クルマ持つべき? 持たざるべき?
勝間和代のおサイフ学
クルマを持つことにはさまざまなメリットがあります。移動に対する利便性が増す、タクシー代やレンタカー代などを節約できるなど、具体的な効用ももちろんありますが、やはり「所有欲」や、いつでもどこへでも行けるという「安心感」といった精神的な部分が一番大きいのではないかと思います。

ただし、感情に頼って決めるにしては、かなり大きな買い物であることは確かです。今回のおサイフ学ではマイカーにかかるコストを冷静に見極め、クルマ以外の選択肢も考えてみたいと思います。
月6万円はやっぱり高い
クルマを所有した場合に発生する費用は、ざっと挙げただけでも車両代、駐車場代、自動車保険料、車検代、自動車税、ガソリン代、その他もろもろの維持費用と、これだけあります。
最も安く上がるのは「軽自動車を買って自宅の空いている場所に駐車する」というパターンでしょう。5年償却と考えれば、大体1カ月当たりの車の所有費用はガソリン代抜きで1万円ちょっと、保険料と合わせても1万5000円くらい。さまざまな移動費用を節約できることを考えると、十分割に合う投資です。中古車を買えば、もっと安くなると思います。

逆に、これだけ条件に恵まれていても月に1万円以上はかかることに気付いてください。例えば、諸経費込みで250万円のクルマを買い、5年後に50万円で売却、途中で車検や保険料もかかり、駐車場代が月に2万円かかるとします。すると月の費用はガソリン代を抜いても軽く6万円くらいになってしまいます。
私がよく「おカネを貯(た)めたいならマイカーはあきらめて」といっているのはこうした理由からです。特に、都市部で週末しか乗らない場合などは、かなり割高な買い物をしていることになります。
マイカー以外の選択肢も充実
そうはいっても、クルマには移動手段としての魅力があります。「所有する」ことさえあきらめれば、コストをかけずに移動の利便性は享受することができます。
例えば、レンタカーの活用です。会社の福利厚生を調べると大抵、どこかのレンタカー会社とは提携しているもの。1日7000円もあれば、十分な大きさの車を借りることができます。最近では、ニコニコレンタカーのように半日2500円程度で貸してくれるサービスも登場しました。事前予約さえすれば、買うのがバカらしくなるような値段でクルマ(普通のファミリーカーですが)に乗れるのです。
レンタカーの課題はまめにネットなどから検索し、予約をしなければいけない点。このような手間を惜しむ人には向いていません。

また「移動手段」の代替として、乗用車から原付き2種以上の大きさのスクーターに乗り換える、という方法もあります。特にエンジンが125cc以上の、いわゆる原付き2種ではないバイクでしたら高速道路に乗ることもできます。スクーターなら軽自動車よりもコストは安く、駐車場代金も車の3分の1くらいです。燃費もよく、保険や車検も安い。荷物もそこそこ詰め、2人乗りも可能です。
ただし、小型二輪か、普通二輪免許を取る必要があります。その習得に十数時間の教習と10万円程度のおカネがかかります。運転技術の習得も必要です。やはりそういうまめさが要求されます。
他にも「てっちゃんになる」のも意外な解かもしれません。どこに行くにも鉄道を使い「楽しむ」気持ちを持つことです。「知らない所に新しい乗り物で行く!」というワクワクした感情を持てれば、多少時間がかかっても満足でしょう。鉄道なら渋滞もありません。
漠然とクルマを持っている方は、コストをぜひ一度見直してみてください。クルマを持つべきか、持たざるべきか。この決断は私たちのおサイフにも大きな影響を与えていくのです。
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【今日からやってみよう】
クルマを持たない暮らしを体験してみよう
クルマが持つ利便性や楽しさは、実はマイカー以外でもかなえられるかもしれません。普段の移動はスクーターで、ちょっと長距離ならレンタカー、旅は鉄道で。実は単に乗用車を1台だけ持っていたときより、多彩な経験をより場面に合った乗り物で楽しめるものです。

経済評論家。1968年生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA。公認会計士、コンサルタント、トレーダー・アナリストとして活躍後、独立。現在、株式会社「監査と分析」代表取締役、内閣府男女共同参画会議議員、中央大学ビジネススクール客員教授。3女の母。
[日経マネー2011年11月号の記事を基に再構成]