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震災ボランティア 20代が汗を流す3つの理由

編集委員 石鍋仁美

東日本大震災の被災地で、多くの若者がボランティア活動に汗を流している。時間に余裕のある学生。仕事を休んで参加する社会人。なぜ若い人々が「人助け」に魅力を感じるのか。彼らが育った環境、手本とする人物像の転換、情報環境の変化という3つの要因が指摘できる。

民家の倉庫にたまった泥をかき出す、県外からきたボランティア(2011年5月3日、宮城県七ケ浜町)

東京に本拠を置く、ある特定非営利活動法人(NPO法人)が、ホームページで被災地でのボランティア活動を写真付きで詳しく報告している。本来は途上国での教育支援を目的とする団体だが、震災を受け被災地にキャンプを張り、広くボランティア希望者を受け入れ、活動場所を提供している。

大震災前からの現象

5月の連休中は毎日200人、今でも100人前後が日々、活動に参加している。建設機器を使える人が、倒れた塀などを解体している。女性が水路の泥やヘドロをスコップでかき出している。飲食店勤務の経験者が居酒屋の再開を手伝う。

泥だらけになっての田植え。仮設住宅への引っ越し。そんな生き生きした若者たちが頼もしく、まぶしい。「自分の今までの経験を生かせる。今、動く時だと感じた」。沖縄県から参加したレジャー・宿泊施設で働く若者の言葉だ。

これは大震災という大きな事件ゆえの特別な現象ではない。

1995年の阪神大震災でも若者たちが被災地に駆けつけ、ボランティア元年といわれた。その後もさまざまな社会貢献活動への熱意は冷めないばかりか、内閣府の調査では2007年ごろを境に4割台から6割台へと上昇している。街なかでゴミ拾いをするサークルを各地の学生や若手社会人が作るなど、日常の中での活動も活発だ。

未来への危機感が背景に

社会貢献意識の表れは無償で働くボランティア活動だけではない。

(注)内閣府「社会意識に関する調査」より20代男女のうち「日ごろ、社会の一員として、何か社会のために役立ちたいと思っている人」の割合

日々の買い物で、途上国の発展に資するものを選ぶフェアトレード、地元の産業を応援する地産地消など、「エシカル(倫理的)消費」が広がる。売買の担い手には若者が多い。

社会問題を解決を掲げた企業を旗揚げし、社会貢献と利益の両方を追求する「社会起業家」も、欧米の後を追い日本でも増え始めた。こちらも若者に希望者が多い。

こうした「新・社会派」とも呼べる若者はなぜ増えたのか。学生IT起業家から転身した社会起業家の代表格で、病気の子供を働く親に代わって一時的に預かるNPO法人フローレンスを立ち上げた駒崎弘樹氏(1979年生まれ)は言う。

「社会というテーブルがしっかりしているのなら、その上で(経済活動などの)ゲームに熱中するのもいい。少子高齢化などで、今やテーブルの脚がぐらついている。これを何とかしなければならない」

自らリスクを取り、泥をかぶって実践し、新しい仕組みやサービスを作る。「政治家や官僚を批判し、留飲を下げるだけでは、社会は変わらないと(これまでの世代を見て)分かっている」。普通の起業や経営よりずっとやりがいがある、と語る。

いまの20代は高度経済成長もバブル景気も実感としては知らない。黙っていれば自分たちの生きる未来の日本社会が危うい。何もかも政治に頼らず、自分たちで助け合う仕組みや社会を作らなければならない。そんな危機感を共有している。

「いい子」「素直」がかっこいい

そんな危機感は、内側の物差しも変化させているようだ。

NTTアドの発行する社会・消費研究誌「空気読本」副編集長で、若者の生態に詳しい小林勝司氏は「今の20代と、30代から50代が20代だったころとは、同じ『20代』でもかっこ良さの基準が全く違う」と指摘する。

同社の調査によれば、今の中高年は20代のころ「反骨精神にあふれ」「上昇志向があり」「不良っぽい」と言われることを願っていた(実際に不良だった、ということではない)。しかし現役20代は「親しみがある」「つきあいやすい」「いい子」「素直」と言われたがっている、との結果が出たそうだ。

好感が持てる有名人は元20代が松田聖子や長嶋茂雄。今の20代はベッキーや水嶋ヒロだ。誰に何を言われようと自分のスタイルを貫き、突出した存在を目指す存在から、礼儀正しく控えめで周囲の全員に愛される存在へ。「こうした価値観の変化が、エコや地元への貢献など社会活動への参加意欲につながっている」とみる。

「2つのソーシャル」が加速

こうした同世代同士をつながりやすくしたのがインターネット、とりわけツイッターやフェイスブックなどの「ソーシャルメディア」だ。ソーシャルという呼び名は社会、社交、交流という意味合いを含んでいる。

メディアと社会の変化に詳しい西田亮介・中小企業基盤整備機構リサーチャーは「中央公論」2011年5月号に寄稿した論文で、震災ボランティアの広がりを加速させたキーワードは「2つのソーシャル」だと指摘する。1つはこれまで指摘した社会貢献(ソーシャルコントリビューション)志向であり、もう1つがソーシャルメディアだ。

若者など一般個人による情報の獲得、共有、発信が「新たな縁」を作り、広げた。年長者が主導し、役所や既存団体が中心となるたて割り型の情報交換や組織づくりとはスピードと柔軟さが違う。冒頭で紹介したNPO法人のインターネットによる呼びかけと実績の発信はその一例だ。写真に写る若者たちの生き生きとした顔や体験談は、新たな参加者の心を動かし、安心感を誘う。型にはまった公的な告知文にはない力だ。

ボランティア、エシカル消費、社会起業家。こうした新しい流れや力を、既存の経営者や役人など年長者の側が取り入れ、助け、生かすか。それとも「自分たちの若かったころに比べ、理解できない存在」と退けるか。ボールは若者から年長者の側に投げ返されている。今回の被災地でも「ふだんから社会的弱者向けのNPO活動がきちんとしていた自治体ほど、都会からのボランティアをスムーズに受け入れられた」。辻元清美・首相補佐官(災害ボランティア担当)はそう語る。

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