NPOが企業を鍛える CSR時代の新市場開拓術
ニーズを橋渡し

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2012/4/8付
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企業の社会的責任(CSR)を実践するため、NPO(非営利組織)と戦略的に組む動きが広がっている。NPOは社会貢献活動を通じ、企業がとらえ切れていない市場ニーズに精通していることが少なくない。人材育成や商品開発などで実力を備えたNPOに頼りつつ、社会問題の解決と市場創造の両方を追い求めるスタンスが、CSRの新潮流になりつつある。

パナソニック×クロスフィールズ

新興国支援で社員成長、商品開発に一役

ベトナムで太陽光を使った調理器具の改良に取り組むパナソニック社員

ベトナムで太陽光を使った調理器具の改良に取り組むパナソニック社員

パナソニックでエコ商品のデザインを研究する山本尚明さん(33)は3月上旬、ベトナムから帰国した。現地では、太陽光を利用した調理器具を製造販売する組織に属し、器具の設計や製造工程の見直しに従事した。

この調理器具はガスや電気を日常的に使えない低所得者のための商品。貧困対策や公衆衛生向上に取り組むNGO(非政府組織)などを通じて普及させる。ただ、1台100ドルと高かった。製造コストを引き下げれば、同じ財政負担でより多く配布できる。「1カ月のうちに製造コストを16%削減できた」。山本さんは成果に胸を張る。

山本さんは「パナソニック イノベーション ボランティア」と呼ぶパナソニックの新制度の第1号として派遣された。制度の狙いは「CSRを担うリーダーの育成」(山口大輔・社会文化グループ事業推進室長)だ。

派遣期間は1カ月。派遣先の事業内容はベース・オブ・ピラミッド(BOP)を想定する。途上国の市場創造に長く関わる決意がうかがえる。希望者を公募する説明会を4月にも開き、2012年度は5人を送り込む。

同社は山本さんを支える体制も整えていた。調理器具のうちコスト削減の余地が大きかったのは太陽光を集める装置。設計を見直して部品点数を減らしたり溶接の工数を削減したりできたのは、日本で相談に乗った4人の専門家がいたからだ。重要情報の流出を防ぐため、知的財産権の管理のプロも控えていた。

この制度が具現した裏で、重要な役割を果たした特定非営利活動法人(NPO法人)がある。クロスフィールズ(東京・品川)だ。

11年5月に発足したこの団体は新興国・途上国に社会貢献活動の情報のパイプを持つ。青年海外協力隊で活動、経営コンサルティングのマッキンゼー・アンド・カンパニーでも働いた小沼大地・代表理事は企業の行動原理に理解がある。約10人の構成メンバーには、途上国で活動するNGO幹部と親密な人もいる。

パナソニックは同団体に当初、▽貧困層の生活・衛生向上に取り組む▽自然エネルギーの利用・普及に関わる▽1カ月という短期派遣を受け入れる――などの条件に合う現地の団体を探すよう依頼した。BOPの糸口を探りたい企業にとって、活動の伴走者となる現地の団体を見つけるのは重要な第一歩だ。その要求にクロスフィールズは応えた。「ホームステイ先の確保など細かい要望も聞いてくれた」とパナソニックは評価する。

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