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グーグル・グラスは「秘書」 生活して分かった存在価値

ウエアラブル端末時代の幕開け(1)

 「ポスト・スマートフォン(スマホ)」として、にわかに注目度が高まっている身に着ける情報端末、いわゆるウエアラブル端末。その代表的な存在と言えるのが、米Google(グーグル)が開発を進めているメガネ型端末「Google Glass(グーグル・グラス)」だ。すでにGoogle Glassを試用した一部の開発者からは、「デジタル・ライフが一変した」との声も聞こえてくる。本当にそうなのか、もし普及したら我々の生活をどう変えていく可能性があるのか――。Google Glassを購入して「グラス生活」を送っている、米シリコンバレー在住のベンチャークレフ代表・宮本和明氏に、3回にわたって解説してもらう。同氏は、「Google Glassはクールなガジェットではなく、まさに生活必需品である」と語る。

Google Glassをかけて生活し、異次元のデジタル・ライフに足を踏み入れた。Google Glassとナビゲーション機能の連携は予想以上に便利で、自動車内で新しいマンマシン(人間と機械間)インタフェースが生まれつつある。

Google Glassに引きつけられた主因は音声操作で、語りかけて瞬時に情報にアクセスできる。さらに、これをかけて街を歩いていると、こちらが欲しいと思っている情報を先読みし、ディスプレイに表示する。Google Glassは消費者にとって便利なだけでなく、ビジネスの観点からは、究極の広告配信メディアとなる。

欲しい情報を先回りして表示

Google Glassをかけて生活していると、私が尋ねなくても欲しい情報が手に入る。例えばお昼時、米サンフランシスコ対岸のサウサリトを歩くと、Google Glassが近くの人気レストランを教えてくれる。

出典:VentureClef、以下同じ

上の写真がその様子で、すぐ近くに「The Trident」というシーフード・レストランがあると、文字と写真で案内する。お腹が空いた時に、近くの人気レストランが表示されると、そちらに足が向く。

これは「Google Now」をGoogle Glassに実装したもので、利用者の位置と時間に応じて、最適な情報を配信する機能である。Google Nowは人間の秘書のように、利用者が欲している情報を先読みしてプッシュするサービスだ。

フライトを確認し試合結果を把握

Google Nowは利用者のスケジュールを把握し、フライト情報を表示することもできる(右の写真)。例えば、「ロスアンゼルスからサンフランシスコまで、8:17発のユナイティッド航空788便で飛ぶ」予定の場合、とGoogle Glassがフライトの運行状況を確認してくれる。空港に向かう前、Google Glassで、飛行機が予定時間(On time)に出発するかどうかをチェックできる。

米国時間2014年1月27日、プロアメリカンフットボールチームのサンフランシスコ49ersがスーパーボール進出を賭け、シアトル・シーホークスと対戦した。シリコンバレーのダウンタウンを歩くと、スポーツ・バーから大歓声が沸き上がり、通りから覗き込むと、観客が拍手しながら盛り上がっていた。

私のGoogle Glassは、サンフランシスコ49ersが9対0でリードしていると教えてくれた(上の写真)。私がサンフランシスコ49ersのファンであることを推測し、こちらが聞く前に、対戦予定や結果を表示するのだ。

検索履歴などから利用者の嗜好把握

このほか、Google Glassは今日の予定表を提示し、打ち合わせ場所までの道順や移動時間を教えてくれる(右の写真)。利用者がフォローしている株価を表示する機能もある。

Google Nowは利用者のカレンダー、検索履歴、Gmailなどを参照して、利用者の情報を抽出し、カード形式で表示する。利用者がプロフィールなど、個人情報を入力するのではなく、抽出したデータをGoogle Nowが解析し、利用者が欲している情報を能動的に表示する。

