食物アレルギーの人は何を食べればいいのか
ホントが知りたい食の安全 有路昌彦
私は重度の食物アレルギーで、エビやカニを食べることができません。水産関係の研究をしているにもかかわらず、です。エビ、カニがダメだというのは結構大変です。地域でおもてなしを受けると、ごちそうとして登場してお断りする機会が多く、なんとなく申し訳ないと思っています。
今のところは2人の子どもにアレルギーの症状は出ていません。しかし、体質の遺伝はあるので、私自身の発症が21歳でしたから、もしかしたら将来発症するのかもしれません。

今でもよく覚えているのですが、発症は21歳のクリスマスのパーティーでのこと。私と当時の彼女(今の妻)、友人カップル(こっちもその後結婚)の4人でおいしいイタリア料理を食べた後でした。瞼が腫れて息ができなくなりそうになり、あわてて救急車を彼女に呼んでもらって病院へ直行。救急車の中で隊員の方に「何を食べたのか」と聞かれて、「エビとかエスカルゴです」と答えたところ、隊員の方が聞き間違えたらしく、搬入先の病院に「患者はエビカルゴというものを食べて発症した模様。繰り返します。エビカルゴです」と言っていたのを、途切れそうな意識の中で聞いていたのは苦い思い出です。
これは甲殻類アレルギーで、エビ・カニ以外にも、シャコなどがダメです。抽出物もダメで、ローヤルゼリーも症状が出ます。しかし、ローヤルゼリーはダメでもハチミツは大丈夫、エビはダメでもオキアミは大丈夫、という感じで、特定の物質の有無で決まっていることがわかります。
魚肉ソーセージにもカニ
さて、甲殻類アレルギーの人は意外と多く、現在は食品成分の中に表示が義務付けられています。
私も何かを食べるときには、成分表を必ず甲殻類が入っていないかをチェックします。意外な落とし穴の1つが味付けのり。磯の香りを高めるためにエビエキスを使っていることが多いのですが、私のようなアレルギーもちにはもちろん食べられません。正直なところ、あまり味には貢献できておらず、やめた方がよいとフードコンサルタントとしても思っています。

子どもが大好きな魚肉ソーセージにも落とし穴があります。私も子どもの横から魚肉ソーセージをもらっていたのですが、最近どうもカニが入っているケースが多く、食べることができなくなってしまいました。
こういったものに出合うと、商品開発者の中にはあまりアレルギーのことをわかっていない人も多いのではないかと思ってしまいます。
食品開発者もアレルギーへの理解を
子どもの時、学校給食でエビを食べたら気分が悪くなり、よく残していました。「好き嫌いはダメ」と言われ、無理やり食べさせられていました。半泣きになりながら牛乳で一気に流し込んでいたことを覚えています。
今考えると、その時からすでに症状は出ていたのでしょうが劇的なものではなく、その程度で済んでいたのかもしれません。しかしアレルギーは好き嫌いのレベルではないので、学校の先生も注意が必要でしょう(最近はアレルギーをめぐる給食での事故の報道もあり、かなり理解が進んでいるとは思いますが)。
同様に、商品開発する人も、アレルゲンになりやすい食材を加えた瞬間、アレルギー持ちの人が食べられなくなり、一気にお客さんがいなくなる、ということはよく理解されるべきだと思います。
それくらいにアレルギー持ちの人は多く、特に表示が義務付けられているレベルのアレルゲンの場合、その人数は何万人、何百万人レベルになるということを無視しないほうがいいのではないでしょうか。
味付けのりと魚肉ソーセージ(どっちもそもそも私の好物)が食べられなくなったことがあって、愚痴みたいになってしまいました。

近畿大学農学部准教授。京都大学農学部卒業。同大学院農学研究科博士課程修了(京都大学博士:生物資源経済学)。UFJ総合研究所、民間企業役員などを経て現職。(株)自然産業研究所取締役を兼務。水産業などの食品産業が、グローバル化の中で持続可能になる方法を、経済学と経営学の手法を用いて研究。経営再生や事業化支援を実践している。著書論文多数。近著に『無添加はかえって危ない』(日経BP社)、『水産業者のための会計・経営技術』(緑書房)など。
