2019年8月24日(土)

日米外交60年の瞬間 第3部

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中国が周恩来外相声明でソ連に同調 サンフランシスコへ(40)
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜

(1/6ページ)
2012/5/19 7:00
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ソ連の会議参加声明にほぼ時機を合わせる形で1951年8月15日、中国が周恩来外相の名前で対日講和に関する長文の声明を発表した。実際に日本に伝わったのは16日午前2時の北京放送によってだった。

周恩来=朝日新聞社提供

周恩来=朝日新聞社提供

全文を別掲するが、なかなかに味わい深い文書である。周は当時、首相であり、外相を兼務していた。この文書は外相声明とされている。

■中国排除の会議認めぬ

中国と書いたが、声明は「中華人民共和国中央人民政府」の表現を使っている。1949年の中華人民共和国建国から2年もたっていないからなのだろう。いかにも革命政権と響く表現である。

いうまでもないが、当時、米国は台湾に逃れた国民党政権を中国とみていたから、サンフランシスコ会議参加を求めたのも「中華民国」と呼ばれた国民党政権であり、中華人民共和国ではなかった。

1951年
4月11日
トルーマン大統領がマッカーサー元帥を連合国最高司令官、国連軍最高司令官、米極東軍・極東陸軍総司令官から解職。後任にリッジウェー中将
4月16日ダレス特使再来日
6月20日日本政府、第1次追放解除を発表
8月6日日本政府、第2次解除を発表。鳩山一郎ら追放解除される
9月1日米、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋安保条約に調印
9月4日サンフランシスコ講和会議始まる
9月8日吉田首相、対日講和条約、日米安全保障条約に調印
12月24日吉田首相、ダレスに台湾の国民政府との講和を確約(「吉田書簡」)

したがって周恩来声明は、「サンフランシスコで開かれる会議は、公然と中華人民共和国を除外している限り、(中略)国際義務を反古にし、基本的に承認できない会議である」とする。無論、米英による対日講和条約草案は認められないとする。

中国とソ連は当時、一体だった。だから「中華人民共和国中央人民政府は、武力を通じて対日作戦に加わった国のすべてが対日講和条約起草の準備事業に加わると主張するソヴィエト連邦政府の提案をこれまで全面的に支持した」ともある。

周恩来は、その後、中ソ対立のなかで米国、日本との関係正常化を考える。この声明から約20年後の話である。

現在、中国が隣国との間で抱える領有権争いの始まりも周恩来声明にはある。米英草案を批判する形で以下の3点を主張する。

・国際連盟により日本の委任統治の下におかれていた太平洋諸島にたいする施政権の他、更に琉球諸島、小笠原群島、火山列島、西鳥島、沖之鳥島及び南鳥島など、その施政権まで保有することをアメリカ政府に保証し、これらの島嶼の日本分離につき過去のいかなる国際協定も規定していないにもかかわらず、事実上これらの島嶼をひきつづき占領しうる権力をもたせようとしている。

・ただ日本が台湾と澎湖諸島及び千島列島、樺太南部とその付近のすべての島嶼にたいする一切の権利を放棄すると規定しているだけで、台湾と澎湖諸島を中華人民共和国へ返還すること、ならびに千島列島及び樺太南部とその付近の一切の島嶼をソヴィエト連邦に引渡すという合意に関してただの一言も触れていない。

・故意に日本が西鳥島と西沙群島にたいする一切の権利を放棄すると規定し、その主権返還の問題について言及するところがない。実は、西沙群島と西鳥島とは、南沙群島、中沙群島及び東沙群島と全く同じように、これまでずっと中国領土であったし、日本帝国主義が侵略戦争をおこした際、一時手放されたが、日本が降伏してからは当時の中国政府により全部接収されたのである。中華人民共和国中央人民政府はここにつぎのとおり宣言する。すなわち中華人民共和国の西鳥島と西沙群島にたいする犯すことのできない主権は、対日平和条約アメリカ、イギリス案で規定の有無にかかわらず、またどのように規定されていようが、なんら影響を受けるものではない。

■今日の領土紛争の原点

講和条約の目的は戦争の終結であり、そのためには戦争の結果を踏まえた国境線の画定が必要になる。それは最も面倒な問題であり、日本の北方領土問題、中国の南沙、西沙をめぐる問題など、いまなお決着をみていない。北方領土問題についてはサンフランシスコでの吉田茂首相(全権)の演説の際に再び触れる。

(次ページ以降に別掲記事)

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