人間の秘書のように、こちらが尋ねる前に、欲しい情報を提示する。Google Nowがこちらの行動を監視しており、気味が悪いところはあるが、それ以上の利便性を感じる。Google NowはAndroid(アンドロイド)の一機能として、既にスマホで利用されている。もちろん、スマホでもGoogle Nowを使ってきたが、これに比べGoogle Glassでは目の前に情報が表示され、瞬時に情報を閲覧できるため、圧倒的に便利である。

Field Tripが名所旧跡で観光案内

シリコンバレーを歩くと、コンピューター開発の歴史を「Field Trip」が案内してくれる。Field TripはGoogleが開発したスマホ向けアプリで、これをGoogle Glassで展開している。

Field Tripは利用者の位置を認識し、近くの名所旧跡をGoogle Glassに表示し、観光案内する。上の写真がその様子で、「Gene Amdahl Designs」というタイトルで、Gene Amdahl氏によるコンピューター開発の歴史を紹介している(下の写真)。

その説明によると、同氏はIBMでメインフレームを開発し、これがコンピューター史上最も成功した製品となり、その後の技術開発に多大な影響を与えた。同氏はその後Amdahlを創設した。

もちろん、その場所までの道順も表示される。Google Glassをかけてシリコンバレーを散策すると、Field Tripがコンピューター開発を講義し、その現場に立って、技術開発の歴史を振り返ることができる。

ゴルフ場ではキャディー役

ゴルフ場では「GolfSight」がキャディーの役割を担う。このアプリはコース上で、現在地からピンまでの距離を表示する。下の写真はサニーベール・ゴルフ場の二番ホールで、現在地からピンまでの距離が93ヤードであることを示している。

プレーヤーはグリーンまでの距離を把握して、次に使用するクラブを決める。米国ではキャディーのいるゴルフ場は高級コースに限られており、いつもプレーするコースではこのアプリが役に立つ。

ゴルフ場で使用する距離測定機器は数多く販売されている。しかし、測定器をゴルフバッグから取り出し、カメラのようにファインダーを覗いて距離を測る必要があるため、結構手間がかかる。これに対して、Google Glassでは、タッチパッドを1回スワイプするだけで距離を把握できる。

ピンまでの距離のほかに、目の前の池を超えるための距離なども表示する。ホールアウトするとGoogle Glassにスコアーを記入でき、18ホール終えるとスコアが集計できている。Google Glassはスポーツでも威力を発揮するのだ。

広告メディアとして大きな可能性

先に紹介したField Tripは名所旧跡だけでなく、お薦めのレストランも教えてくれる。下の写真がその様子で、この近くにZagat(Googleが2011年に買収)が推奨する「Dishdash」というトルコ・アラブ料理店があることを示している(下の写真)。

スマホでも同様な機能があるが、通りを歩きながらポケットから取り出し、スクリーンをアンロックし、アプリを立ち上げてと、情報にたどり着くまで手間がかかる。

Google Glassでは、チャイムが鳴り、頭を上げる(これでパワーオン)だけで、レストラン概要を把握できる。情報アクセスへの速度が格段に速く、特に屋外での使用で効果を発揮する。

同時に、レストランやカフェなど店舗側としては、Google Glassが広告配信メディアとなり、新しいプロモーションの展開が可能となる。消費者が欲している情報を目の間に表示することで、「コンバージョン率」(企業のウェブサイトなどの訪問者数に対する、商品購入や会員登録などをした人の割合)がぐんと向上する。ウエアラブルは新しい広告メディアとして大きな可能性を秘めている。

宮本 和明(みやもと・かずあき)
米ベンチャークレフ代表 1955年広島県生まれ。1985年、富士通より米国アムダールに赴任。北米でのスーパーコンピューター事業を推進。2003年、シリコンバレーでベンチャークレフを設立。ベンチャー企業を中心とする、ソフトウエア先端技術の研究を行う。20年に及ぶシリコンバレーでのキャリアを背景に、ブログ「Emerging Technology Review」で技術トレンドをレポートしている。

(米ベンチャークレフ 宮本和明)

[ITPro 2014年1月28日付の記事を基に再構成]

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