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カギはEV、発電の再生エネ比4割目指すマウイの挑戦

プロジェクトを推進するには地域住民の参加が不可欠――。米国ハワイ州にあるマウイ島のスマートグリッド・プロジェクトを推進する日立製作所の担当者は、こう説明する。スマートシティー(環境配慮型都市)を実現する場合、いかに住民を参加させるかは大きなポイントである。マウイのプロジェクトでは、とりわけ、その重要性が高い。

マウイ島のスマートグリッド・プロジェクトでは、電気自動車(EV)を徹底活用することを念頭に置いている(図1)。最終的にはEVに搭載されているバッテリーを統合管理して、「仮想発電所」を構成することを目指している。そのためには、EVをできる限り広範囲に浸透させたい。

そこでプロジェクト推進者は、プロジェクトの立ち上げに際して、著名なハワイアンのミュージシャンを招き、EV充電ステーションの1カ所でキックオフイベントを開催するなど、住民を巻き込んでコミュニティを作ることに腐心している。CEMS(地域エネルギー管理システム)などのプロジェクトでも住民の行動を促す必要があるが、マウイ島ではひときわ積極的に地域住民に訴えかけ、プロジェクトの推進に挑んでいる。

離島ゆえの課題を解決

マウイ島でのスマートグリッド・プロジェクトは「JUMPSmart Maui」と呼ばれる。NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「島しょ域スマートグリッド実証事業」で、離島の電力システムのモデルケースになるとして注目されている。目標は「2030年に島の発電量の40%を再生可能エネルギーに」することである。現在、40世帯の家庭と、200台のEVのモニター協力者(ボランティア)を集めているところだ。

マウイ島は、人口15万5000人(2010年)、面積1883.5km2(平方キロメートル)の離島。こうした地域では、電力網が独立した小規模なものになりやすい。実際、マウイ島もそうで、発電はほぼ島内の火力発電で賄ってきた。化石燃料への依存度が高いうえ、規模の面で非効率な運用になることから、電気代は高い。料金は、米国本土のなんと3倍に達している。

また島内には鉄道がなく、移動手段はほぼ自動車だけ。電気と同様に、離島であるためにガソリン代は高い。これも価格は米国本土の1.5倍程度になる。

JUMPSmart Mauiプロジェクトでは、これら離島特有の課題解決を目指している(図2)。EVを普及させれば、高価な原油を利用せずに済む。そのための電力確保には再生可能エネルギーをできるだけ多く利用する。EVが搭載するバッテリーを含めた仮想発電所を作ることで、再生可能エネルギーの発電量の不安定さを吸収する。この仕組みを実現するためには、EVが十分に普及している必要があり、住民の巻き込みは大きな意味を持つ。

住民を巻き込むための策として興味深いのが、充電ステーションの「ラッピング」だ(図3)。取り組みが目に見える形になっている。急速充電器は、白い縦長の直方体である。単体で見る限りはそれほどの違和感はないが、実際に白い充電器を並べてみると、やけに殺風景に見えた。そこで住民にラッピングのデザインを募り、コンテストを開催した。

結果は上々。住民からはいくつもの応募があり、優秀作品を充電器の外側に貼ることにした。住民への意識付けに役立つほか、アンチバンダリズム(バンダリズムは芸術作品などの破壊行為)の効果も見込めるという。

捨てられる余剰電力

もともとマウイ島では、再生可能エネルギーの導入は進められていた。一般家庭に太陽光発電の導入が進んでいるほか、3つのウィンドファーム(大規模風力発電所)が設置されている。

ただ島全体での電力消費量が少ないため、余剰電力ができやすい。マウイ島では、夕方、多くの人がシャワーを浴びる時間帯に電力消費量もピークに達する。これ以外の時間帯は、余剰電力を捨てている。結果として高コストで非効率な電力システムになってしまう。マウイ島ではこうした余剰電力のムダを嫌い、ウィンドファームを1つしかフル稼働させていないのが実情である。

また、再生可能エネルギーの電力網に逆潮流しようとすると、電圧上昇や周波数変動など不安定性の問題が生じる。特に全体の発電量が小さいと、再生可能エネルギーが全体に占める割合が大きくなり、コントロールが難しい。

余剰電力をEVのバッテリーに充電

そこで考えられたのが、風力発電と太陽光発電を活用しつつ、EVのバッテリーをうまく使って効率よく安定的に電力を供給できるスマートグリッドだ。EVを普及させればガソリン代は節約できる。離島であるだけに、EVの連続走行距離にそれほど過酷な条件は課されない。

このEVのバッテリーを一元管理し、余剰電力をEVバッテリーに充電し、ピーク時に使うようにすれば、捨ててしまう電力を減らせる。同時に、家庭に電気温水器を設置して余剰電力で温水を作る仕組みを普及させ、さらに電力使用効率を高める。

再生可能エネルギーをいったんEVバッテリーに蓄電することで、既存電力網に電力を逆潮流させる場合の周波数変動などの課題もクリアできる。現在、EVのモニターになっている家庭に普通充電器を、そして島内に5カ所の急速充電器を設置済み。基本的にはこれでカバーできる。急速充電器に関しては、今後20台くらいまで増やす予定である。

(日経BPクリーンテック研究所 河井保博)

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