/

公衆無線LAN、脱「つなぐだけ」 通販や口コミに活用

山梨県など、外国人旅行者向けサービス拡充

通信各社が自治体や小売り・外食企業などと設置を進めている、無料の公衆無線LANサービスが進化している。これまでは駅や空港、喫茶店やハンバーガー店など、自宅外でのインターネット接続手段を提供すること自体がサービスという位置付けで、アクセスポイントを増やすことに重点が置かれていた。最近になって外国人旅行者をターゲットに、通信販売を展開したり、日本の観光地に関する口コミを発信したりと、「つなぐだけ」の公衆無線LANでなくサービスに新たな価値を付加する試みが始まっている。

富士山観光に訪れる中国人に、観光名所やお土産を紹介

山梨県はNTT東日本、NTTデータらと共同で、無料公衆無線LANサービス「やまなしFree Wi-Fi」を使った新サービスの実証実験を、河口湖周辺のホテル・旅館や土産物店など20店舗で11月下旬に始めた。外国人旅行者の中で最も多い中国人を対象として、(1)電子クーポンの配布、(2)土産物の通信販売、(3)中国語による口コミ情報の送信――といった取り組みを進める。実証実験は2013年3月までで、本格サービスへの移行に向けた効果や課題などを検証する。

(1)の電子クーポンは、実証実験に参加する各店舗が販売する土産物や博物館の入館料などを割り引くもの。公衆無線LANの接続後、Webブラウザーの起動時に自動表示されるサイト(ポータルサイト)で配布する。電子クーポンはPDF形式のファイルで、旅行者が自身のスマートフォン(スマホ)にダウンロードして、各店舗の窓口などで提示することで割引を受けられる。

 (2)の通信販売は、河口湖周辺の参加店舗が販売している土産物の一部を、ポータルサイトで販売するもの。旅行者が注文した商品は、注文日翌朝のチェックアウト前までに、旅行者が宿泊しているホテル・旅館などに配送される。

(3)の口コミは、ポータルサイト内の店舗紹介ページや通信販売の商品紹介ページに、「中国版ツイッター」と言われる中国語の短文投稿サイト「新浪微博」への投稿ボタンを用意するもの。旅行者自身による体験談や感想などを広く波及させ、宣伝効果を高めることを狙う。

山梨県とNTT東日本らは、主に富士山周辺の観光に訪れる外国人旅行者へのサービスとして、やまなしFree Wi-Fiを1月から展開しており、アクセスポイントは470カ所(うちNTT東日本運営分は250カ所)に広がっている。

7月下旬からは、山梨県外を含むNTT東日本の公衆無線LAN「光ステーション」のアクセスポイントが2週間、無料で使い放題になるIDカードを、県の観光案内所などで外国人観光客に配布している。「11月下旬までの4カ月で、IDカードを1万枚配布」(NTT東日本)しており、やまなしFree Wi-Fiが外国人旅行者に徐々に認知されているという。

「旅程を詰め込みすぎで、土産物を買う時間もない」

公衆無線LANで土産物の通販を試行するのは、中国人旅行者の消費動向が背景にあるという。NTTデータによると、中国人旅行者は入国時に平均で約20万円を中国元から日本円に両替する一方、出国時にも平均で約4万円を逆両替している。「旅程を詰め込みすぎて、土産物を購入するための十分な時間が取れていない。中国人旅行者のニーズに合った良質な土産物を用意していても、その存在が知られておらず、結果的に売り逃しが起きているケースもあるとみている。せっかくの販売チャンスを掘り起こすきっかけとして公衆無線LANを活用したい」(NTTデータ)。電子クーポンも同様に、これまで中国人旅行者の知名度が低かった施設の情報を伝えることで、河口湖周辺エリアで中国人旅行者の周遊を促す。

 中国版ツイッターでの口コミは、中国はアジア各国の中でも口コミの波及力が強い傾向にあることから、草の根ベースで富士山観光の良さを広げる媒介として役立つと判断したという。「ここ数カ月は日中関係が悪化しており、団体客を中心に落ち込んでいるが、個人客の落ち込みは比較的小さい。こうした個人客は日本ファンであることも多く、『民間ベースでは現在も中国人旅行者の訪日が歓迎されている』と幅広い中国人に知ってもらいたい」(NTTデータ)としている。

NTT東日本は、長野市の善光寺周辺でも同様に外国人観光客向けの無料公衆無線LANサービスを展開。現在はポータルサイトで観光ガイドの電子書籍を配布したり、災害情報を発信したりといったサービスを提供する。山梨県での取り組みをモデルケースとして、公衆無線LANを核とした外国人観光客向けサービスを各地で展開する意向だ。

このほか無料の公衆無線LANサービスを活用したポータルサイトの展開は、自治体では福岡市や広島市、民間ベースではセブン&アイ・ホールディングスやローソン、JR東日本、東京・自由が丘商店街などが行っており、買い物客向けの割引クーポンや、外国人観光客向けの観光情報を提供している。無料の公衆無線LANサービス自体による集客に加え、付加サービスでさらなる集客や販促を図る取り組みが増加しそうだ。

(電子報道部 金子寛人)

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません