2018年12月10日(月)

CO2出さない水素製造事業、巨大市場見据え世界で始動

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2013/11/13 7:00
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 燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素をエネルギー源として大規模に活用する、「水素社会」の実現を目指すプロジェクトが世界各地でスタートしている(図1)。水素インフラ関連の市場規模は、2050年には年間160兆円に上ると見られる(日経BPクリーンテック研究所調べ)。そうした水素社会を実現するために不可欠な取り組みとして注目されているのが、CO2の排出を伴わない(CO2フリー)水素製造プロジェクトである。背景には、先進国が「2050年までに先進国全体のCO2排出量を80%削減する」という、2009年のG8ラクイアサミットにおける合意がある。水素インフラの関係者はこの合意を基に水素社会の将来像を描いており、そのためにはCO2フリーの水素を作ることが前提条件になっている。

図1 水素社会を目指すプロジェクト。写真は、とよたエコフルタウン水素ステーションとトヨタ自動車の燃料電池車

図1 水素社会を目指すプロジェクト。写真は、とよたエコフルタウン水素ステーションとトヨタ自動車の燃料電池車

水素は自然界にはほとんど存在せず、炭化水素や水などの形で化合物として存在している。このため、何らかの方法でこれらの化合物にエネルギーを加えて水素を製造する必要がある。現状では、工場で産出される副生水素でまかなっており、足りない場合には化石燃料を改質して製造している。これらの水素製造プロセスではエネルギーを加える過程でCO2を排出してしまう。

これに対して、(1)再生可能エネルギーの電力によって水を電気分解する、(2)化石燃料を改質またはガス化するものの、「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」(改質やガス化時などで発生するCO2を、大気に放出する前に分離・回収して貯蔵すること)というプロセスを経ることによってCO2フリー化する――という二つの方向でCO2フリーの水素を製造する試みが活発化している。

■世界で動く28のプロジェクト

日経BPクリーンテック研究所が世界の主要な水素インフラ関連プロジェクトを調べたレポート『世界水素インフラプロジェクト総覧』(2013年10月24日発行)によると、主要なプロジェクト70の内、CO2フリーを目指した水素製造プロジェクト数は28にのぼった。

このうち、再生可能エネルギーを使ったCO2フリー化のプロジェクトは26に及んだ。それをタイプ別にみると風力発電から製造するプロジェクトが最も多く10、再生可能エネルギー全般から水を電気分解して水素を製造するプロジェクトが6、バイオガスから製造するプロジェクトが6、太陽光発電から製造するプロジェクトは3となった。

水力発電から水素を製造するプロジェクトは1つだけだが、これはすでに一部で普及していることから電力需給に使う先進的な取り組みだけをピックアップしたためである。一方、炭田や天然ガス田の産地でガス化や改質に併せてCCSを行うことによってCO2フリー化するプロジェクトは、2を数えた。

■ドイツで活発な風力発電からの水素活用

その中でも目立つのは、ドイツにおける風力発電の電力から電気分解で水素を製造するプロジェクトである。ドイツは脱原発に踏み切っていることから、再生可能エネルギーの中でも風力発電の導入を活発化させており、その多くが北ドイツに集中している。

北ドイツには大きな電力需要がないために、工業地帯である南ドイツへ送電する必要があるが、高圧送電線の敷設が遅れている。そこで、北ドイツの風力発電で余った電力から水素を製造して活用するプロジェクトが増えているのである。

例えば、ドイツの首都ベルリンから北に120km離れたブランデンブルク州プレンツラウで進められている「プレンツラウ風力水素プロジェクト」では、合計6MWの風力発電で発電した電力を通常は系統網に送っている。しかし、夜など電力需要が小さく、電力が余剰になる場合には、水を電気分解して水素を製造してタンクに貯めておく。

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