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武道・ビジネス講座・語学…オンラインで新しい学び

ネットを使ったオンライン学習が注目を集めている。時間や場所の制約がなく、無料や割安な料金で始められるのが魅力。会員数を伸ばす3つの企業・団体の利用状況から学びの新しい形を探った。

精進合気道のマリック・タヒード代表

東京・五反田にある品川区総合体育館。ここで週1回、小学生から50代までの男女約60人が合気道の稽古で汗を流す。英国出身のマリック・タヒード氏が代表を務める道場「精進合気道」だ。ここでオンライン学習が技能習得に大きな力を発揮している。

技の動きを予習

タヒード代表が道場を開いたのは4年前。合気道歴は13年で師範4段の腕前。本場日本で道場を開きたいとの夢を胸に、英保守党のスポークスマンをやめて8年前来日した。

合気道の有力流派である合気道養神館本部道場で住み込みを経て道場を開いたものの、当初習いに来たのは1~2人。それもすぐにやめてしまう人が多く、順調な滑り出しとはいえなかった。タヒード代表が感じたのは、仕事や家庭生活に忙しい多くの日本人には、合気道にじっくり打ち込む時間がないこと。週1回の稽古だけでは、基本形や技を覚える余裕はなく、動作が身につかない。そもそも一般の人、特に女性が「武道は厳しくて怖いもの」という先入観を持っていることも思い知らされた。

150の技などが学べる会員制ホームページ

そこで考えたのが、武道では珍しいオンラインの利用だ。米マイクロソフトの英法人での勤務経験もあるタヒード代表は、道場のホームページに「オンライン学習センター」を設けた。オンライン学習センターは会員制パスワードで利用できる。直近の稽古で練習生たちがうまくできた点や、改善すべき点を総評するとともに、次回の稽古のテーマを示す。オンライン上では「構え」や「体さばき」、「抑え技」、「投げ技」といった約150の基本形や技を好きな時間に好きなだけ動画で見ることができる。動画の一部はタヒード代表が自ら撮影した。子どもや初心者には意外と難しい帯の結び方の映像もある。練習生は次の稽古日までにこうした映像を事前にしっかり見て学ぶ。家庭でできる動作なら1人で予習できる。

 オンラインを使うようになって「練習生たちが目を見張るほどのスピードで上達するようになった」とタヒード代表は笑顔を見せる。体育館の近くにソニーなどIT関連企業が多く、パソコンを使い慣れたビジネスパーソンの練習生が多かったことも道場運営にうまく一致したようだ。稽古料は大人が1回1000円。オンラインの利用で指導の人材が少なくて済むためか、と思ったら「お世話になった日本でもっと合気道を普及したい」という思いがあるようだ。

スクーの中西孝之副社長

実名制のオンライン学習サービス「schoo WEB-campus」を運営するschoo(スクー、東京・渋谷)はビジネスに特化した学習サイトを展開する。3月の授業内容は、「拡張現実の最前線と未来の可能性」「ビジネス・ネット・日常生活の著作権」など、企業経営者や大学教授、弁護士などの講師による多様なテーマが並ぶ。週3~5回の講義を生放送で提供している。大学の講義のように決まった時間に教室に集まって授業するイメージだ。

「リアルタイム」にこだわり

講義後の先生との質疑応答が売り物。質問を受けた先生から「その質問いいですね」と返答があったり、他の視聴者から「僕もそう思っていた」とリアルタイムで感想が書き込まれたりする。中西孝之副社長は「我々がやるのはセミナー配信サービスではない。リアルタイムの授業にいかに参加してもらうか、ユーザーの満足度を高めていけるかに力を注いでいる」と話す。

なぜリアルタイムなのか。中西副社長の回答は明確だ。「フェイスブックで『いいね!』が押されるとユーザーは喜びを感じる。あの状況を学びで作ることができるんじゃないか」。リアルタイムの盛り上がりをオンライン学習に生かすことができれば、学ぶことは苦でなくなり、楽しくなるという。

スクーのホームページには放映予定のテーマや講師名が記載されている

確かに会社の研修の一環でオンライン学習を採用している企業は多い。だが、「おもしろくない」「映像は早送りでみてリポートを仕上げた」などの声も聞かれる。おもしろさに重点を置いたスクーの試みは他のオンライン学習と一線を画しているといえそうだ。

