伊藤忠商事、異文化への関心を重視 ~人事担当者インタビュー(5)

2010/12/20付
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2012年春の新卒を対象にした企業による採用活動がスタートした。景気の先行き不透明感が強まるなかで採用戦略をどう描くのか、各社の人事担当者に聞く。今回は伊藤忠商事の大林稔男執行役員人事部長

――2012年度の新卒採用計画は。

伊藤忠商事の大林稔男執行役員人事部長

伊藤忠商事の大林稔男執行役員人事部長

「11年度は総合職、事務職あわせて約140人が入社する見込みだ。12年度の計画は来年1月に最終的に詰めるが、同程度を確保するつもりだ。過去に足元の業績に応じて採用人数を増減した結果、中途採用で人員を補充しなければならなかった世代がある。この学習効果から毎年、安定採用する方針だ」

――商社各社は「グローバル人材」の採用と育成を掲げている。

「従来の貿易関連に加え、多様な海外投資が商社の収益源になった。海外志向が強く、関連の業務や駐在に耐えうる人材が欲しい。語学や海外経験もポイントだが、それ以上に自分と異なる価値観や文化に理解を示せる資質が重要だ。面接では営業、間接部門を問わず全社で約900人の社員を動員する。当社の様々な社員が高評価を与える学生はこうした資質が高いとみている」

「中国事業に特に注力しており、中国に関心が高い学生も歓迎だ。今後、新入社員は若手のうちに全員を中国留学させる方針だ」

――大手商社では日本を介在しない海外間のビジネスも増えている。

「対日の取引が中心だった以前とは異なり『日本人であることの付加価値』はなくなってきている。社員には伊藤忠商事という会社の価値観は求めるが、それ以外の価値観はこれからは必要ない」

「当社の社員は回数で2~3回、期間で10~15年を海外駐在するのが平均だが、今後は駐在期間がもっと長くなる可能性が高い。実際、『駐在限度』と呼ぶ駐在時の上限年数を廃止した」

――若い商社マンが海外に行きたがらないとの話も業界で聞くが。

「海外に行きたい人を採っており、これは選考段階でも何度も確認している。ただ、入社して以降、色々な人生設計があり、志望が変わっていくことはある。特に育児などに直面する女性がキャリアの半分を海外で過ごすのは簡単ではない。ここ数年、女性の新卒採用数を拡大してきており、育児などを抱えながら海外駐在する女性社員をどう支援できるかは人事の課題の1つだ」

――(商社の業界団体である)日本貿易会が13年度から学生の選考時期を4カ月後ろ倒しにする案をまとめた。

「当社も積極的に後ろ倒しを推進したい。学生が1年間も就職活動するのが正しいとは思えない。面接をしてみると、大学院生と学部生は経験の差が大きいのか、人としての成熟度がだいぶ違うことも多い。勉強や海外留学、学内の人間関係作りなど学生としてやることをやってもらって、そのうえで就職活動に臨んで欲しい」

「学生には内定を取ることを目標にするのではなく、ブランド志向でもない就職活動をして欲しい。最近の学生は就職に関する情報量が多すぎて、消化できていない人も多い。(後ろ倒しで活動期間が減れば)こうした状況も改善するかもしれない」

――若手教育の課題は。

「これは商社だけのことではないが、どのようにメンタルケアするかが課題だ。うつ病を発症する若手社員は以前と比べ増えている。早期に発見できないと、職場への復帰が難しくなる」

「当社は入社2年目、4年目の社員全員がカウンセラーと面談する取り組みを09年から始めているが、さらに対策を進めていきたいと考えている」

(聞き手は堀田隆文)

[日経産業新聞2010年11月24日付の記事を再構成しました]

次回は12月21日に掲載します。
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