バーチャルよりもリアル 震災半年、変わる若者(3)

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2011/9/15 7:00
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東日本大震災を機に、瞬く間に全国に広がった共助の精神。その姿は、戦後の焼け野原から驚異の復興を遂げた日本の強固な団結力を世界中に思い起こさせた。人のつながりを大切にする気持ち。それは内向き志向で「草食系」「低温世代」と称された若者世代にも広がりつつある。

建築家の松原独歩(33)は東日本大震災直後、自宅とオフィスがあるJR渋谷駅周辺を半日近く歩き回った。「自分が住む街に何が起こったのか」。無性に自分の目で確かめたくなった。

ネオンが消えた最先端のファッションビルは大きなコンクリートの塊になり、まるで巨大なお墓のように見えた。ふだん元気に街中を闊歩(かっぽ)する若者たちは、帰宅できずに駅の広場でじっと座り込んでいた。「新しい文化や技術を生み出す東京の中心」と憧れた渋谷の街は、すっかり姿を変えていた。

■地に足が着いたつながり

震災前は「にぎやかな街で毎日飲み歩く日々」が楽しかった。だが震災で気づかされた。「自分はなんて表層的な部分にこだわっていたのか」。華やかに見えた渋谷の街には、励まし合ったり助け合ったりできる一体感が存在しない。松原は自宅の荷物を処分。震災から2か月余り、親戚の家や全国の宿泊施設を転々とした。「地に足が着いたつながり」を探したかった。

シェアハウスで住人たちと歓談する松原独歩さん(中)

シェアハウスで住人たちと歓談する松原独歩さん(中)

3月下旬、松原は卒業した京都大学のOBや大学院生らと震災後の街づくりを議論するプロジェクトをやろうと呼びかけた。震災後の理想的な生活を考えるなかで、台所や居間を共用する「シェアハウス」に魅力を感じるようになった。人口減が進む日本で、シェアハウスは高齢者を孤立させず、介護に伴う財政負担を軽減させる可能性も秘める。「まず自分が住んでみよう」

松原が引っ越したのは、高度成長期に建てられた団地を改修したシェアハウス「りえんと多摩平」(東京都日野市)。学生や社会人80人ほどが同じ建物で一緒に暮らす。1階に設置した台所で食事を作り、同居人と会話を楽しむ。これまで建築家として構想から建築まで1人で考えてきたが、ここでは同居人との会話から仕事のアイデアを得ることもある。

草食男子 恋愛やセックスに縁がないわけではないのに積極的ではない。自動車の購入など顕示的消費にも興味を示さない。そんな若者男性が、草食男子、草食系男子と名づけられて注目された。中心世代は30歳前後。バブル崩壊後の経済停滞が、男性の精神構造に影響を与えているとの指摘もある。
低温世代 就職氷河期の洗礼を受け、やっとのことで会社に入っても賃金は上がらず、好況といった浮かれた状況は知らないまま社会人として生活している世代。いくら働いても給料は上がらないので転職して給料を増やしたいという気持ちもあるし、やりたいと思う仕事もあるのだが、やっとの思いで入れた会社だから、失敗したらと思うと思い切って挑戦することもできず、そのまま現在の会社に残っている。
※「現代用語の基礎知識」(自由国民社)より抜粋
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