時間に追われ昼夜走行 富士山一周169キロレース(上)

(2/3ページ)
2014/6/14 7:00
保存
共有
印刷
その他

林道を駆け下りる(山梨県富士吉田市)

林道を駆け下りる(山梨県富士吉田市)

しかしーー。周囲が闇に閉ざされた午後10時、記者はもう全力で山を走っていた。「間に合ってくれ」。次のエイドの関門時間が15分後に迫っていたのだ。「無理せずゆっくり」なんて悠長なプランは最初の6時間で完全に崩壊していた。

最初の「富士吉田エイド」を経て杓子山(1597メートル)までは予定通りだった。山を下って5キロ先のエイドへ向かおうとするが、選手が詰まって前に進めない。何百人もが連なって渋滞が発生していた。岩場が多く、急勾配の細い道のため1人ずつ、ゆっくりしか通れず、大人数で押し寄せると渋滞が起きる。その上負傷者の手当てなども重なっていたようで、午後8時半に並び始めた行列から1時間たっても抜け出せない。

「関門時間」との追いかけっこ

前後を見渡すと真っ黒な尾根に沿ってヘッドライトの光が一列に連なり、じっと動かない。次のエイドの関門時間が迫ってきて焦りが募る。すぐそこにあるはずなのに。渋滞を考慮して関門が15分遅くなったという情報が伝わるが、速度は依然牛の歩みにも及ばない。

山道は小刻みにリズム良く(山梨県富士吉田市)

山道は小刻みにリズム良く(山梨県富士吉田市)

午後9時40分、ようやく選手が順調に流れ始めた。あと35分しかない。とにかく必死で走る。渋滞に巻き込まれてのタイムアウトなんてごめんだ。午後10時15分、ゼーゼー息を切らせて二十曲峠のエイドに着くと、「関門は10時45分になりました」との声。救われた。

だが、これは今後延々続く関門時間との追いかけっこの始まりでしかなかった。

各地の関門時間が多少先延ばしになったとはいえ、当初の予定より確実に後れを取っている。続いて石割山(1413メートル)を越えて6キロ進み、関門30分前に「山中湖きららエイド」に着く。気が付けば日付が変わっている。続いて険しい山道が続く約16キロの長丁場に突入する。上り下りを繰り返し、休憩中にポケットの地図を確認する。関門まであと10キロ、2時間しかない。まずい!再び追い立てられるように走り出す。

山の中は月明かりもない真っ暗闇。ヘッドライトに加え、手持ちのライトで行く先を照らし、倒木や石を飛び越えながらデコボコ道を走る。片方の足で着地の衝撃を吸収してバランスをとりながら、素早くもう一方の足を前に投げ出す。小刻みに、リズム良く。夜の山を走るなんて我ながら呆(あき)れるが、確実に足や目は夜間走行に順応してきている。

道中、木の根元で座り込んで眠る選手を何十人もやりすごした。もうあきらめたのか。必死で走っていて眠気を感じるゆとりもない。午前3時23分、関門37分前に「すばしりエイド」に着いた。ここまで12時間半で55キロ。かなり足を使った。

総距離169キロをタイムアウトの46時間で割ると、時速3.67キロで間に合う計算だ。だが単に歩き続ければゴールできる訳ではない。コースの大部分は険しい山道で、普通に歩いてもまず時速4キロでは進めない。これまでに経験したどのレースにもましてアップダウンが激しく、予想よりずっと厳しい展開が続くことを感じさせられた。

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

コラム「ランナー集まれ」

コラム「美走・快走・楽走」

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]