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震災が問い直すリスク対策 「クラウド」に再び脚光

CEATEC 2011

クラウドコンピューティングプラザでセッションに参加する人々(5日、幕張メッセ)

大切な顧客データなどが巨大津波で消失したら――。東日本大震災は地震国・日本に拠点を構える企業の関係者に、情報システムの災害への備えを問い直す契機となった。幕張メッセ(千葉市)で開催中の「CEATEC(シーテック)ジャパン2011」でも災害対応や事業継続のための情報セキュリティー技術の紹介が増加。とりわけクラウドコンピューティングに関連した出展が目立つ。これまで重要情報を外部企業のサーバーなどに預けることに慎重とされてきた日本企業のシステム担当者も発想の転換を迫られており、最新技術の可能性に注目が集まっている。

ネット経由でソフトウエアやシステムのサービスを利用するクラウドコンピューティング。今年のCEATECでは「クラウド」を表題に掲げる企業の説明会の数が50を超えた。このうち、情報セキュリティーや災害対策にクラウド技術を取り入れる提案が約半数を占める。「スマホ」や「電力新技術」と並ぶ主要テーマの一つにクラウドが再浮上した感がある。

ユニアデックスの高橋優亮エヴァンジェリスト

「クラウドコンピューティング、どう使う?」などと銘打ち、クラウドの活用法を説明した日本ユニシス子会社のユニアデックス(東京・江東、入部泰社長)のセッション。数十人の来場者で部屋には立ち見が出た。企業のシステム担当者らを前に、戦略マーケティング部エヴァンジェリストの高橋優亮氏は「自社でサーバールームを持つよりも、大手のクラウドサービス会社のデータセンターのほうが安全」と力説した。

東日本大震災で目の当たりにしたように、企業の主要拠点などが災害で破壊された場合、情報システムや重要データを守る根本的な解決策はあるのか。スカパーJSAT(東京・港)は衛星通信や放送で利用されるデータ伝送技術を応用したクラウド型のストレージサービスを売り込んでいた。津波などで一部のデータセンターが壊れたり、ハッキングされた場合でも、顧客のデータを安全に復元できるという。預かったデータを全国7地域以上の複数のデータセンターに分散して保管。放送用信号の復元や訂正に使う技術で、いったん分割したデータを再結合させる。

スカパーJSATの小林正法アシスタントマネージャー

宇宙・衛星事業本部の小林正法アシスタントマネージャーは、これまでクラウドに及び腰だった企業の姿勢の変化を感じ取っている。「震災後は問い合わせ件数が3~4倍に増えた」と話す。これまでは医療関係施設との取引が中心だったが、最近は電力会社や水道局など、インフラ事業者が関心を寄せている。

災害で中核のデータセンターへの電力供給が途絶えれば、クラウドサービスの安全性も大きく揺らぐ。電力供給が滞った際のシステムやデータの防護策は、企業が考えなければならない現実的な課題となった。

サーバー周辺の温度は47度まで上昇しているが、問題なく動作している

IT機器開発のベンチャー企業、アイピーコア研究所(東京・杉並)は、省電力型サーバー「NX130」を展示した。消費電力を通常の3分の1程度と大きく削減。停電でサーバールームの空調が停止した場合でも安定して稼働するのが特徴だという。「サーバーからの発熱を抑え、効率的に熱を逃がす設計にした」(品川雅之代表取締役)。省エネ型サーバーは平時でも運営コストの抑制に役立つ。

企業が被災した場合、社員は自宅待機などを強いられる。従業員が出社できない場合でも、クラウドの活用で事業を継続できると訴えたのがクオリティソフト(東京・千代田、浦聖治代表取締役)。自宅や避難先で社員が仕事に使うパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を、システム管理者が一元管理できる仕組みを販売している。社員が保有するパソコンやスマホのウイルス対策ソフトの導入状況などを監視。

パスワード変更や端末の初期化が可能=提供クオリティソフト

スマホなどを紛失した場合でも管理者が遠隔操作で、端末のパスワードを変更したり、データを消去できる。4年前に発売したが震災後に採用が伸び、利用企業は約1万2000社に達したという。

巨大災害に遭っても機能が止まらない仕組みをどう築くか。大震災を機に、事業継続の前提となる情報システムやデータの防護対策を巡って、企業の動きが一気に活発になっている。

(電子報道部 富谷瑠美)

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