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「電子書籍は書店連携を重視」 楽天の三木谷社長と講談社の野間社長

国際電子出版EXPOで現状と方向性を講演

2012年7月4~6日、電子書籍関連の展示会「国際電子出版EXPO」が東京ビッグサイトで開催されている。初日の講演では、7月2日に国内向け端末「kobo Touch」を発表した楽天の三木谷浩史会長兼社長、電子書籍事業に力を入れる講談社の野間省伸社長らが登場。電子書籍の現状と将来の方向性を語った。モデレーターは丸善CHIホールディングスの小城武彦社長が務めた。

講演の冒頭で観客を驚かせたのは、野間社長が壇上で掲げたTシャツ。胸の部分に大きく「打倒 アマゾン!!」とプリントされた迷彩模様のTシャツである。三木谷社長に渡されたものという。

米アマゾン・ドット・コムは6月26日、米国で販売している電子書籍リーダー「Kindle」を日本でも近日発売すると突然告知した。楽天が7月2日に行った電子書籍事業発表の直前である。Kindle対kobo――今後国内で本格化するであろう、巨大サービスの激突を予感させる一幕だった。

書店との連携重視がアマゾンと異なる

当然のように話題は、楽天が発表した電子書籍サービスに流れていった。楽天の三木谷社長は、「koboの大きな狙いは読書革命。紙の本から電子書籍に移り変わることで市場が縮小するという危惧を持つ人がいるが、私は楽しさや利便性を高めることで市場を広げたい」と説明。書店と端末の販売を提携することで"Win-Win"の関係を築きたいとした。

アマゾンなどの事業者との違いについて三木谷社長は、この書店との連携を挙げた。例えば、米国の音楽産業は、ネット上の音楽配信が普及するにつれてCDが売れなくなり、CDの販売店は撤退して市場は縮小した。欧米の出版社や書店はそれを反面教師としたうえで、書店で電子書籍端末を販売するなど、連携を強化した。楽天も「書店と連携し、既存の枠組みを壊さずにやる」と強調した。

野間社長は楽天の電子書籍参入について、既存の楽天会員が数多くいること、7980円と端末が安いことなどを挙げて、電子書籍の普及につながると期待を寄せた。その上で、多様な事業者が電子書籍事業に参入すべきだという。「出口が少なすぎると、特定の事業者が独占し、出したい本が出せなくなる懸念がある。電子書店でも何社かが競争し、表現と出版の自由を保つべきだ」と持論を述べた。

書籍100万タイトルの電子化が進む

業界内での電子出版の動きに話が及ぶと、野間社長は経済産業省が東北の復興支援として6万タイトルの電子化を進めている「コンテンツ緊急電子化事業」を紹介。さらに、4月に設立された出版デジタル機構が、書籍100万タイトルの電子化を進めている。「これで失敗したらだめでしょうね」(野間社長)と冗談が出るほどの大規模な取り組みが進んでいることを示した。

野間社長は関連して、海外での出版社団体の会議に出席した際のエピソードを紹介した。海外の出版社の中では"GAFMA(ガフマ)"との付き合い方が大きな関心事になっているという。グーグル・アマゾン・フェイスブック・マイクロソフト・アップルの頭文字を並べた言い方である。「彼らとパートナーとして一緒に事業をやるが、一部では競合する。どういうふうにつきあい、競争するのかが大きな話題となった」という。加えて日本国内では、楽天や電子書籍リーダーを発売するソニーなど幅広いプレーヤーが参入している。この多様性が、電子書籍市場を拡大するうえで環境形成に役立つのではないかと展望した。

(日経パソコン 松元英樹)

[PC Online 2012年7月4日掲載]

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