ソフトバンク、iPhone5を実質値上げ 7日から
機種変更対象、別の割引の原資に充当か
ソフトバンクモバイルは米アップル製のスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)5」の販売価格を7日から実質値上げした。同社の既存端末を利用しているユーザーがiPhone5に買い替える「機種変更」が対象で、端末購入後に2年間適用する割引の幅を圧縮した。

割引後の実質負担額は、従来はKDDIより9360円安かったが、今回の実質値上げでKDDIと同額となる。書き入れ時である年末商戦の本格化を前に人気機種を実質値上げすることで収益確保を図るほか、年末商戦に向けた別の割引施策の原資を確保するためとみられる。
「月月割」を圧縮
同社はユーザーが端末を購入する際に、購入後の24カ月にわたり通話料やパケット定額料を割り引く「月月割」を実施している。端末価格を実質的に割り引いて購入を促進するほか、解約や別の機種への機種変更時は月月割を途中で打ち切る仕組みとすることで、他社への乗り換えや短期間での機種変更の繰り返しを抑制している。
今回の実質値上げでは、この月月割を圧縮した。従来の月月割は月額2140円×24カ月だったが、これを1750円×24カ月に変更。iPhone5を月月割満了まで使い続けた場合の実質負担額は、容量16ギガバイト(GB)のモデルが9360円(従来は0円)、32GBモデルが1万9680円(従来は1万320円)、64GBモデルが3万円(従来は2万640円)となった。新規契約と番号乗り換え制(MNP)による他社からの乗り換えの場合、月月割は2140円×24カ月で変更ない。
同社では、今回の実質値上げと同じ7日から、iPhone5を対象とした割引サービス「かいかえ割」を2013年1月末までの期間限定で展開する。期間内にソフトバンクの既存端末からiPhone5へ機種変更したユーザーを対象に、パケット定額料を5460円から4410円に割り引くものだ。「機種変更でiPhone5を購入する人は第3世代携帯電話(3G)からの買い替えがメーン。これまでの3Gと同等のパケット定額料で使えるようにすることで、より多くの方にiPhone5を使っていただきたい」(ソフトバンクモバイル広報部)としている。
パケット代は4410円になるが…
今回の実質値上げは、上述のかいかえ割の原資を確保するという性格がありそうだ。月月割の圧縮幅は390円×24回で9360円、かいかえ割の割引幅は1050円×12カ月で1万2600円なので、2つを差し引きすると割引額は3240円となる。ただし、かいかえ割が終了する13年2月以降にiPhone5を機種変更で購入する場合、月月割の圧縮幅である9360円がそのままユーザーの負担増となる。
今回の実質値上げはKDDIの価格体系を意識したものとなっている。機種変更時のiPhone5の実質負担額は、これまでソフトバンクモバイルがKDDIより9360円安かったが、今回の実質値上げにより両社の機種変更時の実質負担額が横並びとなった。
ソフトバンクモバイルはiPhone5の発売当初、自社のiPhone3GSやiPhone4などのユーザーがKDDIのiPhone5に流出するのを防ぐため、実質負担額が高くならないよう設定していたとみられる。しかし「iPhone5の売れ行きは極めて好調」(ソフトバンクモバイル広報部)で、KDDIへの流出も予想より小幅であることから、実質値上げに踏み切っても影響は小さいと判断したとみられる。
(電子報道部 金子寛人)
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