 オランダ、ハーグ南部の園芸農家。ロイヤル・ダッチ・シェルの製油所からCO2の供給を受け、野菜の育成に活用している

回収したCO2の利用法としては、これまでも油田やガス田に圧入して、回収を増資する試みがあったが、CCUはより積極的にCO2を原料などにすることを視野に入れている。

その先駆的な例がオランダに見られる。同国ではここ数年、精油所など化学工場の工程から排出されるCO2を温室栽培に活用する事業が軌道に乗っている。ロッテルダム近郊の工業地帯にある英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルの製油所では、2005年から精製工程から出るCO2をほぼ100%の濃度まで高め、ハーグ南部の園芸農家の温室に供給している(図4)。

地元ガス会社と建設会社の合弁会社であるOCAPが、シェルからCO2を購入して、パイプラインで農家にCO2を供給、販売している。2012年1月には、さらにロッテルダム近郊のバイオエタノール製造会社、AbengonaからのCO2供給施設も整備した。

工場でCO2を圧縮し、パイプラインで送る。搬送中に大気と混ぜて1%の濃度でハウスに投入する。温室内のCO2濃度は、平均して通常の約2倍(760PPM)になる。CO2の多い環境下で、野菜の成長は約25%増進するという。現在は、約500軒の農家(総温室面積約13km2)に、年間30万tものCO2を供給している。

CCUが注目され始めたのは、オランダのように工場と農家が連携できる可能性があるからだ。現在、CCSプロジェクトをにらんで排気からCO2を効率的に回収する技術の開発が進められている。将来的にCO2の回収コストが大幅に下がっていけば、ハウス農家向けのCO2提供サービスの事業性が高まる可能性がある。

■CO2の工業利用も視野

その先を見据えた動きとして、CO2を化学原料として工業的に利用しようとする試みもある。すでに炭酸塩鉱物にCO2を蓄えて建設材料を製造したり、コンクリートにCO2を吸収させたりする取り組みがある。

また、CO2と水素(H2)を原料にメタノールを製造するプロセスが確立している。ただ、化学的に不活性なCO2を経済的に価値のある材料や燃料に変換するためには、エネルギーを投入する必要がある。このエネルギーに化石燃料を使った場合、CO2を排出するので温暖化対策にはならない。

CCUの究極的な目標は、再生可能エネルギーを使ってCO2を有用な材料や燃料に転換することだ。こうした研究分野で注目されているのが、藻や人工光合成を使った炭化水素などの製造だ。植物は光合成によって太陽光を使いCO2と水から炭素化合物を作り出す。

最近注目されているのは、光合成の結果、体内に炭化水素油を蓄える藻類だ。一方、人工光合成とは、金属触媒や金属錯体など量産可能なデバイスを反応場に、CO2と水を太陽エネルギーで炭化水素に変換する技術だ。

ここ数年、国内外でこうした研究が活発化している。日本でも藻の分野でベンチャーのユーグレナ、人工光合成ではパナソニックや豊田中央研究所などが画期的な成果を上げている。

CO2の用途が、作物生産の増進に加え、工業的な手法による炭化水素製造にも広がれば、CO2提供サービスの需要が爆発的に膨らむ。そうなると、太陽光や風力による電気と並んで、炭素循環を前提にした液体の炭化水素燃料が再生可能エネルギーの2次エネルギー(エネルギー媒体)になり、脱化石燃料時代のエネルギーシステムの選択肢が増えることになる。

トリジェネレーション、そしてCCUによるCO2の有効利用の先には、こうした次世代エネルギー社会を垣間見ることができる。

(日経BPクリーンテック研究所 金子憲治)

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