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就活で陥る「自己分析」の落とし穴

 就活(就職活動)のスタートである「志望企業探し」に「エントリーシート(以下ES)」。特に志望動機をちゃんと言葉にしなければならないESは最大の難関だ。そこで、よりどころにするのが「自己分析」。
 しかし人事担当者は「過度の自己分析、そしてそこから書かれたESが学生の素顔を見えづらくしている」と言う。本記事と次回記事で自己分析とエントリーシートを、就活生と人事の間に横たわっているズレを追う。

「自己分析」は万能のツールではない

自己分析はその名の通り「自分で自分の人生を振り返り、分析する」もの。よほど自分を客観視できる人でない限り、「都合の良い主観や解釈」が入ってしまう。つまり、分析する自分自身のさじ加減で、結果をいくらでも自分寄りに変えられるということだ。こんな人事担当者のコメントもある。

人事 望んだ結果が出ないと、さらに学生は自己分析に走っていくようです。ある学生に志望動機を聞くと『自己分析で営業が向いていると分かったので就職活動をしたけれど、なかなか成果が出ず、もう一度分析をやり直したら今度は販売が向いていると出たので、そちらの職種を重点に活動しました』と。うちで内定が出なかったら、また自己分析をして向いている仕事を探すのでしょうか?自分がやりたいと思う仕事を軸に探しているというより、自己分析の結果に振り回されて仕事選びをしているような気がしてなりません」
合同で行われた就職説明会に詰めかけた学生(9月、東京都港区)

なぜ、こんな迷走が始まるのか。そもそも自己分析は「自分を知るため」にやるものだ。しかし「自分を良く見せたい」「早く内定をもらいたい」という意識が働く就活の場では、知らず知らずのうちに結果を「自分寄り」に曲げ、そこに「理想とするもう一人の自分」を見いだそうとしてしまうからではないだろうか。結果から出てくるのは、等身大の自分ではない。ここに大きな落とし穴がある。

自分らしさと離れた「自己分析の自分」が語る志望動機を聞かされ続けた人事担当者たちは、こう口をそろえる。「就活生本来の姿が見えなくなるような自己分析なら、無理にやらなくてもいい」 

入社してからも影響が 

自己分析に頼りすぎると、社会に出てからつまずいてしまうケースもある。

人事 「入社してから『こんな仕事するために入社したわけじゃない』と言う人がいるんです。最初から重要な仕事を任せられることはあり得ないし、配属は実際の適性を見て決めるので――。自己分析をして『こうありたい自分』『向いていること』を必要以上に決めつけてしまうと、こうなってしまう。そもそも働くことには、柔軟性が必ず求められるのですから」

 何のために自己分析をするのか。頭を冷やして考えてみる必要がある。それは「仕事や企業を選ぶ」ためだ。では自己分析は、本当に仕事や企業選びに最も役立つ方法なのだろうか。そもそも仕事や企業を選ぶのであれば、自分を知るより先に、業界や企業研究を幅広くやってみるのはどうだろう。

人事 「実は、自己分析は一生懸命にやっているんだけど、企業研究が全くできていない学生が多いんです。業界や企業を一生懸命に研究することでも、『向いている仕事や企業』が見えてくると思います」

どんな仕事や会社に興味を覚えるかも、立派な「自己分析」だ。

自分を知る方法はいくつも

自己分析の結果にとらわれる就活生の多さに、心配した人事担当者が思わずこうコメントする。

人事 「とにかく自己分析の結果で自分を縛りつけて、食わず嫌いにはならないでほしい。今すぐに『やりたいこと』を決めなくてもいい。もっといろいろなことを見たり、聞いたり、視野を広げていくほうが新しい発見があるかもしれませんから」

自己分析で自分を知ることは間違いではないし、そこで「やりたいこと」や「向いていること」が見つかることも大いにある。ただ、これまで述べてきたように、自己分析は「自分の主観と願望」が入りやすいものだし、企業も「本当の適性は入社してからでないと分からない」と言う。目安になればよし、という程度のものだ。

だから「自己分析がうまくできない」なんて悩んで自分を追い込むのはやめよう。そんな必要はまったくない。何より、自分を知る手段はほかにも存在する。本でも、映画でも、スポーツでも、恋愛でもいい。たくさんの物を見たり、人の話を聞いたり、自己分析以外でも「自分」を気づかせてくれるものはたくさんあるのだ。

(ライター 双里大介)

[日経ビジネスアソシエ特別編集 みん就データブック2012の記事を基に再構成]

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