移動販売、厳しい規制がコスト増要因に
調理済み食品などを売り歩く「行商」を含む移動販売への注目度が高まっている。高齢過疎化、単身世帯の増加といった市場環境の変化に伴う「近場で必要なものを買う」ニーズの拡大に応えられるのが一因。震災後の活躍が評価されたのも追い風で、需要が食品以外に広がっていることも新規参入を促している。
ただ、事業継続のハードルは高い。初期投資は100万~200万円程度と店舗より少ないが、不特定多数を相手にする場合は固定客を獲得しにくく「売り上げ規模に限界があり、採算確保が難しい」(移動販売に詳しい経営コンサルタントの平山晋氏)。食品は1日3万円の売上高が利益確保の目安ともいわれる。
固定客のいる特定の場所での定期販売でも「需要予測に苦労している業者が多い」(同)のが実情。今後も移動販売に挑む業者の大半は、本業を補完する形での参入が主流になりそうだ。
規制の壁もある。食品を扱う場合は保健所の許可が必要で、クリアするため車両整備などにコストがかかる。自治体には厳しい規制を敷くところもあり、例えば10年4月に弁当の路上販売ルールを厳格化した東京都中央区では、行商届出件数が09年の321件から11年には8件に激減した。
公道での商売には警察の道路使用許可も必要だ。盛岡市のみかわやは販売地域を広げたい意向はあるが「道路許可をとるのが大変で、駐車場がある施設に限定される」(斎藤社長)という。
これらの課題を前提に移動販売を継続するにはITの駆使やイベントへの参加といった、独自の工夫と機動性が必要といえそうだ。