時間に追われ昼夜走行 富士山一周169キロレース(上)

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2014/6/14 7:00
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山を走っていると、「ヒト」の体に眠る動物としての本能を感じることがある。普段は舗装路を歩き車で移動しているが、緑に囲まれたデコボコ道を駆け抜ける時に甦(よみがえ)ってくるその感覚は、野生動物に生まれ変わったようで爽快だ。だが100キロ、200キロといった長い距離の場合は野生の感覚だけで走っていては持たない。リスクに備え、状況を冷静に判断し、自らを奮い立たせる。完走に必要なのはヒトの持つ強い心だ。

河口湖畔では富士山をバックに走った(山梨県富士河口湖町)=写真 井上昭義、以下同じ

河口湖畔では富士山をバックに走った(山梨県富士河口湖町)=写真 井上昭義、以下同じ

4月25日、ついにこの日が来た。富士山の周りを一周する「UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)」。正午に到着した河口湖八木崎公園のスタート会場には約3000人が集まっていた。出場選手のほかに応援する人や関係者らでごった返し、お祭りのような雰囲気に包まれていた。受付では地図、食料、防寒具、ライト、応急処置セットなど19点の必携品のチェックを受ける。人里離れた山中で動けなくなっても、自分で対処できるだけの装備だ。背中のザックは5キロといつものレースより重め。途中の地点で受け取れる荷物には着替えや食料、予備の靴も詰めた。

綿密な?レース計画を立案

森の中を駆ける(山梨県富士河口湖町)

森の中を駆ける(山梨県富士河口湖町)

午後3時、ギャラリーの歓声に押し出されるように、2泊3日の旅がスタートした。全長169キロ、コースの登りの標高差を足した値は9500メートルに達する。山梨・静岡両県の11市町村に1カ所ずつあるエイドステーションを時計回りに通過し、制限時間の46時間後、27日午後1時までに再び河口湖に戻ってこられるのだろうか。2晩を過ごした後のことなど想像もつかない。

まず湖畔を4キロ走ると山に入り、林道を標高600メートル分登る。早歩きのマイペースを押し通したが、走って進む選手にどんどん追い抜かれた。続いて山道を標高800メートル分一気に駆け下りる。依然としてまわりの選手のペースが速く、大会のレベルの高さを感じた。

UTMFは国内最高峰のトレラン大会だ。出場者1422人は、これまでに多くのレースを完走し、参加に必要なポイントを得た上、約2倍の抽選に通った「猛者」だ。女性比率は約15%で、約19%に当たる266人が中国・フランスなど合計46カ国からの参加者。まわりではあちこちで外国語が飛び交う。

記者が事前に綿密な計画を練ることにしたのは言うまでもない。これまで経験したレースを参考にエイドごとの目標時間を設定し、ゴールは43時間と計算した。作戦は「淡々と進み続け、登りは無理せず歩く」。無駄な体力を使わないよう、序盤ははやる心を抑える。

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