ソーシャルメディアは「つながり」のメディアだ。人と人、情報や地域をつなげて新しい価値を創出している。一方で、炎上によるプライバシー暴きが広がり、人々の行動を窮屈にしている負の側面も出てきている。つながりの時代に、つながらないことが生む価値について、新潟のフリーペーパー「新潟美少女図鑑」を事例に考えてみた。
■幻のフリーペーパー
新潟美少女図鑑は、新潟市を中心に発行されるフリーペーパーだ。新潟市にある企画制作会社のテクスファームが2002年に創刊、地元の美容室を広告主として、地元の素人モデル、カメラマンを使い、ロケ地も地元、と地元密着のスタイルを持つ。
年2回発行で、部数は2万部。他県では配布しないことにしている。セレクトショップやカフェ、美容室など限られた場所で配布しており、「幻のフリーペーパー」とも呼ばれている。限定配布とすることで、付加価値を高め、ターゲットとしているおしゃれな女性たちの支持を得ている。どこでも、誰でも情報を入手することができる、マスメディアやソーシャルメディアとは対極の存在だ。
08年に全国放送のテレビ番組で紹介されたことをきっかけに注目を集めた。美少女図鑑のモデルからファッション誌の専属モデルとなった女性が成功事例として取り上げられ、スタジオのゲスト女性が「モデル候補の女性を探す手間が省ける」などとコメントしていた。
しかしながら、テクスファームの加藤雅一さんの話はそうした認識を覆すものだった。「プロへの登竜門にはしたくない。東京の事務所から問い合わせの連絡が来るが、8割、9割の子が興味を示さない」という。