担い手は「草の根」に、官製クールジャパンの死角
クールジャパンの実像(3)

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2013/6/13 7:00
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前出のイラストレーター、オオタニはこう指摘する。「クールジャパンとして海外に、これが今の日本の有力なコンテンツですよ、と紹介するとき、質がいいものでなければならない。で、質がいいか悪いかは、クリエイティビティーに関わらない方には分からないのではないかと思うんです。私たちみたいなところに聞いてくれれば、ご紹介できるのになぁと……」

■本当のクールジャパン、3つの担い手

「ニコニコ超会議」のライブイベント終盤で熱唱する外国人ら。オタク文化の親善大使として活躍している

「ニコニコ超会議」のライブイベント終盤で熱唱する外国人ら。オタク文化の親善大使として活躍している

クールジャパンには3つの担い手がある。世界に向けて日本のポップカルチャーを拡散するプラットフォームや組織が1つ。カワイイ文化をアジアに広める吉本興業であり、オタク文化を世界に拡散するTOMやニコニコ動画が、それにあたる。もう1つは、海外で布教にあたる熱心なファン。親善大使としての活躍は、連載2回目で紹介した通り。

そして最後が、今回、紹介したようなクリエーター、コンテンツの作り手だ。草の根で新たな文化を築く、最も重要な担い手といえよう。しかし、残念ながら官製クールジャパンは、この担い手のどれもが不在のまま、動き出してしまった。だから現場のニーズから離れていく。

慶応義塾大学大学院教授の中村伊知哉はこう苦言を呈する。「クールジャパン政策は、文化産業力という日本の強みを発揮することにようやく政府が本気になり始めたという点で期待がかかる。だが、『誰が・何を』行うかを間違えると逆効果。既得権者や権威の思うままに一時的にカネをばらまき、弱った産業や文化の保護を図ったり、結局ハコモノに税金をつぎ込んだりする事態に陥ってはならない」

■「国としての本気度が問われている」

中村はクールジャパン推進会議の「ポップカルチャー分科会」の議長を務め、「飛び出せ、日本ポップカルチャー」と題した提言を今年4月にまとめている。いわく、キーワードは「みんなで」「つながって」「そだてる」。中村は補足する。

「提言では、大衆文化という性格を考慮して、政府主導ではなく産業界もファンもユーザも含め、『みんな』が参加して発信すべきという点を強調した」。既得権者へのばらまきから脱却し、草の根の担い手に目を向けよ、という提言。しかし現時点で、これが政策に反映され、実行できているとは言い難い。中村は続ける。「提言は従来の政策の進め方に転換を迫るもの。それが実行できるのか。持続性のある政策が採られるのか。そうした点を含めて、国としての本気度が問われている」

6月12日、政府が500億円を投入する官民ファンド「クール・ジャパン推進機構」を設立する法案が参議院で可決され、成立した。クールジャパンの御旗のもと、税金が何に使われるのか。その一つひとつを注意深く監視していく必要がある。

(電子報道部 井上理)

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