婚外子の相続、6割が「格差解消を」
クイックVote第122回解説 編集委員 大石格
遺産相続の際、結婚していない男女の間に生まれた子ども(婚外子)も法律に基づく夫婦の子ども(嫡出子)と平等に扱うべきか否か? 電子版読者の59%がイエスと答え、格差を解消すべきだとの意見が多数でした。最高裁が相続格差を間もなく違憲と判断しそうだという事情もあるでしょうが、政府の世論調査では少数だった賛成派が過半数を占めました。

「相続格差を解消すべきだ」という読者のコメントです。
○万人が法の下では平等であるべきだ(76歳、男性)
○出自の違いは子どものせいではない(44歳、女性)
○妻の気持ちはわかるが、子どもには関係ない(46歳、女性)
○「不倫助長」は時代錯誤だ(70歳、男性)
○国際標準に合わせるべきだ(64歳、男性)
など積極的に賛成という回答が中心でした。
「現状のままでよい」という読者のコメントもみてみましょう。
○家族の概念はその国の文化だ(77歳、男性)
○結婚制度の崩壊につながる(50歳、男性)
○嫡出子は扶養の義務を負う(65歳、男性)
などでした。こちらも「断固として主張する」という感じの意見がほとんどで、この問題での歩み寄りが難しいことがうかがえます。
日本経済新聞のフェイスブックでも、格差解消に賛成との意見が多数派でした。
○廃止がいい、逆に親の面倒を見た子に特別相続加算制度を創設すべきだと思う。相続税の免除などあるべきだと思う
○廃止すべき。個別事情があった場合は遺言にて修正できるのだから、一般条項として嫡出・非嫡出の区別は不要
といったご意見が寄せられました。
○個人の問題で法律がかかわる範囲ではないと思う
との指摘もありました。
電子版へのコメントも含め、賛否双方の側から「遺言すればよい」という指摘は複数ありました。遺言すれば婚外子だけでなく、内縁の配偶者や愛人、血縁はないが世話になった人などに遺産を残すことができます。逆に嫡出子の取り分をなくすもしくは減らすこともできます。
回答総数 | 1204 |
男性 | 83% |
女性 | 17% |
20代以下 | 5% |
30代 | 14% |
40代 | 26% |
50代 | 26% |
60代 | 21% |
70代 | 7% |
80代以上 | 1% |
正確な統計はありませんが、日本では遺言を残す人は1割もいないとされています。遺産の分割比率を国任せにする必要はないわけで、エンディングノートがもっと一般化すれば、相続格差の問題はかなり解消されるはずです。
国連の勧告に耳を傾けるべきかどうか。こちらの賛否の割合は1問目とほとんど同じでした。相続格差をなくす理屈として「国際標準だから」というのが効いているからでしょう。
「耳を傾ける」という読者からは
○国際化時代に当然である(45歳、男性)
○人権は世界普遍の価値(56歳、男性)
などのコメントが寄せられています。
「国民感情はそれぞれ」という読者からは
○国連が正しいとは限らない(55歳、男性)
○西洋の基準を他国に押し付けるべきでない(76歳、男性)
など強い反発がありました。
次に最高裁の違憲立法審査権についてです。積極的に違憲判断を下すことに賛意を示す意見が4分の3近くを占めました。
○国会が機能していないならば尻をたたくことも必要(52歳、男性)
○国会のだらしなさを考えると積極性を持ってもらわねばならない(50歳、男性)

これらの読者が念頭にあるのは、例えば1票の格差のような問題でしょう。同時にここ数年の「決められない政治」への不満の裏返しとして最高裁=水戸黄門のような期待感があるのかもしれません。
他方で抑制的に判断すべきだという読者からは「裁判所は浮世離れしている」(59歳、男性)などの意見がありました。
◇
安倍内閣の支持率は72.4%でした。第2次内閣になって最低でした。婚外子というリベラルな読者ほど関心がありそうな設問との組み合わせが影響したのか、やや息切れ感があるのか。次回以降の動向が注目です。