ソニーが米国ラスベガスで開催されている、国際家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で発表した、世界初の「4K(4K×2K)」対応有機ELテレビの開発品を見てきた(図1)。
同開発品は、3840×2160画素の56型である。韓国Samsung Electronicsや韓国LG Electronicsの55型フルHD有機ELテレビの画面対角寸法を1インチ(約25.4mm)上回る。台湾の大手パネルメーカーのAU Optronics(AUO)と共同開発した。
技術的には、駆動用のTFT(薄膜トランジスタ)を従来の低温多結晶Si(シリコン)から酸化物半導体に替え、ソニーのお家芸である「トップ・エミッション」と呼ばれる方式(同社がかつて発売した11型有機ELテレビにも採用された。ガラス基板上に形成したTFTとは逆の方向に光を取り出すため、高い開口率が得られる。ソニーは封止ガラスも不要にしている)を採用した。
画質は驚くべきもので、ブラジル・リオデジャネイロのカーニバルを4Kで撮影した映像クリップでは、色の豊穣(ほうじょう)さ、原色の強靭(きょうじん)さ、金銀のきらめき、微小部分の白ピークの突き上げなど、他のデバイスでは絶対に再現できない領域の"ウルトラリアリティ(超現実感)"を感じさせた。
単なる高輝度なだけでなく、小面積の(輝度の)突き上げがあることが有機ELの強みだが、改めてそれを認識することができた。まさに「人類が未体験の映像力」であった。
ソニーには、この開発品をきちんと商品化してほしい。人目をひく「ショーモデル」に終わらせてはいけない。
■2013年夏に4Kコンテンツを配信開始
ソニーは2013年夏にも、米国で4Kコンテンツの配信を開始することを明らかにした。4K対応のテレビやプロジェクターが発売されており、単にフルハイビジョンからのアップコンバートだけではなく、オリジナルの4Kコンテンツが望まれていた。ソニーはまず配信とダウンロードという形で、4Kコンテンツを4Kテレビに送り込む。
利用イメージとしては、ユーザーの家にあるサーバー製品にネット経由でネイティブの4Kコンテンツを流し込む。ストリーミングでなく、ダウンロード形式である。CES会場のラスベガス・コンベンションセンターで開催されたソニーの記者会見では、4K配信の受け口として掃除機ロボットのような円形のサーバー(4Kメディアプレーヤーと呼ぶ)を展示していた(図2)。
コーデックは、現行のAVCを採用する公算が高い。現行のBlu-ray Discの4倍に当たる毎秒100Mビットという転送レートをいかに下げられるかが、これからの課題だとしている。