金の実需みれば「下がったときは買いどき」
これからの金市場、プロはこう見る
――なぜ金は高騰したのでしょう。
池水 近いところでは欧州の債務危機ですよね。ソブリンリスク(政府債務の信認危機)のヘッジとして信用リスクのない金が買われている。加えて通貨への不信感ですね。米ドルの価値がずいぶん落ちましたが、本来ならドルに代わる基軸通貨として期待されていたユーロへの不信感も高まってしまい、通貨の代替として金が買われる状況です。

――2010年年初から円建てで1グラム500円(2011年11月現在)上がっています。
池水 すでにドル建てではかつてない水準にきていますので、予想するのは難しいのですけれど…。プロの間で注目されているのは、1980年代につけた850ドルです。このときはアフガニスタン侵攻、第2次オイルショックなどがあり、社会不安が高まって金が買われました。この850ドルにインフレ率を加味して今の価値に換算すると、約2200ドルといわれています。今後、金価格はこのあたりまではいくのではないかと考えている人が多いですね。
――金価格が急落する可能性は?
池水 欧米の経済が劇的に回復すれば下がるでしょうが、現状では考えにくいですね。それと、今の金価格を下支えしているのは実需の買いが大きいのです。上がると売り、下がると買い戻す、の繰り返しで下値が切り上がっています。
実需の面で見るとまだ金価格は上昇すると思います。
――とすると、今の価格水準ならまだ買っても大丈夫?
池水 2011年9月後半のように1500ドル台に下がった時は買い時かな、と思います。金は投資コストも高いし短期的な売買向きの商品ではない。金を持つ意味は、いざというときのヘッジのためです。今ほとんどの人の金融資産は株式や債券、預貯金などの金融商品だけです。それはやはり危ういと感じます。
――安全資産として金を持つべき?
池水 金も相場によって価格が上下する商品なので、持っていれば価値が上がるとか安全ということではありません。ただし、他のものがダメになった時に、株や債券とは値動きが違う金を持っていると安全性が高いということです。流動性も高いし世界で通用する。
今は欧米の経済が傷んでいるので表面化していませんが、日本ほど国が借金を抱えているのに国債が買われている国はありません。これは個人の金融資産額が国の借金を上回っているからですが、この状況は多分5年、下手をすると3年の間に逆転するかもしれません。そのとき国債が暴落、株も為替も総下げになる可能性は高いですね。資産の5%程度は金など実物資産を持っていてもいいのではないでしょうか。
[日経マネー2012年1月号特別付録の記事を基に再構成]