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採用スケジュールの変化が就活を変える

母と子の444日就活戦争 番外編(1)

日経ウーマン編集長 麓幸子

 いよいよ2013年4月入社の学生の就職活動(就活)がスタートする。2011年には経団連が倫理憲章の見直しを行い、企業の採用サイトや就職情報会社のサイトへのエントリー開始が10月1日から12月1日へと変更された。就活スケジュールが、2カ月後ろ倒しになったことはどのような影響をもたらすのか。就活(就職活動)生を持つ親はどうすればいいのか。日経電子版の連載「母と子の444日就活戦争」の筆者が最新の就職事情を取材、就活生とその親にアドバイスする。

12月1日、各社の採用サイトや就職情報会社の運営するサイトで学生の登録を受け付けるプレエントリーがスタート、本格的な就活シーズンが幕を開ける。2013年3月に大学を卒業する学部3年(および修士1年)生たちが、いよいよ就活に参戦する。

それを前に新聞・雑誌・テレビなどで、就活の話題を取り上げることが多くなった。それを見聞きすると、この春、社会人となった息子の1年前の就活を思い出してちょっとだけ息苦しくなる。というのも、彼の場合、就活が終わるまで444日もかかったからである。息子のときは、大学3年の2009年10月1日に就活が本格的に始まり、最終的な内定を得たのは2010年12月18日だった。1年前の今頃は、大学4年ながらまだ進路が決まらず、リクルートスーツを着込んで就活を続けていた。

なぜ、こんなに息子の就職が難しいのか、我々親の代とは何が違うのか、それをテーマに取材し、この3~4月に日経電子版で「母と子の444日就活戦争」というタイトルで連載したところ、大変多くの方に読んでいただき、親世代の「就活」に対する高い関心がうかがえた。その連載に大幅に加筆し、このたび『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)として上梓したが、その追加取材で判明したことを、初めて就活生の親となる、または近い将来なるであろう大学1、2年、中高生の子を持つ親の皆さんにお伝えしたいと思う。

今年から就活のスタートが2カ月遅くなった。その発端は、経団連が企業に採用活動の見直しを求めたことにある。「昨今の就職・採用活動の早期化による長期化、過熱ぶりは、学生の本分である学業に支障をきたすもので、大変憂慮すべき事態である」ためだ。これにより、企業の広報活動は従来の10月1日開始から12月1日になり、それに伴い、各就職情報サイトのエントリー開始時期も12月1日以降になる。

しかし、企業の選考活動の開始時期は従来どおり学部4年(修士1年)の4月1日以降と変わらない。つまり学生が会社説明会やセミナーなどで企業研究をして、志望企業を選び出し、エントリーするという活動期間だけが2カ月短縮されてしまったのだ。このことが長期化是正に効果を発揮するかどうかはまだ分からない。しかし就活生の親の経験から、また取材をした記者の立場からいうと、「問題多し」というのが実感だ。

大学および就活関係者によると、2カ月スタートが遅くなったことで、学生にはのんびりムードが漂っているという。さらに学生の二極化がより顕著になったという声も聞く。遅れた2カ月間、漫然と就職に関して何もしないで過ごす学生と、その間にインターンシップやOB訪問を重ね、知見を深めた学生との格差が、12月以降に出てくるのではないか。そういうことを聞くと、ますます就活の厳しさを感じる。

我が家の場合もそうだったからよく分かるのだが、就活がまだ本格的にスタートしていないときは、子どもはおおむね楽観的だ。おおざっぱに言ってしまうと、今の学生は新聞もテレビもあまり読まないし、見ない。タイの洪水が日本企業や日本の産業にどう影響を及ぼすかなど関心があまりない。ITリテラシーが高く、スマートフォンを駆使して情報収集しているように見えて、実はその大半の時間を大学の友人やバイト仲間とのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に費やしたりしている。

そういう学生が就活前に夢みることは、誰もが知っている有名企業から内定をもらうことだ。言い換えると、学生の知っている企業は、そのほとんどがテレビなどで大量CMを流す一般消費者向けの会社、いわゆる「BtoC企業」であるため、おのずと志望するのも有名企業ということになる。男子学生であれば金融、商社、情報通信に、女子学生であれば化粧品メーカーにエントリーするというのが就活の定説である。そして、第一志望の会社に入った自分の姿を夢想するのである。

楽観的なのは学生だけではない。就活生の親も最初はかなり楽観的だったりする。就職戦線の厳しさは耳にしていても、「うちの息子の大学は超上位校ではないけれど、その次のグループに属してるから何とかなるんじゃないか」「入学式のときにもらった大学案内のOB・OGの就職先もなかなかよかったし」「成績もまあまあだし、ルックスも中の上だから何とか」などと思い(ちなみにカッコ内は当時の私の心のつぶやきである)、有名企業にすんなり入社した就活生の親になった自分をこれまた夢想する。「うちの子、○○社に入ったんですよ」などと、親戚や近所にちょっと自慢げに話す姿ですら容易に想像したりする。

しかし、それは現実を知らない甘い考え方である。いざ就活に臨むと、きっとびっくりするであろう。我が子が志望企業に応募した「エントリーシート」の、あまりにも書類選考を通過しないことに、面接すら受けられないことの厳しさに、そして幾度も面接を重ねないと獲得できない内定の難しさに。

企業の採用活動は、親世代とはまったく違う仕組みで行われており、そこで親の常識は通用しない。企業の人事戦略・採用戦略も、親世代が就活生で、いまだ高度経済成長の残滓(ざんし)のあった80年代から大転換している。いわば就活は大きな渦のようなものである。何の予備知識も情報も持たずにそこに飛び込むと、親子とも焦り、右往左往して疲弊してしまう。

次回はそういう事態を避けるため、就活生の親が今、知っておくべきことを3点に絞り紹介していきたい。

麓幸子(ふもと・さちこ)
日経ウーマン編集長 1962年生まれ。84年筑波大卒、日経ホーム出版社(現・日経BP社)入社。06年より現職。09年より日経ウーマンオンライン編集長兼務。筑波大学非常勤講師を務める
日経電子版ビジネスリーダーの連載、「母と子の就活444日戦争」が大幅加筆のうえ書籍化。日本経済新聞出版社から『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日経プレミアシリーズ)として刊行された。より詳細な親向け・就活生向けのアドバイスを紹介している。http://www.nikkeibook.com/book_detail/26142/ 

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