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ヤフー・カカオ連合が本腰、"韓流"でLINE対抗

 ついにヤフー・カカオ連合が動き出した。11日、韓国を中心に世界7000万人のユーザーを抱えるスマートフォン(スマホ)向け無料通話・メールアプリ「カカオトーク」が、国内でのヤフーとの連携策やプロモーション戦略を公表した。ヤフーが半分を出資する合弁会社、カカオジャパン(東京・目黒)は「来年度中に3000万ダウンロードを狙う」とする。"韓流"の日本攻略法とは。

「(クリスマスは)手料理をいっぱい作って、友達を呼んでワイワイやろうと」「うちのサンタさんは毎年、動物をプレゼントしてくれるけれど、今年は何をプレゼントしてくれるのかね」

会見したヤフーの村上臣CMO(右)と、カカオジャパンの朴且鎮社長(左)。中央はCMに起用された土屋アンナさん(11日、東京・目黒)

明日朝、モデルで歌手の土屋アンナさんの軽妙なトークが、テレビ各局のワイドショーで流れるのだろう。芸能人をきっかけに商品名や社名がテレビや雑誌などに露出することを狙う「パブリシティー」。仕掛けたのはヤフーが出資するカカオジャパンだ。

韓国では寡占状態のカカオ

今年10月、ヤフーとの資本・業務提携を発表して以来、目立った動きを見せていなかったカカオ陣営。13日より、土屋さんや劇団ひとりさんを起用したテレビCMを全国で放映し、国内3000万ユーザーを誇る無料通話・メールアプリ「LINE」を追いかける。

カカオトークは、2010年3月、韓国カカオがスマホ向けに公開したアプリ。韓国では5000万ダウンロードを達成し、同分野では寡占状態にある。そのほか世界229の国・地域でも公開されており、合計では世界7000万ダウンロードと、同8000万のLINEに肉薄する存在だ。

ただ日本では芳しくない。LINEより約8カ月も早い10年10月から日本語版のアプリを提供しているものの、後発のLINEに一気に追い越され、現時点で累計750万ダウンロード。実際に利用しているアクティブユーザー数は、その半数にも届かないとみられる。それもそのはず。カカオジャパンの朴且鎮社長いわく「これまで日本ではほとんど何もしてこなかった」

日本ではプロモーションを優先

13日から放映されるカカオトークのテレビCM

そこで起死回生をかけ、日本ではヤフーと組むことにした。資本力も得たカカオジャパンは、ベッキーさんを起用したLINE、吉高由里子さんを起用したディー・エヌ・エー(DeNA)の「comm(コム)」に続けと、テレビCMを中心としたプロモーション戦略を開始する。

CMで強調されるのは、5人まで同時に無料通話ができる機能や、動いたり音が出たりする無料スタンプなど。いずれもLINEやcommといった競合アプリにはないカカオならではの特色だ。そのために「5人通話機能は韓国本社で開発したが、提供開始は日本版アプリを優先した。日本版でも有料スタンプはあったが、わざと下ろして無料にした」(朴社長)

同時に、いよいよ6000万人以上のユーザー基盤を誇るヤフーとの連携策も始まる。

カカオトーク上で連携アプリの「トークPlus」機能を利用した例

まずは12月中に、カカオトーク上でヤフーの各種アプリを利用できるようにする。カカオトークの上にさらにアプリが展開されるような「トークPlus」という機能で、「Yahoo!ロコ」の路線情報や地図情報を、友だちとの「トーク」中でも簡単に参照できるようになる。さらにオークションやショッピングといったヤフーの主力サービスとも連携させていくという。

「まだ70%の余地がある」とヤフーの村上臣CMO

LINEの「公式アカウント」にあたる企業・ブランド・著名人向けアカウント「Plusカカとも」との連携策も徐々に始まっている。すでに「Yahoo!ニュース」「Yahoo!ファイナンス」といったアカウントが開設され、友だちになる(フォローする)と、定期的に情報が送られてくる。アカウントの種類、内容ともに、今後さらに拡充される予定だ。