勢いは会員数にも表れている。現在、3万4000人。12年1月の開始後、毎月1000人程度のペースで増えてきた。今年に入ってからさらに弾みがつき、1200~1300人増のペースになった。同社がユーザー1000人を対象にした利用実態調査によると性別では男性が85.8%、女性が14.2%。年齢は30~35歳が最も多く30.7%を占める。26~30歳(24.7%)、40~45歳(11.1%)と続く。生中継の講義を視聴するのは無料だが、月525円の会費で録画された講義と授業での書き込みを何度でも見られる。

 1つの授業を500~1000人が視聴している。これを1500人にしようというのが当面の目標。「これだけ増えてくればゲーム的な要素を入れることが可能になる」(中西副社長)。これまでは他社のスタジオを借りて放映してきたが、オンライン学習の放送専用の自社スタジオを開設。今月から本格稼働した。名称は「スクー渋谷桜丘放送室」。年間500コマを超えるウェブ生放送授業を開講し発信していく予定だ。

語学学習、相互に手助け

Lang-8の喜洋洋社長

誰でも先生や生徒に――。利用者同士がお互いの国の言葉を教えあう語学学習サービスを展開するのがLang-8(東京・渋谷)。会員になると自分が修正してほしい文章を、その言語が得意な人が無料で添削してくれる。逆に外国人が書いた日本語を日本語のできる人が修正する。だれでも教えることができ、教えてもらうことができる。2007年6月に始め、口コミや海外のSNS(交流サイト)でPRしたほか、著名ブロガーに取り上げてもらいジワジワ利用者が増えてきた。現在の会員数は190カ国以上53万人で7割が日本以外の人だ。現在も月1万~3万人のペースで増えている。

「外国語はインプットばかりじゃ身に付かない。アウトプットとフィードバックが重要だ」。中国に生まれ、4歳の時に日本に来た喜洋洋社長は自身の経験をもとに話す。日常会話だといちいち話を止めて助詞などの細かい間違いを指摘されることが少ない。文章だったらじっくり直してもらえ、より正確に語学学習できるという。

外国語を勉強している人、海外の人とコミュニケーションしたい人が自分の発信する文章が間違っていないか、添削を依頼するために利用している。外国の人に喜んでもらうのがうれしくて添削する人も多い。文章を翻訳するためのツールとしての利用がメーンとなるウェブ各社の翻訳サービスとの決定的な違いだ。

添削された文章の例(投稿者名は消してあります)

直してもらいたい文章はタイムライン形式で投稿順に上から並ぶ。無料で教えあうサービスなので、回答までの期限は決まっていない。一般的に依頼してから回答があるまで早ければ1分でかえってくる。英語は添削依頼が多く、時間がかかるというがそれでも1日ほどで回答が来る。月額525円の有料会員になると、翻訳してほしい文章が目立つ場所に上げられる。その場合は回答までの時間が短くなる傾向がある。

文章の量に制限はない。「(ツイッターへの投稿用など)つぶやき系のサービスが増えているためか短くなっている傾向がある」という。なかには日本の文学賞を狙っている米国人が小説の修正を依頼するケースもあったという。

ユーザーは女性が55%、男性45%。国別では日本が30%、米国と中国が15%ずつで並ぶ。頻繁に利用するアクティブユーザーは月間5万人。平日夜午後8~12時の利用が多い。

依頼があった文章を添削するかしないかは自由で依頼のみ、添削のみの人もいる。1万件以上添削した人もいるという。利用者を紹介するページに「添削をお願いした数」「添削を引き受けた数」の実績が出る。日本語を添削してほしいという依頼の場合、ローマ字やひながなだけの人も多いが、中には漢字交じりという日本語レベルの高い人もいる。投稿される文章はその人がネットなどで発信するためのものが多く、海外の人たちの考えを読める楽しみもある。「80種類以上の言語が飛び交う。僕もまったくわからない言語がやりとりされているのはおもしろい」(喜社長)

ネット上を検索すると書道教室や、楽器をつなげる音楽教室なども見つかる。今後もオンライン学習の裾野は広がりそうだ。(小山隆司、村野孝直)

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