退職金は一時金と年金、どちらを選ぶ
定年退職前後の手続きガイド(2)
退職金の受取り方には、一時金で受取る方法と年金で受取る方法があります。どの方法を選択できるかは、勤務先の退職金規定等により異なります。退職金を受取る際には、どの方法が選択できるのかを勤務先に確認し、事前に受取方法を決めておいたほうがよいでしょう。
では、一時金で受取る場合と年金で受取る場合は、どのような違いがあるのでしょうか。
税金面の違い
退職金には所得税と住民税が課税されますが、その受取方法によりかかる税金が異なります。一般的には、一時金で受取る方が支払う税金が少なくなる、つまりおトクなケースが多いと言えるでしょう。
【一時金で受取る場合】
退職金を一時金で受取る場合は、「退職所得」として課税されます。「退職所得」は、老後の生活保障という意味合いから、税務上かなり優遇されています。
計算方法は
退職所得 = (退職金-退職所得控除※1) × 1/2
退職所得控除は勤務年数によって異なります(※1)。例えば勤続40年の場合、2,200万円が控除額となり、退職金がこの範囲であれば、所得税も住民税もかかりません。また、控除額を超える場合でも、超えた部分の2分の1を課税所得とします。また、退職所得は分離課税となるため、同じ年に他の所得があっても合算せず、退職所得に応じた税率(※2)で所得税の計算をするなど、税制上の優遇措置がとられています。
原則として翌年に確定申告の手続きが必要になりますが、退職時に勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、勤務先が所得税を計算し、源泉徴収をしてくれるため、確定申告は不要となります。
【年金で受取る場合】
退職金を年金の形で受取る場合、「公的年金等の雑所得」として、受取った年ごとに課税されることになります(注)。この場合、同じ年に受け取った厚生年金や国民年金(基礎年金)、他の勤務先の退職年金など「公的年金等」に該当するものを合算し、その金額に応じて計算される「公的年金等控除額(※3)」を控除した残額に税金がかかります。例えば、65歳未満で公的年金と退職年金の合計が200万円の場合、200万円×75%-37万5千円=112万5千円が課税所得となるわけです。また、他に所得がある場合は、その所得と合算して課税されることになり、高い税率(※2)を適用される可能性があります。年金で受取る場合は、住民税や国民健康保険料にも影響がでてきますので、その辺りもあわせて検討する必要があるでしょう。
(注)厚生年金基金や適格年金制度等を利用しない企業独自年金 (非適格年金)は、「公的年金等以外の雑所得」として課税されるため、「公的年金等控除額」の対象となりません。
税金以外の面からの検討
税金面からみると、退職金は一時金で受取る方がよいと思われますが、年金で受取る場合、それまでの期間運用される分だけ、受取総額が多くなるケースがあります。勤務先の年金について、毎年の年金額、受給年数、運用利率、また、会社が破綻した場合や本人が死亡した場合の支払い方法なども事前に確認し、総合的に検討するとよいでしょう。