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東京未来地図 目玉開発続々、「五輪特需」で湾岸ブーム

五輪で変わる東京(1)

 2020年東京五輪の開催が決まり、都市の大改造が加速し始めた。東京は今後どんな姿に変貌するのか――。日経アーキテクチュア編集部が中心となってまとめた「東京大改造マップ2020」では、東京23区内で計画されている延べ面積1万平方メートル以上の大規模開発や、道路・鉄道など交通インフラの情報を網羅的に収集。「東京の未来地図」を作成し、注目エリアの今後を予測した。連載「五輪で変わる東京」では、変貌を遂げる東京の姿を、「街」「道路」「住まい」の観点からそれぞれ見ていく。第1回となる今回は、最も大きく変わる「湾岸部」を取り上げる。

東京五輪に向けて最も変貌するのが、晴海や豊洲、有明などの湾岸部だ。五輪競技施設が集中し、選手村の開発も始まる。既に超高層マンションの建設が相次ぎ、豊洲新市場の完成で、観光地としての存在感も強まる(図1、地図A、地図B)。

図1 大規模開発が始まる晴海の東京五輪選手村や豊洲新市場の敷地を南東から見る。周辺には超高層マンションの計画も相次ぐ。環状2号線の開通で都心へのアクセスも向上。五輪施設や新市場などの開発で、一大観光エリアとしても注目度が高まっている(写真:川澄・小林研二写真事務所)
地図A 東京五輪で変わる湾岸部1
地図B 東京五輪で変わる湾岸部2
図2  五輪でバレーボールの会場となる有明アリーナ(地図AのB-2)の整備イメージ。有明には複数の五輪競技会場が集まる(資料東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会、以降特記以外は同じ)

東京五輪のコンセプトは「コンパクトな開催計画」。その中心は、晴海に建設予定の選手村だ(地図AのA-2)。

招致委員会の立候補ファイルでは、選手村から半径8kmに五輪施設の85%を集中させると強調。競技会場となる37施設のうち湾岸部だけで21施設が集まる(図2、図3)。

選手村には、多くの不動産関係者が熱視線を送る。招致委員会が、選手村の大半を民間事業者が整備する方針を掲げたからだ。

図3 五輪の37施設中21施設が湾岸部に集中。五輪競技会場となる37施設のうち21施設(赤字)が、有明などの湾岸部に集まる。選手村や国際放送センター(東京ビッグサイト)など競技会場以外の五輪施設も湾岸に位置する

44万平方メートルの巨大住宅地が誕生

選手村の敷地は約44万平方メートル。主にスタッフが使用する運営ゾーン(東側)と、五輪選手の居住ゾーン(西側)とに分かれる。このうち、運営ゾーンは仮設施設として整備し、居住ゾーンは恒久施設とする(図4)。

図4 選手村は44万平方メートルの巨大な街。左は選手村の整備イメージ。開発は民間事業者が担うので、設計は別途行われる。右は選手村のゾーン分け。大きく西側の居住ゾーンと東側の運営ゾーンに分かれ、居住ゾーンは五輪後に住宅となる。南北を貫く環状2号線がBRT(バス高速輸送システム)の路線となる予定だ

居住ゾーンは五輪開催後に、住宅として転用する。猪瀬直樹前東京都知事はIOC総会のプレゼンテーションで、選手村を「過去数十年で最大級の住宅開発だ」と説明した。

現在、選手村予定地の土地は東京都が保有する。都は配置計画や居住施設に関する条件を付け、居住ゾーンを開発する民間事業者を公募する考えだ。東京都スポーツ振興局オリンピック・パラリンピック大会準備部の澤井正明選手村担当課長は、「デベロッパーに限るのか、他業種を含めるのかは検討中だ」と話す。

民間事業者が開発し、五輪開催中は大会組織委員会に貸し出す。賃借料は最大で38億円。五輪後、住宅として分譲、賃貸する仕組みだ。

選手村は五輪期間中に1万7000人滞在

選手村は、五輪期間中に1万7000人が滞在できるように整備する。住戸案は4~8人用、広さは60~135平方メートル。選手を効率的に移動させるため、全ての居住用フロアを2~14階に集中させる方針だ。

図5 選手村施設は超高層も可能。選手の移動しやすさを考慮して2~14階を使用することとしているが、民間事業者による整備は15階以上も認める。ただし、15階以上は五輪期間中は使用しない(資料:取材を基に日経アーキテクチュア誌が作成)

ただし、民間による施設整備を14階までに制限しているわけではない(図5)。「事業者の判断によるが、超高層マンションもあり得る。その場合は、五輪期間中は15階以上を使わないことになる」(澤井担当課長)

