2019年4月19日(金)

まさかの敗訴…捕鯨協会会長の驚きといらだち

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2014/5/13 7:00
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日経ビジネス

 「日本が南極海で実施している現行の調査捕鯨は条約違反」。2014年3月31日、国際司法裁判所(ICJ)はこう判決を下し、差し止めを命じた。日本捕鯨協会の山村和夫会長も「負けることは絶対にない」といった必勝ムードの中、政府を信じて成り行きを見守ってきただけに、「敗訴は想像もしていなかった」と動揺を隠せない。このままでは、北西太平洋での調査捕鯨にも悪影響が出る恐れがある。存続の危機に直面した日本の調査捕鯨。山村会長がいらだつ胸の内を語った。

2014年3月31日、オランダ・ハーグの国際司法裁判所は日本の主張を退け、南極海における現行制度での調査捕鯨の中止を命じる判決を下しました。

この判決には、ただ驚愕(きょうがく)するばかり。はなはだ遺憾に思っています。

[日本捕鯨協会会長]山村和夫氏
1947年、神奈川県生まれ。71年、東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、日本水産に入社。76年、日本共同捕鯨に移籍。国際捕鯨会議の担当を長く務める。その後、日本鯨類研究所を経て2004年、共同船舶の社長に就任。2012年に退任。2013年8月から現職(写真 北山宏一)

[日本捕鯨協会会長]山村和夫氏
1947年、神奈川県生まれ。71年、東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、日本水産に入社。76年、日本共同捕鯨に移籍。国際捕鯨会議の担当を長く務める。その後、日本鯨類研究所を経て2004年、共同船舶の社長に就任。2012年に退任。2013年8月から現職(写真 北山宏一)

1982年に商業捕鯨が一時停止されて以降、日本は87年からは南極海で、94年からは北西太平洋で調査捕鯨を開始しました。商業捕鯨再開を目指して、必要となる科学的情報を収集するためです。その成果は国際捕鯨委員会(IWC)の科学委員会をはじめ世界の多くの研究者から高く評価されています。

ですが、2010年5月31日、オーストラリアは日本の第2期南極海鯨類捕獲調査(JARPA2)が「実態は商業捕鯨であり国際捕鯨取締条約に違反する」として国際司法裁判所に提訴しました。それに対して日本政府はこの調査捕鯨を「合法的な科学調査」であると反論してきました。私たち捕鯨関係者も同じ信念を持ってこれまで調査を続けてきましたから、この裁判は必ず勝つと信じて疑いませんでした。

■日本に不利な裁判官構成、危機感なき関係者

判決ではJARPA2はおおむね科学的調査であることは認められたものの、「調査の計画および実施が調査目的を達成するために合理的なものと立証されていない」などと言い渡されました。捕獲するクジラの頭数や調査期間など細かい点で問題があると指摘を受けました。そのため、JARPA2に関する現行の許可証を取り消し、今後は許可の発行を差し控えることが命じられました。

私たちは条約に従ってこれまで調査方法を定めてきたので、全く問題ないと考えていました。今回の判決では調査捕鯨自体は否定されませんでしたが、継続にはかなりのダメージがあります。

一番の敗因は、国際司法裁判所の裁判官の構成にあります。まず、通常は15人のところを、その中に日本人裁判官がいたため、公平性を保つことを理由にオーストラリア出身の裁判官が特任裁判官として加わり16人になりました。16人の出身国を見ると、半数以上の10カ国を反捕鯨国で占めます。

今から考えれば、日本に不利な構成でした。結果は12人の裁判官がオーストラリア側を支持。その中には反捕鯨国ではない中国、ロシア出身の裁判官も含まれています。裁判官は自分の出身国の思惑にかかわらず、よって立つ法律に従って判断をすべきだと思います。しかし実際には、捕鯨に対する立場や外交問題に少なからず左右されていることを思い知らされました。

私は捕鯨業界の代表で、IWCにも人脈があります。振り返ってみれば、日本の主張を知ってもらい国際世論に訴えかける何らかの活動ができたかもしれません。ただ、訴訟自体は国と国との間のこと。外務省と水産庁が主体となり政府が進めるべきことですので、私は関与する立場にありません。経過を見守ることに終始しました。

【南極海捕鯨訴訟の概要】
日本は2005年から第2期南極海鯨類捕獲調査を開始している。これが国際捕鯨取締条約に違反するとして、オーストラリアが2010年5月31日、中止を求めて国際司法裁判所に提訴した。2013年6~7月に口頭弁論が開かれ、2014年3月31日に判決が出た。「条約に基づき実施している合法的な科学調査」とする日本の主張を退け、現行制度での調査捕鯨の中止を命じた。

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