時間に追われ昼夜走行 富士山一周169キロレース(上)

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2014/6/14 7:00
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2日目の朝、富士山をバックに走る(静岡県富士市)

2日目の朝、富士山をバックに走る(静岡県富士市)

夜が明ける頃、黒い砂利が積もった富士山の斜面を登っていた。雲海が浮かぶ朝焼けの景色には目もくれず、なんとか関門15分前に「御殿場口太郎坊エイド」に到着した。コース上で最も富士山に近づけるポイントだ。白い山頂を見上げ「完走できますように」と祈った。ただ、今意識すべきは遠くのゴールより近くのエイドだ。6キロの舗装路を上り下りして6カ所目の「水ケ塚公園エイド」に着いた時、関門時間は10分後に迫っていた。

「行けるところまで行くか」

関門時間は到着ではなく出発のデッドラインだ。早く出ないと失格になるため、補給もそこそこにエイドを出てから腰を下ろす。後続の選手が必死の形相で走ってきた。わずか十数秒差で関門時間に間に合った人と間に合わなかった人、天国と地獄の分かれ目である。いや、間に合ったから天国とは限らない。残りは100キロだ。

この時点でほぼ最後尾になった。次の「富士山こどもの国エイド」では、事前に預けた荷物を受け取るため、荷物の入れ替えも含めて時間に余裕を持って着きたい。まぶしい朝日を浴びながら山道を駆け下りた。

グキッ。何でもないところで軽く右足をひねった。後々痛みが増す気がして、少し落ち込む。悪いことは重なり、サポート役の友人から「トラブルで次のエイドに入れないかもしれない」と電話がきた。食料や着替えが詰まった荷物を友人に預け、次のエイド以降補給を手伝ってもらう作戦だった。友人と会えないと私的な補給はできない。どうしよう。スマホ片手に道端の岩の上に座った。ふと「次で終わりにしようかな」という考えが浮かんできた。もう時間に追われ続けることに、疲れ切っていた。

そこへ突然、大会に出場していない知人がコースを逆走してきた。「何やってるんだ、エイドまであと3キロ、走れば間に合う!」。ハッパをかけられ、再び走り出す。意外と足は元気だ。関門20分前にエイドに着き、何とかエイドに入れた友人に荷物を預ける。「もうちょっと、行ける所まで行くか」。午前9時、再び前に進むことを決めた。

24キロ先の「西富士中学校エイド」までは5時間かかった。道中、不眠で走った疲れが一気に出て、猛烈な睡魔に襲われた。ガムをかんでうっすら目を開けながらヨタヨタ進んだ。足の裏が痛み、時折走ってみても、早歩きとスピードはそう変わらない。徐々に気温が上がり汗が噴き出した。

エイドの体育館に入ると、汗まみれの上着と靴下を着替えて寝袋にくるまった。サポート役の友人に「30分後に起こして」と言い残すと一瞬で眠りに落ちた。深い眠りだった。

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