全て5人用住居だと仮定すると、2~14階で3400戸。15階以上を含めると、五輪後に1万戸規模の住宅が一気に誕生する可能性もある。

晴海周辺では、超高層マンションの建設も相次ぐ。不動産調査会社の東京カンテイによれば、選手村以外で計画が判明しているものだけで1万戸の住宅供給がある。多くのマンションは東京五輪までに完成する予定で、湾岸部は住宅地としての存在感を増しそうだ。

40万平方メートルの巨大市場で観光も

図6 豊洲新市場の完成イメージ。青果棟、水産仲卸売場棟、水産卸売場棟の3棟が中核の施設。東京都は市場内に見学者用通路を設ける方針で、観光の目玉となりそうだ(資料:東京都)

住宅地としてだけではなく、観光地としての注目度も高まる。五輪関連では、有明アリーナ(地図AのB-2)など恒久施設も多く、五輪後もスポーツ観光エリアとなる可能性が高い。

もう1つの目玉は、豊洲新市場だ(地図AのB-2)。築地市場を移転する計画で、延べ面積は現状の23万平方メートルから40万平方メートル以上に拡大される(図6)。2016年3月には完成する予定だ。

効率的な物流や食の安全・安心といった市場としての機能向上に加え、東京都は地域活性化を目的とした「千客万来施設」を整備してにぎわい創出も図る(図7)。千客万来施設は、民間事業者が整備する。市場に隣接する約1万7000平方メートルを、事業者が30年間の定期借地で借り上げる。公募型プロポーザルでは、「多種多様な飲食・物販店舗」、「観光客をおもてなしする施設」などの条件を付けた。

図7 地域活性化施設を民間で整備。上は「千客万来施設」の整備イメージ。都は応募プロポーザルによって千客万来施設の整備・運営者を公募した。整備方針などは要件として示したものの、施設の内容については応募者のアイデアを重視する(資料:東京都)

東京都中央卸売市場新市場整備部の北島隆管理課長は「築地のブランドを引き継ぐ施設にするため、民間のアイデアを活用したい」と話す。事業者は2014年2月に決定する。

湾岸部は、カジノの誘致先としても有力だ。自民党などは2013年12月、カジノを中心とする統合型リゾート(IR)施設の整備を政府に促す法案を衆議院に提出。2014年の通常国会での成立を目指している。

東京都港湾局臨海開発部の担当者は「エリアは限定していないが、開発余地があるという点で臨海部が最有力だ」と話す。

候補地の1つが台場地区だ。政府が検討を進める国家戦略特区に対し、フジテレビジョンや三井不動産、鹿島、日本財団のグループは、湾岸部への国際観光拠点整備を提案。「広大な開発可能エリア」として、青海(あおみ)1丁目(地図AのA-4)の敷地を挙げた。青海は、猪瀬前都知事が2013年9月に「大型クルーズ客船に対応可能な客船埠頭を臨海副都心地域に整備する」と明らかにした地域でもある。

課題は交通インフラ

こうした大規模案件が進むなか、湾岸部の課題となりそうなのは交通インフラだ。環状2号線(地図AのB-2ほか)の整備で自動車による都心アクセスは向上するが、鉄道による輸送に難があると指摘する声は多い。

不動産経済研究所の福田秋生取締役企画調査部長は、「選手村周辺は駅から遠く、利便性が高くない。都心から近いという付加価値はあるが、鉄道網が改善しなければ住宅地として人気エリアとなるかは未知数だ」と指摘する。

五輪開催で新たな交通インフラ整備の機運が高まっているのは確かだ。江東区は、東京メトロ有楽町線を延伸し豊洲駅と半蔵門線の住吉駅とを結ぶ計画を検討。中央区は、環状2号線を利用して晴海と銀座とを専用レーンで結ぶバス高速輸送システム(BRT)の構想を持つ。将来的には次世代路面電車(LRT)も視野に入れている。ゆりかもめにも豊洲から勝どきまでの延伸構想がある。

こうした構想が実現すれば、巨大住宅地としての開発が進む晴海や豊洲の利便性は大きく向上する。しかし、これらが実現してもなお、東京五輪開催時の観光客輸送を不安視する意見もあり、今後も交通インフラをめぐる議論が続きそうだ。

(日経アーキテクチュア 島津翔)

[日経BPムック『東京大改造マップ2020』の記事を基に再構成]

[参考]日経BP社は2014年2月3日、「東京大改造マップ2020」を発行した。東京五輪決定で活気付く都市改造の最新動向を、日経アーキテクチュア、日経コンストラクション、日経不動産マーケット情報、日経ビジネスの各雑誌の記者が取材。建設・建築にとどまらない"東京改造"の影響を、詳細な地図を交えて分かりやすく解説。東京で暮らす都市生活者、東京で働くビジネスパーソンはもちろん、「ビル」や「鉄道」、「地図」や「街歩き」に興味を持つ人も楽しめる。

東京大改造マップ2020 (日経BPムック)

編集:日経アーキテクチュア
出版:日経BP社
価格:1,050円(税込み)

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