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スポーツギア最前線 米国ランニングシューズ事情 上級モデルに人気

 ニューヨークは人口に対するランナー比率が高く、多くの人々が思い思いのスタイルでランニングを楽しむ"世界屈指のランニングシティー"としても知られている。そんなニューヨークのランニング最新事情をリポートする。

シューズで人気が高いのは「アシックス」「ブルックス」

一度でもセントラルパークに行ったことのある人なら、「走っている人が多い」と感じただろう。実は筆者が初めてニューヨークを訪問した21年前も、セントラルパークを走るランナーの数は今と同じくらい多かった。それほど昔からランニングがライフスタイルとして完全に根付いてるのだ。

2012年末にニューヨークを訪れたのは、世界で最も人気の高いマラソン大会のひとつ「ニューヨークシティーマラソン」の取材が目的だったが、肝心の大会はニューヨークを直撃したハリケーン「サンディ」の影響で中止となってしまった。しかし、セントラルパークやソーホー地区をはじめとした市街地を実際に走ってみると、ニューヨーク独自のランニング事情を垣間見ることができた。

まず注目したのは、ランナーの足元。「ニューヨークシティーマラソン」のオフィシャルスポンサーだからということもあるかもしれないが、アシックスのランニングシューズをはいている人が圧倒的に多かった。

製品ブランドでいうと「GT ニューヨーク」「ゲルカヤノ」「ゲルニンバス」といった中価格帯以上、どちらかいうと上級モデルを着用している人が目立つ。また、2011年から米国で先行展開された「ASICS33」も取扱店舗が多く、人気上昇中とのこと。

日本では2013年2月に発売された超軽量モデル「ゲルライト33」もニューヨークではすでにリリースされていた。ランナーの声を聞いてみると、以前リポートしたロンドンと同様に、アシックスのイメージは「高級」「高品質」で、その評価は非常に高い。

アシックスに次いで目立ったのが「ブルックス」。「GTS」「ゴースト」といったベーシックなモデルに加え、「ピュアコネクト」をはじめとしたピュアプロジェクトにラインアップされるナチュラルランニングタイプも多く見かけた。

"裸足感覚シューズ"の人気は?

ニューヨークシティーマラソンに参加しそうなシリアスランナーのシューズはアシックスとブルックスの着用率が圧倒的に高い一方、走るのを楽しむことを重視しているファンランナーの間ではナイキの着用率が高いのが面白いところ。

信号待ちで「ナイキ エアペガサス+28」をはいていたランナーに「アシックスやブルックスははかないの?」と声をかけたところ、「たまに走るくらいだから、このシューズで十分。そこまで"GEEK"じゃないしね」とのこと。

GEEK(ギーク)はマニアックとかオタクというような意味で、ポートランドのランニング専門店で2時間以上かけて何種類もはき比べていたランナーがいたので、店員に「普通のことなの?」と聞いたら、「全然珍しいことじゃないよ」という答えが返ってきたことを思い出した。

ちなみに信号待ちで話したランナーはナイキ エアペガサス+28をフットロッカーで購入したとのこと。フットロッカーのようなスポーツシューズ専門チェーンではアシックスやブルックスよりもナイキの人気が高いのかもしれない。

もうひとつ気になったのが、ロンドンではトレーニングでもレースと同じ一般的な構造のシューズをはくランナーが多いのに対し、ニューヨークではトレーニング時に裸足感覚シューズやナチュラルランニングタイプを着用するランナーが珍しくないこと。

「ナイキ フリー」「ビブラムファイブフィンガーズ」「ニュートン」「メレル ベアフットコレクション」「ニューバランス ミニマス」「アルトラ」などを着用したランナーが、保守的とされるロンドンはもちろん、裸足感覚シューズが人気を集めている東京よりも圧倒的に多い印象だった。

「RUNNERS WORLD」など米国のランニング専門誌でこれらのシューズをはいてトレーニングする有用性を度々説いていること、また米国のランナーがシューズに限らず新しいコンセプトの製品に対する抵抗感が少なく、新たなトレーニング方法にトライすることに積極的なことがその理由だろう。

ちなみに、2012年11月の土曜昼すぎにセントラルパーク(コロンバスサークルそばの地点)を走っていたランナー101人の着用ブランドを調べたところ、結果は以下の通り。

アシックス(46人)、ブルックス(20人)、サッカニー(9人)、ナイキ(8人)、ミズノ(5人)、ニューバランス(4人)、アディダス(3人)、ニュートン(2人)、ビブラムファイブフィンガーズ(1人)、メレル(1人)、スケッチャーズ(1人)、アルトラ(1人)。

ランニングウエアで人気が高いブランドは?

一方、ウエアではナイキの強さが目立った。

冬には朝は氷点下近くまで気温が下がるニューヨークでは、ランニングウエアに高い防寒性能が求められるが、日本でも展開されているナイキの「DRI-FIT エレメントシールドマックスジャケット」は、その高い機能性からニューヨークでも本当によく見かけた。このシリーズはほかのブランドのランニングウエアよりもスタイリッシュでカラーバリエーションが豊富なことも人気の理由だろう。

ランニングシューズで急速にシェアを伸ばしているブルックスのウエアもニューヨークでは人気。ネオンイエローやネオングリーンといった蛍光カラーとリフレクターを組み合わせており、夜間のランニングに向く「ナイトライフ」を着ている人を多く見かけた。ナイトライフは過去のモデルを着ているランナーも多かったことから、以前から人気となっていたと思われる。またニューヨークでは、昔ながらのフード付きスウェットを着て走っているランナーをちらほら見かけるのも興味深い。ランニングウエアの最先端とクラシックが共存しているようだ。

最後にニューヨークのランニングコースについて述べると、なんといっても走りやすいのはセントラルパーク。1周10キロほどのコースで景色が目まぐるしく変化し、適度なアップダウンもあることから、ランナーにとっては最高のトレーニングコースといえる。ロンドンのハイドパーク、東京の皇居も大都市のランニングコースとしては評価が高いが、ニューヨークのセントラルパークと比較すると遠く及ばない。

ニューヨークでは、ハドソン川沿いもジョギング専用道が設けられるなど走りやすいことで知られているが、自宅近くの街中を走る人も少なくない。街中を走るということは信号でストップすることを余儀なくされるわけだが、筆者が交差点で足踏みしてカラダを冷やさないようにしていたら、トラックの運転手がクラクションを鳴らしたあとウインクをして「行っていいよ!」と合図してくれた。ニューヨークではランナーの存在がしっかりと認知され、うまく共存しているようだった。

(ライター 南井正弘)

[日経トレンディネット2013年1月23日掲載]

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