挑戦繰り返し駄目ならすぐやめる 新事業開発の要諦
多喜義彦 システム・インテグレーション 代表取締役社長

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2014/5/21 7:00
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 技術のボーダーレス化が進む中、これまでとは異なる分野の事業者が他分野の技術を活用することで、急成長する事例が増えている。日本企業は今、「外」に活路を求め、多様な人たちと議論し、従来の殻を打ち破る必要に迫られている。新規事業や異業種連携を加速させる取り組みをはじめ、技術の波及がもたらす新ビジネスの可能性などを紹介していく、特集「リアル開発会議」。連載第2回は、「開発の鉄人」として著名な開発コンサルタントであるシステム・インテグレーション 代表取締役社長の多喜義彦氏に、「新事業開発の流儀」について語ってもらう。同氏はこれまで、3000件の開発テーマの支援に携わり、現在も40社以上の技術顧問などを務めている。

「それって前例がないということですよね」――。

新しい商品の開発を進める際に、かなりの頻度で聞く発言である。私からすると「前例があってたまるか」と思う。なぜなら、新規開発は、文字通り新しいことに挑戦する取り組みだからである。

多喜義彦(たき・よしひこ)。1951年生まれ。1988年にシステム・インテグレーションを設立し、代表取締役に就任。現在40社以上の顧問のほか、日本知的財産戦略協議会理事長、パワーデバイスネーブリング協会理事、ものづくり学校取締役会長、日本トレーサビリティ協会事務局長、金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める(写真:加藤 康)

多喜義彦(たき・よしひこ)。1951年生まれ。1988年にシステム・インテグレーションを設立し、代表取締役に就任。現在40社以上の顧問のほか、日本知的財産戦略協議会理事長、パワーデバイスネーブリング協会理事、ものづくり学校取締役会長、日本トレーサビリティ協会事務局長、金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める(写真:加藤 康)

誰かの後追いをしても意味がない。後追いでも勝てるかもしれないが、ほとんどの場合、最終的にはコスト勝負に陥ってしまう。商品の特徴や性能が同じならば、先行者よりも安くすれば売れるからだ。

しかし、それを見たライバルは、さらに安い価格で対抗してくる。互いに価格を下げていくことになり、結局は誰も儲からない"不毛な戦い"が待ち構えている。新しいことを真っ先に始めるからこそ、自分で価格を決めることができるのだ。これが他社と比較されない売れる商品を生み出す要諦であることを肝に銘じてほしい。

■取り組みをストップする判断が重要

新規開発では、不安や躊躇といった後ろ向きの気分がつきまといがちだ。こうした雰囲気が漂う開発現場では、「やってみて駄目だったらやめましょう」とアドバイスすることにしている。

ところが、「そんなのは無責任じゃないか」と怒る人が出てくる。これが大きな間違いである。開発プロジェクトでは、駄目だと分かったときに取り組みをストップする判断が実は非常に重要だからである。本当の失敗というのは、駄目だと知りながらやり続けてしまうことを指す。「うまくいきそうもない」と私が感じるプロジェクトは、開発者たちもたいてい「駄目だ」と気が付いている。だが、さまざまなしがらみの中でやめることができずにいる。

日本企業では、経営幹部が「ほら、駄目だっただろう」と部下を責める傾向がある。経営者は本来、最初に駄目と判断し、撤退を決断すべき立場にあるはずなのに、である。責任を転嫁されたら、責められた部下はたまらない。それが積もり積もれば、いずれ誰も新しい商品やサービスの開発に挑まなくなる。新規開発に消極的な人は、過去にこうした苦い思いを経験していることが多い。

■「駄目」を繰り返す

私は実際に試作品を作る前に、まず企画書を作成して想定ユーザーに見てもらうようにしている。企画書の段階で聞いて回れば、大体の市場性が分かる。ここで「いいね」と言ってもらえて、前向きの議論につながるようであれば、開発をどんどん進めればいい。逆に顧客が「うーん」と首をひねって興味を示さなかったら、やめる覚悟も必要だろう。

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