「カカオさんはグローバルで7000万人以上、1日42億メッセージを問題なく遅延なく届ける独自の通信技術を持っている。これがパートナーに選んだ大きな理由の1つ。ヤフージャパンも日本一のトラフィックをさばき続けてきた。我々と融合することで、さらに拡張できる」

カカオジャパン取締役も務めるヤフーの村上臣CMO(チーフ・モバイル・オフィサー)は、11日のCM発表会でこう語った。「日本市場のスマホ普及率は30%をようやく超えた状態。どんどんスマホにシフトしており、まだまだ70%の余地があるということ」と強気だ。

マクドナルド、ロッテ免税店など著名ブランドが活用

強気姿勢はカカオ側も変わらない。韓国カカオ本社からやってきた朴社長は「韓国では激戦区のなかでカカオだけが残った。誰もここまでくると思わなかった。日本でも1回、やってみるべきじゃないか、踏み出すべきだ、という認識にいたった」と自信を隠さない。はやり、韓国での成功体験がその裏打ちとなっている。

韓国でのカカオトークの使われ方は、日本のLINEの上をゆく。企業やブランドの公式アカウント(Plusカカとも)の活用はLINEでのそれより早い11年10月から。「マクドナルド、ロッテ免税店など著名な約260社・ブランドが利用しており、韓国企業が消費者とコミュニケーションするデファクトになりつつある」(朴社長)という。

ネットからリアル店舗へと送客する「オンライン・ツー・オフライン(O2O)」施策も同じだ。

LINEはこの12月から公式アカウントとは別に、店舗や飲食店など向けの「LINE@」という新サービスを開始したばかり。だがカカオトークも、今年初めから韓国で、今年5月からは日本で、すでに同様のサービスを始めている。

新大久保、街単位で「O2O」も

カカオ版O2Oサービスの名前は「ロングテールカカとも」。国内では東京・新大久保近辺の韓国料理店、約100店舗が、カカオトークを利用した顧客とのコミュニケーションを始めている。ただし、日本では分野の偏りや「中途半端」な感が否めないことも確かだ。

カカオトーク版の公式アカウント「Plusカカとも」の一覧。"韓流"が目立つ

カカオ版公式アカウント、Plusカカともは、「韓ドラ ソムリエ」など"韓流"の銘柄が目立つ。韓流好きには刺さりそうだが、そうではないユーザーを取り込むには弱い。ロングテールカカともも上記のように韓国料理店や韓国人街を対象とした試行の域を出ていない。

「韓流が増えたのは結果論。公式アカウントも、ロングテールカカともも、まだ開拓の専門部隊は設けておらず、問い合わせベースで対応している段階」とする朴社長は、こう続ける。「開拓はこれからで、組めるところとはどこでも組む。ニッチなところにはいかない」

厳格なブランド管理、巨大であるがゆえの壁

ヤフー連携も、どこまでユーザーの興味をひき付けられるか未知数だ。単にヤフーのコンテンツがカカオ上でも楽しめる・利用できる、というレベルでは、ヤフーのアプリを別途ダウンロードしているユーザーには刺さらないだろう。

むしろ爆発的なユーザー増を狙うなら、ヤフーのトップ画面で大々的に宣伝、誘導する施策などが求められるが、現時点でカカオトークへの「リンク」すら張られていない。カカオトークのアプリには小さく「Yahoo!Japan」とあるだけで、ヤフーのロゴ表示もない。

ある関係者は理由を「ヤフーには厳格なブランド管理のルールがあり、それをカカオトークは満たしていないため、さまざまなことが遅れている。スマホ向けヤフートップページでは、ほかのサービスとの『枠』の奪い合いになってしまい、カカオだけが優遇されるというのは難しい」と明かす。「爆速」前の企業文化が邪魔をしている格好だ。

こうした課題をクリアし、ヤフーのパワーを生かしてLINEに追いつくことができるか。「LINEには、我々が韓国で先にやっていたビジネスモデルを、逆に日本で先にやられてしまった。我々には本家のプライドがある」。少なくとも朴社長は本気だ。

(電子報道部 井上理)

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