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2012年のスマートシティ、実験から「実ビジネス」へと脱皮の年に

2006年以降、世界各地で繰り広げられているスマートシティのプロジェクト。これらを俯瞰(ふかん)しつつ、2011年に何が起こったかを振り返ってみると、重要な節目の年だったということがよく分かる。後で詳しく述べるように、世界中でスマートシティ像が大きく見直された年だったからである。

とりわけ、日本では大きな転機を迎えた。東日本大震災をきっかけとして、スマートシティに対する考え方が一気に変わった。

日経BPクリーンテック研究所では「スマートシティ」に関するプロジェクトと、その構成要素について世界動向を調査し、本コラムでその一端を紹介してきた。2012年のスタートに当たり、2011年の動きを踏まえて、2012年を読み解くキーワードを予測してみたい。

スマートシティ像が変わる

表 2011年のスマートシティに関する世界10大トピック
(1)東日本大震災で日本におけるスマートシティに対する考えが一変
(2)原発問題と電力不足問題をきっかけに「再生可能エネルギー」「スマートグリッド」「蓄電池」への期待が一気に高まる
(3)スマートハウスがブームに
(4)プロジェクト数が世界で続伸、ポストBRICsでも立ち上がる
(5)日立製作所、東芝など日本企業の勢いが加速
(6)グーグルがスマートメーター事業から撤退
(7)スマートグリッドに関する韓国のポジションが高まる
(8)横浜市、世界初のスマートシティ・アワードを受賞
(9)スマートシティ・インデックスでシンガポールが首位に
(10)国内の官民連携で海外展開が加速

日経BPクリーンテック研究所がまとめた2011年のスマートシティに関する世界10大トピックはの通りである。

第1に挙げたスマートシティ像の見直しは、世界各地でいっせいに起こった。日本では、震災からの復興計画の策定に当たり、東北の各都市と企業がスマートシティの概念を相次いで盛り込んだ。これまでのプロジェクトは「小規模の実証実験ばかり」(米国IT企業の経営者)であり、「シティ」と呼ぶにはかけ離れたイメージだったが、エネルギー利用効率の向上に加え、安全・安心・防災を前面に押し出す動きが活発だ。

「知識城」「低炭素城」「智慧城」といった名称のプロジェクトが各都市で始まった中国では、スマートシティの意義が見直されている。単に最先端の都市を作るということではなく、雇用をセットにしようとする考え方である。「都市を作って人が住まず」ではなく「産業を興して雇用を作り、従業員が住む」という流れを作り出そうとしている。

米国では送電網の老朽化からスマートグリッドやスマートメーターに対する取り組みが始まったが、スマートメーターを導入したことによって電力料金が跳ね上がり、訴訟問題に発展したなどの問題が発生している。この結果、住民の声を政府や企業へ反映し、企業メッセージに関して住民から理解を得ようと「スマートグリッド消費者連合(Smart Grid Consumer Coalition)」が発足した。

日本発の「復興スマートシティ」現る

では2012年はどのような年になるのだろうか。三つのキーワードで整理してみた。

第1に、「実ビジネスへの挑戦」が始まる年になる。過去5年間の実証実験の成果を生かして、2012年はいよいよ実際のビジネスをスタートさせる段階に入る。もちろんいまだに実証実験の域を出ないプロジェクトは多数あるが、いくつかの先進的なプロジェクトは、事業化に向けて動き出すだろう。金融界からは「スマートシティ元年」という言葉も出始めている。

並行して、開発が進む数々のシステムや機器を、社会基盤であるスマートシティと関連付ける動きが鮮明になる。新エネルギー・マネジメント・システム、再生可能エネルギー機器、エネルギー高度利用システム、新交通システム、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)とスマートハウス、BEMS(ビルディング・エネルギー・マネジメント・システム)とグリーンビル、健康改善システム、高度防災機器、水の新利用システムなどである。

第2に、「日本発の復興都市計画」が始まることである。これまで、日本のスマートシティに対する取り組みは小規模なものだったが、東日本を舞台に世界でも類を見ない大型の計画がスタートすることになるだろう。

第3に、「プロデューサー人材の育成」が重要になる。最初のキーワードとして挙げた「実ビジネス」も次のキーワードの「復興都市計画」も、実際にそれをリードしていく人材が不可欠だが、多方面の技術と政策を熟知して影響力を持ってリードしていける人材は極めて少ない。このようなプロデューサー人材が強く求められるようになり、育成計画に弾みがつくことが期待される。

このような過程を通じ、実ビジネス拡大に向けた解を見いだしながら、スマートシティを一大産業ととらえる時代が、すぐそこに来ている。

(日経BPクリーンテック研究所長 望月洋介)

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