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在宅勤務は仕事か…米ヤフーCEOが呼んだ論争

forbes

(2013年2月27日 Forbes.com)

怒り。憤り。非道。嫉妬。言いがかり。非難の応酬。

米ヤフーの最高経営責任者(CEO)、マリッサ・メイヤー氏が、同社の社員に在宅勤務を禁止すると宣言して以来、こうしたあらゆる感情がない交ぜになって飛び交っている。しかし、すべての非難の矛先がメイヤー氏だけに向けられているわけではない。

全米の職場で「WAHデバイド」論争

会社を離れて別の場所で働くかどうかという議論は、根深い問題であり、我々が考えもしない形で在宅勤務ができない人々を刺激した。これを、勤務場所をめぐる巨大な溝、つまり「WAH(work at home=在宅勤務)デバイド」問題と呼ぼう。

昨日のForbes記事で私がメイヤー氏は方針を転換すべきだと指摘した。すると、記事に対して猛烈なコメントが寄せられ、驚かされた。私のツイッター(@mickimaynard)でも次々と議論が巻き起こり、ソーシャルメディアや全米の職場でも議論が繰り返された。

それらの論争を私なりに解釈すると、意見は以下の2点に集約される。

(1)在宅勤務は本当の仕事とはいえない。真の仕事は、会社でしかできない

(2)在宅勤務は生産性を向上する。正しく行えば、出社して働くより多くの成果が得られる

まず、「在宅勤務は仕事とはいえない」という論調を取り上げよう。こちらが、メイヤー氏がやろうとしていることに最も近いからだ。シリコンバレーの人々にとって、自宅やコーヒーショップ、公園で働くことは「生得権」のようなものだ。フェイスブックも、大学の寮で誕生した。創造力を発揮するために、四角いオフィスにずっとい続けなければならない、ということはないわけだ。実際、革新的な変化はオフィスで生まれるのではない。オフィス以外の場所で生まれるのだ。

報道やネット上に投稿されたコメントから判断する限り、ヤフー社員の何人かは、在宅勤務をめぐる方針を拡大解釈しすぎたようだ。確かに、ヤフーの近年の業績を踏まえれば、同社の企業文化を見直さないまでも、働き方は変える必要があるという印象を受ける。新たに就任したトップとして、メイヤー氏は「一体だれがここで働いているのだろう?」と思ったに違いない。そして、それを知る1つの手段が、全面的な「在宅勤務禁止」令によって社員をオフィスに呼び戻すことだ。

在宅勤務に向かない仕事

ところが、在宅勤務への反発はヤフーだけの問題ではない。仕事社会では、本物の仕事はオフィスでするものだと信じている人々がいる。こうした信条をもつ人たちは、真の技術革新は従業員が同じ場所で働いているときに生まれると主張する。社員がまじめに仕事をして、最大限に創造性を発揮しているかどうかを職場で監視する必要があると考えている。

公共ラジオ放送の番組「マーケットプレイス」はツイッターで、在宅勤務ではとてもこなせない仕事をリスナーに挙げてもらう「最悪の在宅勤務」というハッシュタグを新設した。心臓外科医、歯科医、産婦人科医、バス運転手、看護師、ウエートレスなどが挙っている。ごもっとも。こうした職業の場合、あなたは単純にそこにいなければならない。こうした仕事に従事する人や、社員にオフィスでの勤務を強いる人々が、在宅勤務を真の仕事と見なすことができないのは理解できる。在宅勤務は彼らの職業観とかけ離れているからだ。

さて、次に在宅勤務は生産性の向上に役立つのだという意見をみてみよう。私自身はこちらに賛成だ。というのも、私は自宅で仕事をした方が、オフィスで働くよりずっと生産性が高いからだ。そう、私はジャーナリストである。昨日私が書いた記事に対して、何人かの人がジャーナリストという職業は「軽い」から、他の「本物の職業」とは比べられないと考えていることを知り、驚いた。(もし、Forbes.comが「軽い」なら、なぜ「本物の職業」から離れて、これを読んでくれているのだろうか?)

私と同じ職業の人以外でも、同じ意見の人たちがたくさんいることもわかってきた。仕事はいつも新しいアイデアを探さなければならず、在宅勤務なら集中して仕事ができるし、創造的な仕事もできる。会議室にいくだけが仕事ではないのだ。子育て中の在宅勤務者ならなおさらだ。子育て中だと仕事に使える時間は限られる。朝は子供を起こし、着替えさせて学校に送る。ある時間になれば子供は帰宅するため、仕事を中断しなければならない。

自宅にいても連携できる

オフィスから離れて仕事をするからといって、ほかの従業員との連携を拒む者などいない。実際、技術の進歩によって、たとえメンバーが様々な場所に散らばるチームでも、かつてないくらい緊密に連携しながら働けるようになってきた。コンファレンス・ブリッジやスカイプのようなツールを使うことで、世界中の同僚が一堂に会せるのだ。メイヤー氏は、ヤフーの社員は1カ所に集まることが大切だと思っているようだが、在宅勤務派は必ずしもそれが必要だとは考えない。家にいても人と一緒に仕事はできるからだ。

実は在宅勤務の人たちは、同僚に近づこうと人一倍努力している。私がマンハッタンのニューヨークタイムズビルに出向くときには、電話やメールで連絡をとりあった人たちに挨拶をすることにしている。私は同僚の一人から「あなたは私より会社の人のことをよく知っているね」と言われたことがある。同僚に毎日会うことはできない分、名前やメールアドレスと顔を一致させておきたいと心がけている。

私たちにとっては、在宅勤務は非常に効果的だ。在宅勤務に強く反発する人もいるだろう。オフィスという装置を必要とする人も少なくない。メイヤー氏のような強い上司がそばにいて、自分や同僚に何をすべきか指示してほしいと考える人もいる。こうした人たちが毎日、在宅勤務をするには適していないことに異論はない。

しかし、だからといって在宅勤務が仕事ではないとはいうことにはならない。私は昨日、ある経営者からのコメントに少々がっかりさせられた。従業員から在宅勤務の要望が出た際、「構わないけれど、給料カットを受け入れるように」と答えたというのだ。それは逆だろう。会社に出社する従業員が少なければ少ないほど、一般費用は下がるはずなのだから。

とにかく、メイヤー氏は米国の職場で時すでに遅しという議論の口火を切った。会社の自席に縛り付けられていると感じてきた人たちは、在宅勤務の希望を口にするよいきっかけをもらったことだろう。すでに在宅勤務をしている私のような人たちは、もっと良い仕事をして、自分のやっていることを証明する必要があると気づいたのだ。

By Micheline Maynard, Contributor

筆者のミシェリン・メイナード氏は米ニューヨーク・タイムズのデトロイト支局長などを務めた米国の経済ジャーナリスト。セントラル・ミシガン大客員教授(ビジネス・ジャーナリズム)

(c) 2013 Forbes.com LLC All rights reserved

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