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演劇にも「動作検知」 俳優の動きにあわせて光で演出

都内で実験公演、装置簡易化が後押し

全身の動きや手ぶりなどのジェスチャーを検知し、パソコンの操作に反映させるユーザーインターフェース(UI)技術「モーションキャプチャー」(動作検知)の活用が舞台芸術の世界に広がってきた。これまで高価なセンサーのほかデータ処理にもおおがかりな装置が必要だったが、小型・低価格化が進み、比較的小規模な公演でも使えるようになった。舞台芸術集団「地下空港」が昨年12月に実験公演「増殖島のスキャンダル」で導入、東日本大震災やその後の原発事故をモチーフにした題材を最新技術を使って表現した。

舞台芸術にも活用広がる「モーションキャプチャー」

舞台芸術にも活用広がる「モーションキャプチャー」

JR恵比寿駅(東京・渋谷)近くの会場。四方を白い壁に囲まれた空間に50人の観客が自分で組み立てた木製の椅子に座る。俳優が演じるスペースは主に四方の壁際。要所要所で俳優が動くたびに、人型の白い光も一緒に動き続ける。人間がどんな動きをしてもその部分に光が当たり続ける。高精度のピンスポットライトを浴びせているような状態だ。雪のような物体が降るなか、人が壁の前を通ると雪玉がはじかれるように反対側に飛ぶ映像効果や、影が俳優の動きを追いかけるように残像として映し出される表現もあった。

単純に照明を当てているのではない。簡易型のモーションキャプチャー装置を使用し、対象となる物体の位置や距離を赤外線で測定し、その動きにあわせて光を当てる。設定した一定の距離のものをデータとして抽出するため、観客が座る場所には照明は当たらない。

 「増殖島のスキャンダル」のあらすじ ある島で勃発する、男と女、化け物たちによる奇妙で恐ろしい騒動を描いた。国民的な大スターであり伝説の女優「マドナイサナミ」の新作映画のワールドプレミアとあわせ、そのロケ地である島を訪問するツアーに熱狂的なファンが集まった。初日夜のパーティーでサナミが登場。参加者の興奮はピークに。ところが、彼らはその数日後のプレミア当日、ホテルの地下室に避難する事態になってしまった。さらに奇怪なことに、どうしてそんなことになったのか誰も思い出せない。そんな中、このツアーの企画者であるサナミのマネージャーが現れ事態の説明を始めるのであったが……。

 公演で使ったのは台湾アスース製の「エクシオンプロ」。簡易型のモーションキャプチャー装置としては、米マイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox360」で利用できるキネクトが有名だが、同じような表現ができる。測定したデータをパソコンで受けて映像を処理してプロジェクターで照射する。価格は1台2万円前後で「扱いが簡単になり、安くシステムを構築できた」と担当した映像クリエイターの奥村周也氏は話す。場面ごとに複数のパターンをプログラミングしてあり、タイミングをみてパソコンで操作する。1時間強の公演中、トータルで10分ほどエクシオンを使った演出を使用した。

奥村氏は2010年までCM制作会社に在籍。10年6月に地下空港の舞台をみて、「おもしろいコラボができないか」と主宰する伊藤靖朗氏に話を持ちかけた。11年1月の舞台に演出助手として加わり、今回から演出助手兼映像担当として本格的に参加した。「今後、劇をよくする一環として映像がどんな絡み方をしていくのかが楽しみだ」

今回の公演はステージはなく、チェロの生演奏が音響。観客席には「原子力」の歴史に関する分厚いファイルが置かれるという実験的な舞台だった。11年12月8~18日まで14公演開いた。

伊藤氏は「舞台演出で映像を利用することは多いが、しょせんは過去に作ったものの再生だ。この技術を使えば芝居と連動した生きた映像を使うことができる。表現の幅が広がり、インパクトのある舞台が作れた」と話す。特に伝説の女優に抱く、人々の幻影を表現するのに最適だったという。今回は実験公演だったが、「まだまだできることがヤマほどある。新しい表現の仕方を、お客さんに提示していきたい」と次回以降の作品に意欲を見せる。

 舞台芸術集団「地下空港」1999年に伊藤靖朗氏を中心に結成された。現代に生きる人間の苦悩と希望を、寓話を用いて表現してきた。主宰の伊藤氏は昨年9月に小説「巨人たちの国々」も発売し、作家としても注目が集まっている。

(電子整理部 村野孝直)

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